前回に引き続き、今回はeco-lamps KR92とKR93を比較検証してみたいと思います。
尚、この記事の中に出てくるノーブランドとブランドと言う表現は、前者を白い汎用パッケージで標準的な光量の安価なLED素子、後者をCreeやPhilips Lumiledsのような高効率・大光量LED素子を指すものとします。便宜的なものであり他意はありません。
まず、外観から。
あ、今回はKR92のブラック、KR93のシルバーをお借りしましたが、両機種ともブラック/シルバーがラインナップされていますのでご安心を。
色違いは別として、KR92とKR93は、外観上の違いが特に見当たりません。
レンズが広角になったKR93との違いも、目視では判りません。
そしてコントロールパネルも見た目は全く同じです。。。
が、このコントロールパネルに注目です。
KR92では、ディライト・モード(全点灯)時のホワイト/ブルー/ムーンの強弱の比率までは調整できませんでした。
しかしKR93では、このディライト時のみ、ホワイト/ブルー/ムーンの点灯比率をそれぞれ0-100%で調整できるようになっています。とは言え、ムーンは左サークル部の中心1素子だけの調整なので、これをいじっても大して変化は無いかも。実質、ホワイトとブルーの比率調整と考えて良いと思います。(ホワイト/ブルー/ムーンの各モード時の発光パターンは前回の記事を参考に)
また、KR92とKR93では、操作性がやや異なるようです。これは、操作パネルを流用しつつ追加機能を実装したことによる仕様変更だと思いますが、混乱するので両者を同時に所有することはお勧めしません(汗)
続いて、各モードでの配光を比較してみました。
ムーンは同じっぽいけど、ディライトとブルーの配光は何かが違います。
どこがどーなってんのかな?
てな訳で、更に詳しくレンズを個別に見ていきます。
あぁ、なるほど。サークル部は同じで、サイドライン部が変わったようです。
まぁ、去年の記事でも書いてましたが、サークル部は引継ぎ55°で、サイドライン部が55°から75°に変更になったのです。確かにブレンド性は高まって見えますね。ただ、LeDioのように拡散プリズムレンズにした方がもっと綺麗に混ざるのになぁ、と言うのがやや残念な点。今後の課題かしら。
それに、どうせなら中央も75°にして欲しい。そしてその分、サークル部を3つに増やして中央をムーン担当にすれば、左右対称にもなるし合理的だと思う。夢は膨らみます♪
ちなみに、拡散プリズムレンズを乗せた場合のシミュレーション。(合成です)
まあ、サークル部はクリアレンズの割に比較的綺麗にブレンドされてるようなので、何か工夫があるのでしょう。でもサイドは是非とも拡散にして欲しいところです。
まだまだ伸びしろが残ってます♪
さて、続いて照度対決の結果です。(全点灯時/30cm照度)
ついでに、過去に紹介したLEDライトとも比較してみましょう♪
メーカー | 製品 | レンズ | 30cm照度 |
---|---|---|---|
Maxspect | max-s G2 160W | なし | 22,190lx |
レンズキット60° | 50,000lx以上 | ||
Vertex | Illumina SR 300 80W | なし | 14,690lx |
eco-lamps | KR92 12″ 50W | 55° | 38,940lx |
KR93 12″ 50W | 55°+75° | 33,740lx |
ほほぉぉぉっ!!!
さすが、当時ワクワクしただけのことはあります♪
これ、50WのLEDシステムライトとしては、多分現時点でブッチギリ独走一位じゃない?
