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最近は書き物する余裕ができたので、いろいろと知識・アイデアのスレッドを立ててみようと思っています。
白点病の原因である原虫にも新標準和名シオミズハクテンチュウと和名もつき、いちいちCryptocaryon irritansと長い名前を書かなくてすみますし、属も違う淡水のハクテンチュウの混同もなくなります。さて、銅イオン、グリーンFゴールド、低比重が定番の白点病治療法ですが、現時点でもいろいろな治療法があります。これから書く方法は私自身は、治療成分を入手できなかったり、水槽の関係で自分で検証することはできなかったので、情報だけです。
1.塩化リゾチーム
餌に混ぜる白点病治療薬と使われているのが塩化リゾチーム(溶菌酵素)です。この酵素はグラム陽性菌の細胞壁を構成する多糖類を加水分解します。よって細胞壁を持たない原虫には直接効果がありません。
上記の理由で薬浴では白点病に効果のない塩化リゾチームですが、経口投与では白点病に効果があると言われています。この塩化リゾチームを餌に混ぜて、魚に与えると、魚の粘液を増加させることによって白点病の付着を防ぎ、白点虫の寄生による病死を防ぎます。
使用法例
魚体重1 kgあたり1日20mgを餌に混ぜ、7日間経口投与する。16時間で代謝されるので、7日間連続投与する必要があります。
薬品
http://www.aska-animal.co.jp/products/detail/pdf/poto_201407.pdf
なぜ検証できなかったかというと塩化リゾチームの入手性の難しさです。市販薬の混ぜ物では入手できるのですが、水槽に入れるのは他の配合成分が好ましくなかったため。また、塩化リゾチームの効果は一部の魚種にしか効果がない可能性が高いです。
(続く)
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2. 脂肪酸(カプリル酸)
脂肪酸のカプリル酸には塩化リゾチームと同じ、魚の粘液増加剤という説があります。
また、カプリル酸はシオミズハクテンチュウなどの寄生虫に直接効果があるという論文があります。Hirazawa氏らによる“In vitro assessment of the antiparasitic effect of caprylic acid against several fish parasites”によるとシオミズハクテンチュウ、ベデネディアにカプリル酸1mMの濃度効果があるそうです。
では薬浴で効果あるか?
効果はあると思います。
これも入手が出来ずに変化球で実験中。
日本ではサプリメントで市販されているので配合成分を気をつけて試すと面白いと思います。
その際にはアルコールに溶かしてから使うとよいでしょう。
変化球については次週に。
(続く)
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多くの寄生虫に効果のあるカプリル酸ですが、やや使いづらい面があります。
そこで誘導体であるモノグリセライド、トリグリセライドを使う方法もあります。
トリグリセライドは薬浴でシオミズハクテンチュウに対して直接効果がないことはわかっています。
では餌に混ぜるのはどうでしょうか?
実際に前例があります。出願特許2000-565879にはカプリル酸とモノグリセライド、トリグリセライドの経口投与によるシオミズハクテンチュウの寄生実験結果が記載されており、モノグリセライド、トリグリセライドでも効果があることがわかっています。これはこれらの誘導体が魚の体内で代謝され、カプリル酸になるからでしょう。
カプリル酸の誘導体を餌に塗布して準備はしましたが、現在までに白点病になる魚はなく…未検証(笑)。
白点病にならないということはシステム上良いことなのでこれも焦らず検証待ちなのですが。
そうはいいつつ数年。
(続く)
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完全無欠人工飼料
獅子の街のアクアリストが、自分の水槽に添加し尽くして発見した、餌にまつわる真実とは? 炭素源、超低栄養塩、人工飼料主義……2年間、100ドルを投じて世界中の餌と病気を研究しつくし、あらゆる餌の「色揚げ効果」「健康効果」「水質をよくする効果」をすべて検証(予定)、「完全無欠」の餌メソッド!
餌に混ぜるのはカプリル酸の含まれると思われる日清MCTオイル。MCTパウダーもありますが、パウダーの方は、デキストリン、加工でん粉なども含まれているので多めに混ぜた方がよいと思います。実際には一度溶かして、エビや冷凍イサザアミなどと共に寒天で固めて餌とする方がパウダーは適しているでしょう。
MCTオイル中50−80%がカプリル酸と推測すると、餌に対してMCTオイルを1 %混ぜるのが良いでしょう。
これが餌メソッドの完全無欠人工飼料です。(予定)
カプリル酸はヤギ(Caprine)から来ています。ヤギのミルクに含まれているため、カプリン酸という名前がつきました。そのうちヤギミルク配合人工飼料とマイナーメーカーから発売されるかもしれませんね。
完全無欠コーヒーを実施しようとしたが、バター入手に難儀中のアクアリストより
(続く)
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3. 抗生物質(サリノマイシン、モネンシン、ナラシン、センデュラマイシン)
特開2011-153103、東京大学の出願特許で、サリノマイシン、モネンシン、ナラシン、センデュラマイシンなどの抗生物質の経口投与による白点病治療法です。
残念ながらこれらの抗生物質を入手するのは容易ではありません。私の知識では家畜の飼料配合用でしか入手ができませんので検討をあきらめました。
これらの抗生物質は細胞のイオンバランスを壊すことによる細胞を破壊します。これはシガテラ毒と同じ仕組みです。つまり魚に対する毒性も強いですし、シオミズハクテンチュウ以外の菌類にも効果があります。低濃度を維持しなければ、魚も殺してしまう使い勝手の悪さと入手困難であることから未検討となっている抗生物質です。使用経験を積んで、魚種毎の濃度を見抜けば白点病を含めた、多くの寄生虫に対するよい治療方法のひとつとなるでしょう。
使用法例
餌に10ppm-500ppm混ぜ与える。この際には魚体重1 kgあたり0.25-25.0mgになるようにするとよい。
(続く)
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