サンゴの色揚げに関わる水槽のフタ選び
- 2023.09.14
- LED
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以前より、水槽のフタを用意する際は、素材によって透過率が異なり、蛍光タンパクの促進に有益なUV域の波長を減衰させてしまう場合があるので、用途によっては避けるように案内してきました。しかし、従来から公開してきた透過スペクトルのグラフではいまいち見方が分からないとの声があったため、今回は発想の逆転から減衰スペクトルを測定してみたのでご紹介致します。
従来から公開してきた透過スペクトルグラフ
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これが従来から公開してきた素材別の透過スペクトルグラフですが、それぞれのカーブを見ると、可視光線の左側のカーブが左下がりになっています。これは、カーブが高いほどその波長をよく通し、低いほど通し難いことを表しています。しかし、いまいち意味がピンとこないかも知れませんね💦
各素材毎の減衰スペクトルの測定と比較
そこで、実際に照明のスペクトルが、各素材毎にどのように変化するのか、それを測定して比較してみることにしました。
まず、もっとも影響が出やすいUV域をピックアップするために、サンゴ照明のSPECTRAとバイタルウェーブUVA370を重光して、サンゴの蛍光タンパクに有効なワイドバンドブルー+370nmを各ピーク波長強度を揃えて調光し、そこから各素材でどのようなスペクトル強度に減衰するのかを測定比較してみました。
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各素材の減衰スペクトル測定結果
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※WBBが減衰前のスペクトルで、370-475nmまでピーク波長強度を揃えています
※シアン500nmのピーク波長強度がやや低いのは仕様です"
※WBBが減衰前のスペクトルで、370-475nmまでピーク波長強度を揃えています
※シアン500nmのピーク波長強度がやや低いのは仕様です
WBB以外の各カーブが、実際に素材越しに測定器に届いたスペクトルとなります。
ガラスとパラグラスは、UVA 370nmが減衰することなく届いていることが分かります。これでフタを作れば、どんな照明の波長も減衰することなくサンゴに届くというわけです。
一方アクリルは、400nm以上の可視光線は問題ありませんが、UVA 370nmは20%程しか届いていないことが分かります。これではバイタルウェーブUVA370を当てても意味がありませんね💦
また、ポリカや塩ビはUVA 370nmをまったく通さず、400nmでさえ60%程度しか通さないので、ただでさえUV域の弱い照明をお使いの場合は、サンゴのブルー蛍光BFPやシアン蛍光CFPの色揚げに致命的な悪影響を及ぼすでしょう。但し、グリーン蛍光GFPやイエロー蛍光YFPやレッド蛍光RFPはブルー光やシアン光で励起されるため影響はありません。
なお、PETは一見UVA 370nmを60%ほど通しますが、ブルー光以下の短波長がそれなりに削れてしまうので、基本的にはお勧めしません。
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おまけ:応急的に使える高透過スペクトル素材
実は、これも過去に何度か触れたことがあるのですが、具体的なデータを出したことがなかったので、今回大公開しておきます。
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はい、サランラップです✨笑
透過スペクトルはこうなります。
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ドーン!笑
まるでガラスのように、UVA 370nmも見事に通すのです✨
例えば、フタが用意できるまでの応急使いや、数日家を空けるので蒸発量を減らしたい等、サランラップはレンチン以外にも水槽の一時的なフタとして威力を発揮するのです!笑
お試しあれ✨
尚、今回使用したサランラップとは、旭化成のサランラップのことです。他社のラップではどうなるか分かりませんので、ご使用は自己責任でお願いします☝
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