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ヤドカリの体の仕組みと各部位の専門用語

いきなり専門用語が出てきますが(汗)、まずは図解を眺めてヤドカリの体の仕組みを理解してみましょう。
♂と♀が見分けられるようになったら合格です笑

さらに物足りない学生さんは、専門用語を体得して、論文や専門書の翻訳等に力を発揮してください。

ヤドカリ図解(日本語版)
ヤドカリ図解(英語版)
省略形専門用語名称
Corcornea角膜部
Opocular peduncle眼柄(がんぺい)
Oaocular acicle眼棘(がんきょく)
Aaantennal acicle触角棘
Lplateral projection側角(そくかく)
TSthoracic sternites胸板(きょうばん)
Ccoxae of pereopods底節(ていせつ)
Basbasis基節(きせつ)
Iscischium坐節(ざせつ)
Mermerus長節(ちょうせつ)
Carcarpus腕節(わんせつ)
Propropodus前節(ぜんせつ)
Dacdactyl指節(しせつ)
gpgonopore生殖孔(せいしょくこう)
gpdpaird first gonopods有対第1生殖肢
STmale sexual tube精管
省略形専門用語名称
Antuantennule第1触角
Antantenna第2触角
Flaantennal flagellum触角鞭
Chcheliped鉗脚(かんきゃく)
Dacdactyl可動指(かどうし)
Fffixed finger不動指(ふどうし)
Plmpalm掌部(しょうぶ)
Rrostrum or rostral lobe額角(がっかく)
額葉(がくよう)
Sshield前甲(シールド)
PCposterior carapace後甲
slshield lengthシールド長
Ppereopods胸脚(きょうきゃく)
Plpleopods腹肢(ふくし)
Plopleon腹節(ふくせつ)
Teltelson尾節(びせつ)
Ururopod尾肢(びし)

