オカヤドカリ Land Hermit Crab in Pacific Rim のレビュー
- 2024.10.18
- ヤドカリ
今月発売予定の オカヤドカリ Land Hermit Crab in Pacific Rim / 笹塚諒著 を一足早く拝読させていただいたので、ヤドカリファンの皆さんに簡単なレビューをご紹介しようと思います☝
今作は笹塚さんが大学生時代に刊行された オカヤドカリ Land Hermit Crab in Japan のグレードアップ版ということで、今回日本国内も含め環太平洋を廻られて調査された合計14種のオカヤドカリ類を網羅した図鑑となっています。
環太平洋のオカヤドカリ14種
14種の内訳は以下の通りです。(掲載順)
※リンクは超ヤドカリ図鑑へ飛びます
- オカヤドカリ
学名:Coenobita cavipes Stimpson, 1858
英名:Concave Land Hermit Crab - ナキオカヤドカリ
学名:Coenobita rugosus H. Milne Edwards, 1837
英名:Wrinkled Land Hermit Crab - ムラサキオカヤドカリ
学名:Coenobita purpureus Stimpson, 1858
英名:Blueberry Hermit Crab - オオナキオカヤドカリ
学名:Coenobita brevimanus Dana, 1852
英名:Indonesian Hermit Crab - コムラサキオカヤドカリ
学名:Coenobita violascens Heller, 1862
英名:Viola Land Hermit Crab - サキシマオカヤドカリ
学名:Coenobita perlatus H. Milne Edwards, 1837
英名:Strawberry Hermit Crab - オオトゲオカヤドカリ
学名:Coenobita spinosus H. Milne Edwards, 1837
英名:Forest Hermit Crab - ヤシガニ
学名:Birgus latro (Linnaeus, 1767)
英名:Coconut Crab - アカツキオカヤドカリ
学名:Coenobita pseudorugosus Nakasone, 1988
英名:Marble Land Hermit Crab - フシグロオカヤドカリ ※著者による新称
学名:Coenobita carnescens Dana, 1851
英名:- - アシナガオカヤドカリ ※著者による新称
学名:Coenobita longitarsis De Man, 1902
英名:- - ウスムラサキオカヤドカリ ※著者による新称
学名:Coenobita lila Rahayu, Shih & Ng, 2016
英名:Indonesian Blueberry Land Hermit Crab - レンガオカヤドカリ ※著者による新称
学名:Coenobita variabilis McCulloch, 1909
英名:Australian Land Hermit Crab - ハクボオカヤドカリ ※著者による新称
学名:Coenobita compressus H. Milne Edwards, 1837
英名:Ecuadorian Hermit Crab
10~14の和名は、著者による新称とのことです。
専門用語について
また、内容はとても専門的で、僕も耳馴染みの薄い専門用語がいくつかありましたので、まず始めに覚書として用語の意味を書き留めておきます。
- 斜向顆粒列(しゃこうかりゅうれつ):左の鉗脚の前節(不動指)の上辺に並ぶ突起列
- 眼柄の側扁(そくへん):主に魚の体型を表す用語で左右から押し潰したような形状を指す
- 隠蔽種(いんぺいしゅ):DNA鑑定しないと区別できないような近似種
- 黝色(ゆうしょく):やや青味のある濃いグレー #404048
- 放幼(ほうよう):オカヤドカリによる放仔(ほうし) ※ハッチアウト
- アンキアライン:地下で海と繋がって汽水化している水域
- 爬行(はこう):這って歩く
- 輪禍(りんか):車に引かれる被害 ※ロードキル
- 脱貝(だっかい):宿貝を脱ぎ捨てる様子
- 潜砂(せんさ):砂に潜ること
その他の専門用語については、超ヤドカリ図鑑のヤドカリ図解を参照ください。
本書の目次
まず、本書の目次をご紹介します。
ワクワクしますね☝
※数字はページ番号
- 3 ヤドカリとは
- 4 オカヤドカリとは
- 5 体構造
- 7 図鑑(環太平洋分布種)
- 37 種判別の要点
- 41 生息環境
- 53 生活
- 55 生態系での役割
- 56 天敵
- 57 繁殖
- 59 生活史
- 60 ヤシガニの成長
- 61 貝殻の役割
- 63 防御行動
- 65 脱皮と再生
- 67 名と宗教・民族
- 69 ヤシガニの食文化と保護
- 70 オカヤドカリの利用
- 71 飼育方法
- 73 飼育環境例
- 75 コラム
- 77 短報
- 79 写真集
- 81 参考文献
- 82 あとがき
この中から、特に僕の興味深かった項目について少しご紹介します。
オカヤドカリの斜向顆粒列って何だ?
