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バイタルウェーブとサンゴの光化学【決定版】

  • 2023.07.12
  • LED
バイタルウェーブとサンゴの光化学【決定版】

みなさん、こんにちわ!
スペクトルデザイナーのエイジです✋🧐

※この記事は約15分で読めます (僕は30分🥺)
※ブロック毎に音声のナレーションを用意しました‼
※バイタルウェーブを絡めたサンゴの色揚げ術です‼
※文と図が多めだけど吸収率を追求した結果です🙇
※原理を知って上手にサンゴを色揚げしましょう☝

バイタルウェーブは10周年を迎えました!

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すっかり忘れていましたが、バイタルウェーブが10周年を迎えていました‼笑
VitalWave出荷開始 (2012/02/24)
忘れもしない、あれは2012年2月のことでした! (忘れてた笑)

しかし、当初は「波長補完ランプ」なんて、まったく世間に理解されませんでしたね。多くの皆さんにとっても、使い道が謎だったと思います。今思えば、時代を先取りしすぎました💦笑

初代バイタルウェーブのパッケージ (2012年)
初代バイタルウェーブのパッケージ (2012年)

バイタルウェーブの普及に貢献した、サンゴの光化学の解明

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バイタルウェーブが浸透し始めたのは、僕がサンゴの蛍光タンパクの研究の一環として、2013年から分光器と光ファイバーを用いたサンゴの光学測定を新たに開始してからだったように思います。
すべての答え、第一弾 (2013/5/26)
これによって、それまでは一般的な蛍光タンパクの特性をサンゴにも割り当てて「サンゴの蛍光タンパクも色によって励起波長が異なる」と推定していた仮説を、実際の光学測定によって見事に実証することができたのです。例えば、蛍光グリーンはブルー光さえ当てておけば十分ですが、蛍光ブルーや蛍光シアンには400-420nmのUV域(バイオレット光)を当てなければ強く発光させることはできない、という事実が明白となった訳です。

第一回コーラルカラーレポートで得られたストロベリーの励起特性の例
第一回コーラルカラーレポートで得られたストロベリーの励起特性の例

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そこからようやく皆さんが謎だった「バイタルウェーブの使い道」が明確化し、その検証により効果を実感されたアクアリストが増え始め、バイタルは色揚げの鉄板と認知されるようになっていきました。

この記事は、今までサンゴの色揚げで思うように成果が得られなかったアクアリストさんに読んでいただきたいです。特に今まで照明をあまり意識せずに、添加剤等の水質アプローチで迷走されてきた方は、この記事を読めば絶対に色揚げが実感できるようになります。揚がったのかどうか人によって意見が分かれたり、「揚がっただろ? な?」「う、うーん…」みたいな曖昧なものではありません。光化学によるサンゴの色揚げでは、理屈通りに行えば10人が10人とも効果を実感でき、誰の目にも明らかな色揚がりをもたらします。どうぞ安心して、水槽の上にバイタルウェーブをぶら下げる準備に取り掛かってください☝笑

バイタルウェーブ・バイオレットによりストロベリーのCFPを色濃く色揚げされた雫さんの例
色落ちしたストロベリーをバイタルウェーブ・バイオレットで色濃く色揚げされた雫さんの例

サンゴの光化学の解明から再認識できた光と水質の関係

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また一方で、もうひとつの明確化として、サンゴの色揚げに対する光と水質の位置付けも再認識させられました。それまでは、サンゴの色揚げには光=大事・水質=大事と漠然と捉えられていましたが、このサンゴの光化学の解明や多くの皆さんの色揚げの実証によって、あくまでもサンゴの色揚げトリガーは光であると導き出されたことで、水質はあくまで生命活動に必要な基本項目でしかなく、水質は色揚げトリガーにはならない、と言うごく当然な結論に至った訳です。

文章では解りにくいので、簡単なイラストをご覧ください。

まずは、バイオレット光やシアン光等の励起光が不足した水槽でのサンゴの蛍光タンパクの変化を示したイラストです。もちろん水質に問題がない前提です。
BFP:ブルー蛍光タンパク
GFP:グリーン蛍光タンパク
YFP:イエロー蛍光タンパク