* 省略記号はイラストと専門用語を照らし合わせるための短縮形です
* 表内の各用語の配置はイラスト上の位置をおよそ反映しています

甲長? シールド長?
ヤドカリの甲長とは、前甲と後甲を足した長さを表しますが、ヤドカリの後甲はとても柔らかく、 標本の固定状態によっては伸縮してしまうため、厳密な測定値を表す方法としてはあまり適していません。
そのため、硬い前甲(シールド)の部分のみを測定し、個体サイズの指標として用いることが一般的となっています。 それが、シールド長です。
胸脚? 歩脚?
胸脚を歩脚で言い表す場合、第2胸脚を第1歩脚、第3胸脚を第2歩脚と表します。
雄と雌の生殖器の違い
雄は第5胸脚の底節(付け根)に生殖孔を持ち、左右のどちらか、あるいは両方に精管を持つ場合があります(主にホンヤドカリ科)。 精管の長さや形状は属あるいは種によってさまざまです。
雌は第3胸脚の底節に生殖孔を持ちます。
生殖孔は通常は両側の底節にありますが,種によっては左右のどちらかのみが存在する場合があります。
種や雌雄による腹肢の違い
第3~第5腹肢について
メガロパ幼生期には左右対で備わっている腹肢も、成体型になった時点で右側の腹肢が消失し、左側のみが残ります。 雌では第2~第4腹肢を抱卵に用いるためよく発達しますが、雄では退化傾向が見られます。
ホンヤドカリ科では、第2腹肢が消失し、第3~第5腹肢が残存する種が多いです。雄の腹肢の機能はよく分かりません。
また、第5腹肢は雌雄両方で存在することが多いですが、その機能はあまり良く判っていません。
一部の種の雄では、全ての腹肢の消失が見られます。
  • Paguridae Latreille, 1802/ホンヤドカリ科
    • Lithopagurus Provenzano, 1968
    • Paguritta Melin, 1939/カンザシヤドカリ属
    • Porcellanopagurus Filhol, 1885 /カイガラカツギ属
    • Solitariopagurus McLaughlin, 1997/トゥルカイヤドカリ属
    • Xylopagurus A. Milne Edwards, 1880
    • etc...
逆に原始的な科では、5対全ての腹肢が左右対で備わっています。 雄において、第1、第2腹肢が生殖肢として機能します。
  • Pylochelidae Bate, 1888/ツノガイヤドカリ科
第1~第2腹肢について
第1腹肢が存在する場合には対をなして存在します。雄では生殖肢(交尾器)として機能すると考えられます。 第1腹肢が対腹肢として存在する場合もあり、この場合も生殖肢として機能すると考えられています。
雌においても第1腹肢が対をなして存在することがありますが、小型であることが多く、生殖肢とされることがありますが、 実際に機能的であるかどうかはよくわからないところもあります。
雄において第1、第2腹肢が生殖肢として発達し、雌において第1腹肢が対をなす属。
  • Diogenidae Ortmann, 1892/ヤドカリ科
    • Paguristes Dana, 1852/ヒメヨコバサミ属
    • Stratiotes Thomson, 1899/ブチヒメヨコバサミ属
    • Pseudopaguristes McLaughlin, 2002/ミギキキヨコバサミ属
    • Paguropsis Henderson, 1888/キンチャクヤドカリ属
    • etc...
  • Parapaguridae Smith, 1882/オキヤドカリ科
    • Strobopagurus Lemaitre, 1989/シボガオキヤドカリ属
    • Sympagurus Smith, 1883/オキヤドカリ属
    • Oncopagurus Lemaitre, 1996 (種によって発達程度に大きな変異がある)
    • Paragiopagurus Lemaitre, 1996 (種によって発達程度に大きな変異がある)
    • Parapagurus Smith, 1879/シンカイヤドカリ属
    • etc...
雌において第1腹肢が左右対で残っている種も見られます。
  • Paguridae Latreille, 1802/ホンヤドカリ科
    • Chanopagurus Lemaitre, 2003
    • Goreopagurus McLaughlin, 1988
    • Lophopagurus McLaughlin, 1981/セルプラヤドカリ属
    • Michelopagurus McLaughlin, 1997
    • Nematopagurus A. Milne Edwards & Bouvier, 1892 /イトヒキヤドカリ属
    • Pagurojacquesia de Saint Laurent & McLaughlin, 1998/ジャックヤドカリ属
    • Pylopagurus A. Milne-Edwards and Bouvier, 1891
    • Pylopaguropsis Alcock, 1905/ゼブラヤドカリ属
    • etc...
第2腹肢は多くの種の雄で消失している場合が多いが、中には残っている種も見られます。
  • Paguridae Latreille, 1802/ホンヤドカリ科
    • Bathypaguropsis McLaughlin, 1994/クロシオヤドカリ属
    • Decaphyllus de Saint Laurent, 1968/サツマヤドカリ属
    • Pagurus Fabricius, 1775/ホンヤドカリ属
      • Pagurus japonicus (Stimpson, 1858)/ヤマトホンヤドカリ
      • Pagurus rubrior Komai, 2003/ベニホンヤドカリ
      • Pagurus similis (Ortmann, 1892)/ヤマブキホンヤドカリ
      • Pagurus hirtimanus (Miers, 1880)/オキナワホンヤドカリ
      • etc...
さらに一部の種では、第2腹肢が生殖肢として機能(交尾やその他の用途)する雄も見られます。
  • Diogenidae Ortmann, 1892/ヤドカリ科
    • Paguristes Dana, 1852/ヒメヨコバサミ属
    • Stratiotes Thomson, 1899/ブチヒメヨコバサミ属
    • Pseudopaguristes McLaughlin, 2002/ミギキキヨコバサミ属
    • etc...
また、雄において第2腹肢が左右対で備わった雄も存在します。(イラストの第2腹肢♂)
  • Paguridae Latreille, 1802/ホンヤドカリ科
    • Tomopaguroides Balss, 1912 (台湾寄居蟹類誌 198P)

参考:台湾寄居蟹類誌
監修:千葉県立中央博物館 駒井智幸