斜向顆粒列は僕も知らなかったオカヤドカリの特徴で、ある種とない種に別れているようです!
確かに過去に撮った画像をよく見てみるとありました!
オカヤドカリやコムラサキオカヤドカリ、ヤシガニにはありませんでした。
これはかなりのお役立ち情報ですよね☝
斜向顆粒列以外にも検索チャートが図解で示されているので、オカヤドカリの識別に大いに役立つと思います☝
ヤシガニの生活史
ヤシガニの寿命が長いことはそれとなく知ってましたが、ここで改めて詳しく知ることができました。僕的に非常に興味深い内容だったので簡単にご紹介しておきます。
ヤシガニの寿命は50年以上あり、まずゾエアからグラウコトエに変態した後、しばらくして宿貝を背負うようになり、ゾエアから通算約1.5ヶ月で上陸し、その後3-4年で腹部の石灰化が進み、しばらくは脱着を繰り返すが、その後宿貝への執着がなくなって完全に脱ぎ捨てる、とのことです。宿貝を背負ってる期間が思ったより長いので、フィールドでも探せば見つけられそうですね。
また、ヤシガニの形態形質はオカヤドカリとは結構違うようで、例え宿貝を背負った幼稚体でも、胸脚の収まり具合を観察すれば意外とオカヤドカリとの区別は容易だと気付きました。
オカヤドカリは宿貝に引っ込んだ際に見事な造形でフタと化しますが、ヤシガニはフタとしての最適化が成されておらず、宿貝に依存しない習性が垣間見えるようですね。
胸脚の自切と再生
ヤドカリは外敵との対峙やストレスにより胸脚を自切しますが、その再生プロセスについても詳しく載っていました。経験上、水棲のヤドカリしか知りませんが、てっきり脱皮のタイミングで再生(復元)するモノだと思ってましたが、オカヤドカリの場合は(水棲も?)、自切後の節から再生芽が伸びていき、それが脱皮の時にしっかりした形に整形されるようです。
全体の感想
まず、写真がとても多く見応えがある一方、書籍のサイズがA5版なので、ページが嵩んでも良いからもう少し写真を大きく載せて欲しかったなと思いました。あるいはA4版なら文字も大きく読めて、老眼には助かったかな🤔笑
あと、生息環境の写真が多く載せてあるのはとても有用ですね!
どんな場所へ探しに行けば良いのか凄く大きなヒントになると思いました!
その他、飼育方法もプロ仕様で詳しく紹介されているので、他の入門書からのステップアップにも活用できる図鑑と言えそうです。
そして個人的には斜向顆粒列という存在がとても気に入ったので、この図解のイラストは是非個別写真で紹介して欲しかったですね。僕も次回からコレが写るように工夫して撮影していきたいと思いました。
あと、アシナガオカヤドカリについては、宿貝に収まって脚しか見えてない写真しか載っておらず、「オカヤドカリの可能性あり」とも但し書きされていたので、次回の激写に期待してます。脚の長いオカヤドカリって凄く興味ありますからね!
海外の種については、メキシコからエクアドルにかけて分布しているハクボオカヤドカリはiNatでいつも見慣れていたのですが、フシグロオカヤドカリ、ウスムラサキオカヤドカリ、レンガオカヤドカリについては、僕もまだ特徴をいまいち把握できてないので、これを手がかりに今後はiNatでの判定も増やしていきたいなと思いました。また、iNatでもまだほとんど観察記録がないアカツキオカヤドカリとアシナガオカヤドカリについては、もしかしたら他種との混同もあり得そうなので、またいずれ過去の記録を見直していきたいと思います。
以上、簡単ではありますが、個人的に気になった一部だけレビューさせていただきました。もちろんこれ以外にも目次の通り色んな角度から貴重な情報が満載なので、詳しくは実際に手に取ってご覧いただきたいと思います。
笹塚諒さんのオカヤドカリ Land Hermit Crab in Pacific Rimは、全82ページ、価格は2000円、ジェイズ・エンタープライズ発行、2024年10月26日発売です。
ヤドカリファンの方にオススメです☝
2024年10月26日からのいきもにあで本格販売開始、通販は2024年10月27日より開始予定です。
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