ブルー主体照明による蛍光タンパクの色落ちイメージ
ブルー主体照明による蛍光タンパクの色落ちイメージ

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単波長450nmのブルー光だけでは、GFPの維持には問題がない反面、BFPやYFPはチャイロイシまっしぐらとなりますが、幸い現在の多くのサンゴLEDはバイオレット光やシアン光を波長成分として僅かに含むため、その強度なりの蛍光発光強度・蛍光濃度は維持されますが、購入時やサンゴ本来の色彩の維持は、多くの場合困難です。

そこで、それぞれに必要な励起光を補完してみた場合のイラストです。

励起光を補完した場合の色揚がりイメージ
励起光を補完した場合の色揚がりイメージ

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これにより、色落ちした原因の励起波長が補完されれば、蛍光濃度は購入時の状態に戻るか、波長強度によっては購入時以上の色揚がりを見せるでしょう。

次に、色落ちの原因となった励起波長不足の状態のままで、何かしら添加剤だけで色が戻るのか・色が揚がるのかの結果を示したイラストです。

励起光なしで添加剤を投入した場合のイメージ
励起光なしで添加剤を投入した場合のイメージ

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この場合、そもそもの色落ちの原因が励起波長不足によるモノであるため、何を添加しようが励起光なしでは色が戻ることはありません。

最後に、それでも添加剤で色が揚がったと勘違いするケースのイラストです。

水質問題が改善されれば色は戻る
水質問題が改善されれば色は戻る

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これは、そもそもの水質に問題があり、それが改善された場合に色が揚がる(正しくは元に戻る)ケースです。「今思えばコレでしたぁ💦」と振り返る方もかなり多いです。高栄養塩にしろ、カルシウム・KH等の低下にしろ、微量元素の枯渇にしろ、それらが原因による成長阻害からの白化が起きていたケースでは、多くの場合は換水により回復しますし、またそうした白化状態に於いては褐虫藻が光合成で作るはずの糖やアミノ酸が枯渇してサンゴは飢えているため、炭素源や有機物やサンゴフード等の添加によってサンゴが直接的または間接的に糖やアミノ酸を吸収することで一時的に状態が回復する様子(ポリプの伸長や色の復調)が観察されますが、これは根本原因の改善にはならないばかりか、何が不足しているのか解らない状況で、あらゆる不足成分を添加剤だけで100%補うことは不可能ですし、それこそ過剰添加を引き起こします。したがって、まずは換水により「水質に問題がない前提」の環境を再構築することが先決となります。水質は所詮サンゴの健康維持に欠かせない基本要因でしかなく、広義では間接的に色揚げに関わるとも言えますが、決して直接的に色揚げに関わるトリガーではないと覚えておいてください。

400-420nmを強く含むKR93SPによりBFPを色濃く色揚げされたどにゃさんの例
400-420nmを強く含むKR93SPによりBFPを色濃く色揚げされたどにゃさんの例

サンゴの蛍光タンパクを増進するトリガーは、光以外にあり得るのか?

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そもそも考えてみて欲しいのですが、サンゴの色彩は蛍光タンパクや色素タンパクの光代謝によって構築されていますので、その光を使わずして該当のタンパクの合成を促そうとするなら、当然光の替わりとなる別のトリガーが必要になりますよね?

では問題です。

  • ブルー蛍光タンパクを増加させるには何を添加すれば良いのか?
  • イエロー蛍光タンパクを増加させるには何を添加すれば良いのか?
  • その他の蛍光/色素タンパクを増加させるには何を添加すれば良いのか?

というか、水質からのアプローチで果たして蛍光/色素タンパクは増えるのか?

これは例えば、日焼けの原因となる紫外線を使わずして日焼けを生じさせるべく、紫外線以外の方法でメラニン色素の増加を引き起こす反応を模索することに似ています。例えば、紫外線を当てなくても皮膚を摩擦するだけでもメラニン色素は増加しますし、ターンオーバーを阻害する方法が解ればメラニン色素は長期間とどまるでしょう。とは言え、そんな効果をサンゴの蛍光タンパクや色素タンパクに対して与えられるミラクルな添加剤は、果たして作る事が可能なのでしょうか?
例えば、よく聞く言い回しとして「鉄は緑色を促進する」等が挙げられますが、確かに鉄に限らず微量元素はサンゴの成長に欠かせませんが、実際に鉄を添加して緑色が濃くなった事例は聞いた事がありませんし、そもそも蛍光なのか色素なのか言及されてない時点で曖昧ですし(文献ではGreen colors/pigments)、トリトンやICP等の水質検査で鉄の枯渇が判明してもスターポリプの蛍光グリーンは普通に綺麗に発色していますし笑、そもそも換水すれば人工海水から適度な鉄が得られますから、その程度のレベルの鉄で良いならそもそも添加する必要がありませんし、普段の換水で十分に補給されています。
そして、決定的な事実として、そもそも蛍光タンパクは励起光の強度によって発光強度が決まりますので、励起光が自然光並みに強ければ本来の発光強度で光りますが、一般のブルー主体照明のようにバイオレット光やシアン光が弱いと、BFP/CFPやYFP/RFPはそれなりの強さでしか光れない=発色できないと言うことになります。そう、添加剤では決して光らないのです。

  • サンゴの色揚がりは各蛍光/色素タンパクに必要な光がもたらすもの
  • 例え蛍光タンパクが濃くなっても励起光が弱ければ結局十分に発色しない
  • 水質に求められるのは作りたての人工海水成分で十分である
  • 何かを添加して好転したのなら元の水質に問題がある可能性が高い

以上が、サンゴの光化学が明確化した、サンゴの色揚げに関わる光と水質の答えです。

400-420nmを強く含むSPECTRAによりBFPを色濃く色揚げされたきさんの例
400-420nmを強く含むSPECTRAによりBFPを色濃く色揚げされたきさんの例

サンゴの色揚げ検証に於いて、光は容易だが、水質は非常に困難

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これも考えれば解りますが、まず光の検証を行う場合、水槽にいくつも異なる波長ランプを並べて、異なる蛍光タンパクの検証を1つの水槽で同時に行うことが可能です。同じ水槽内ですから、水質の差で影響を受けることもありません。それで蛍光が濃くなれば、そのランプが効いたと100%確定する訳です。しかも、蛍光タンパクはSPSやLPSを問わず、色さえ同じならどのサンゴでも共通した光制御で色揚げすることができます。また、蛍光も色素も形成は比較的早いので、一週間もあればビフォーアフターが観察できるでしょう。だから体験者が一気にここまで増えたのです!

ピカチュウにバイタルウェーブ・シアンを当ててYFPを色揚げされたmarronさんの例
ピカチュウにバイタルウェーブ・シアンを当ててYFPを色濃く色揚げされたmarronさんの例

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一方、水質によって色揚げを検証する場合はどうでしょう。一度にあれもこれも投与してしまうと、何が効いたのか不明です。Aが効いたのかBが効いたのか、はたまたA+Bで効いたのか、そしてその項目が増えれば増えるほどネズミ算で答えは遠ざかっていきます。従って、水質による反応を正しく検証するには、個別の水槽が必要になるという訳です。例えば、各アミノ酸の効果を調べるなら最低20個の水槽、そしてそれらの組み合わせも検証するなら、2組ずつの検証では190個、3組だと1140個の水槽が必要になります。さらに鉄やコバルト等の元素も調べるなら最低でも30個程度の水槽が、 2組ずつの検証なら400個超、3組なら4000個超の水槽が必要に…。
一体どれだけの数のサンゴが必要になるのか?
しかも1水槽あたり何日で答えが出るのか?
そもそも全ての水槽の水質を同一に管理できるのか?
どう考えても、サンゴが色揚げできる添加剤の研究は途方もない労力が伴いますね。少ない水槽でアレコレ添加して少し効いた気がしたくらいではそう簡単に製品化する訳にもいかないので、本当に頭が下がります。しかし、少なくとも励起光もなしに上記のmarronさんのピカチュウの色揚がりを召還する添加剤が作れるのかと問われれば、僕は現時点では無理だと思います。実際、何を添加してどの蛍光タンパクが何日でどれくらい増加したのか、そのビフォーアフターどころか、色揚げプロセスの説明すら見たことがありません。せいぜい「鉄は緑色に良いらしい」の言い回しと大差ない曖昧な個人の感想ばかりです。
だけど、それでも大手メーカーはそうした困難に立ち向かい、どうにかして色揚げできる添加剤を開発しようと今も努力してるのかも知れませんし、もしいつか本当にそんな添加剤が実現されたら僕は心から尊敬します。その時こそ、光と水質が同じ土俵でよきライバルとなるのか、はたまた光と水質の相乗効果がハーモニーを奏でるのか、今からとても楽しみですね✨
ただ、仮に100歩譲って、添加剤で少しでも蛍光タンパクが増えたとしますよね、でも励起光が弱ければ結局弱くしか光らない=発色しないので、増えたことを鑑賞するには、結局それなりの波長強度の励起光が必要になってくると言うことです。忘れないで欲しいのは、どんなに蛍光タンパクが増えたところで、励起光がなければ光らないということなのです(真理)
だから、いずれにしても励起光の補完は必要になる訳です☝

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結論:サンゴの色揚げは、とにかく換水して、蛍光タンパクなら励起光を、色素タンパクなら白系を強めに、当ててください。現時点ではそれしか答えがありません。その上で、サンゴの健康維持を底上げすべく、管理できる範囲で添加剤を用いることは有益です。あくまでも間接的ではありますが、サンゴの色揚げのサポートにはなるかも知れません。但し、くれぐれも過剰添加には気を付けてください、本当に。怪しい時はとにかく全量換水です☝

ここまでお読み頂ければ、サンゴの色揚げには光が非常に重要だとご理解頂けたと思いますので、その上で更にサンゴの光化学の詳細が必要になりましたら、当サイトのトップページ珊瑚色管理2022の全ページを解放していますのでご覧ください。無料ですよ✨
(書籍もあるので欲しい方はご連絡ください)

珊瑚色管理2022
珊瑚色管理2022

バイタルウェーブの10年の歴史と進化

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サンゴの光化学が白熱して長引きましたが笑、ここからはバイタルウェーブの解説です☝

まず、2012年に登場した初代バイタルウェーブは、VitalWave 7WVitalWave 3Wの2種類で、ワット数こそ2種類ありましたが、カラーバリエーションはViolet/Cyanの2種類しかありませんでした。バイオレット光(400-420nm)を発しブルー/シアン蛍光タンパクを励起するVioletと、シアン光を発しイエロー/レッド蛍光タンパクを励起するCyanです。そのすぐ後にSunが追加されましたが、これは波長の補完用ではなく、それ単体で水深10mの海中スペクトルを再現しメイン照明となるものでした。

二代目バイタルウェーブのパッケージ (2017年)
二代目バイタルウェーブのパッケージ (2017年)

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その5年後、2017年のリニューアルでは3Wは廃止され、9WのVitalWave 9Wと5WのVitalWave 5W(UVA370)へ名前を変え、カラーバリエーションは8種類に増えました。従来のViolet/Cyan/Sunに加え、ブルー蛍光タンパクをより励起するUVA370、レッド蛍光タンパクをより励起するGreen、色素タンパクを促進するAmber、光合成に特化したChlorophyll、淡水・植物用のPlantです。また、BluetoothによるアプリECOPTOが使用可能となり、点灯開始時間・消灯時間・出力%が設定できるようになりました。

2017年版アプリECOPTO(左)と、2022年版アプリECOPTO-VW(右)
2017年版アプリECOPTO(左)と、2022年版アプリECOPTO-VW(右)

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そして更に5年後の2022年に2度目のリニューアルを迎え、名前はVitalWave IIになり、ラインナップはそのまま8種類を継承となりました。
特筆すべきは、更に進化したアプリECOPTO-VWにより、遂にタイムテーブルが設定可能となり、メイン照明さながらの1日の日照変化が再現できるようになりました。

三代目バイタルウェーブのパッケージ (2022年)
三代目バイタルウェーブのパッケージ (2022年)
旧アプリによるオンオフタイマー(左)と、新アプリによるタイムテーブル(右)
旧アプリによるオンオフタイマー(左)と、新アプリによるタイムテーブル(右)

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また、一部の仕様が変更になりました。UVA370はレンズがフラットになったので、レンズ面を下に向けて置いてもギッタンバッコンしなくなりました笑。また、Plantは徹底的に改良を加え、スペクトル精度をより厳格に突き詰め、色味の改善と演色性の向上を実現しました。
UVA370とPlantについては、また次回特集しようと思います。

以上、バイタルウェーブの歴史と進化、そしてサンゴの光化学をつゆだくでお送りしました。
機会があれば、最新型のVitalWave IIでサンゴの色揚げをお楽しみくださいね✨

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