ひとつ面白い例を紹介しましょう。
例えば、このKR92/KR93のように42WのLEDライトの構成パターンを考えてみます。
ざっと、以下のようなパターンが挙げられるでしょう。
1W駆動×42ヶ=42W
3W駆動×14ヶ=42W
両者ともに、同じ42Wです。
で、これをノーブランドとブランドのLEDで構成したとして、それぞれを比較してみましょう。
仮にノーブランドをOptoSupply、ブランドをCreeとします。
各LED素子は、以下のものを使用するとします。
駆動 | メーカー | LED素子 | カラー | 光束 |
---|---|---|---|---|
1W | OptoSupply | OSW4XME1E1E | PureWhite 6500K | 100lm |
Cree | XP-G R5 | CoolWhite 5000-8300K | 139lm | |
3W | OptoSupply | OSW4XME3E1E | PureWhite 6500K | 200lm |
Cree | XP-G R5 | CoolWhite 5000-8300K | 139lm×1.8≒250lm DataSheet - Relative Flux (6P) |
この条件で先ほどの42Wをそれぞれ構成してみましょう。
順位 | LEDライト構成光量 |
---|---|
1 | Cree 1W × 42ヶ = 5,838lm |
2 | OptoSupply 1W × 42ヶ = 4,200lm |
3 | Cree 3W × 14ヶ = 3,500lm |
4 | OptoSupply 3W × 14ヶ = 2,800lm |
ノーブランド1Wの方が、Cree 3Wよりも明るいですよ♪(笑)
まあ、42ヶ作戦なんて、素子が安いからこそできる技です。Creeを使わざるを得ないなら、多少光量を犠牲にしても3W×14ヶ作戦を選ぶケースもあるでしょう。どこで折り合いをつけるかは、メーカーの思案どころとなります。
どこを取って製品の良し悪しとするかは視点次第ですが、例えば消費電力や効率・寿命にとことんこだわった場合の製品選びをするなら、僕はこんな順位になるかな、と思います。
順位 | 理想構成 | 理由 | 該当製品 |
---|---|---|---|
1 | ブランド+1W駆動+レンズ | 高照度、高効率、集光 | |
2 | ノーブランド+1W駆動+レンズ | 高効率、集光 | KR92/KR93 |
3 | ブランド+3W駆動+レンズ | 高照度、集光 | max-s(レンズキット) |
4 | ノーブランド+3W駆動+レンズ | 集光 | |
5 | ブランド+1W駆動 | 高照度、高効率 | |
6 | ノーブランド+1W駆動 | 高効率 | |
7 | ブランド+3W駆動 | 高照度 | max-s、Illumina SR |
8 | ノーブランド+3W駆動 | - |
やはり光量に一番影響するのはレンズの有無ですから、これはまず最優先事項だと言えます。次に来るのは効率かブランドか、これは一概に言えませんが、ブランドであっても出力を上げれば効率は低下(ドループ現象)しますし、ノーブランドであっても1W駆動なら効率は維持しつつ、熱による素子の劣化なども回避できます(経験上、ノーブランドのような白い汎用パッケージ素子は、3Wや5W等の高出力駆動時ほど、また波長エネルギーが高いほど(UVや青等)、プラスチックレンズの変質・劣化等が起きやすく、極端に寿命が短くなります)。よって、効率とブランドは、ドライブや採用素子によって優先度が前後する場合も考えられるでしょう。
但し、これが波長重視となるとまた見方は変わってきます。現時点ではカスタマイズ製が高く、UVを標準で搭載しているmax-sがダントツでしょうし、シアンを工夫しているPhilips Lumileds版のIllumina SRも魅力的です。そうなると、KRシリーズは分が悪いでしょう。
ただ、価格の面で遥かに有利であるため、お釣りで補助ランプを揃えると言う選択肢もあります。シアンの単一ランプはまだありませんが、UV等は既製品で容易に補完できます。
照度をとるか? それとも波長をとるか?
水槽条件や生体の要求に合わせて選択すると良いでしょう。
最後に、製品選びのポイントとかアドバイスとか。
ノーブランド素子を採用した製品は決して悪くはありません。今回のKR92/KR93のように賢い設計の元では、最高の光量と効率、そしてコストパフォーマンスを発揮します。但し、ノーブランドの場合、駆動は1Wが理想で、高くても3Wまで。それ以上は効率の問題以上に素子寿命が心配です。
また、理想を言えばブランド素子の1W駆動ですが、これは素子数=コストであるため、メーカーはなかなか作りません。よって、どうしても3W駆動、5W駆動となるでしょう。ただ、いくらブランド素子でも、僕は5W駆動は効率の問題からあまりお勧めできません。熱い割に暗く、電力の無駄です。同じ5Wでも、5W駆動×1ヶより、1W駆動×5ヶの方が、2倍も3倍も明るいですから。
そして、現状では選択肢が限られますが、なるべくならレンズを搭載した製品がお勧めです。理由は過去の記事を見れば判りますよね。詳しくは割愛します。
以上、参考になるかしら♪
1. TAKA 2011/04/20 11:20
1W駆動が効率的に良いという話は、アメリカのアクア用の某LED開発者に聞いたことがあります。そこは、確かCreeの1Wを使用していたと思います。UVの付けてましたね。が、実際はあまり売れていません。。。売り方の問題が大きと思います。
今回のKR93/92のスペクトラムはどんな感じでしょうか?いつも実験で出されている分光スペクトルを参考にしたいです。
RCでKR93だけでSPSを飼育されているスレッドを見ましたが、結構綺麗にSPSの色を維持されていました。めちゃくちゃ明るい感じがしましたね。
LEDのシステムライトを選択するときに、MAXSPECTのようにLEDライトを交換できるのは非常に大きい要素だと思います。というのは、高価な機材を購入してLEDが途中で切れてしまったら泣くに泣けないですから。メーカーで素子の換装をして修理してくれるのなら別ですが。
2. エイジ 2011/04/21 03:40
効率云々はデータシートを見れば判る事ですが、気付かない人のために敢えて触れてみました。
スペクトルは見るまでもないので見てません(汗)
だって、所詮ノーブランドの青と白を混ぜたもの、と判ってますから。
これで維持できてる水槽なら、他社のLEDでも同じ照度を稼げば維持できるはずです。
これに関しては特別な波長が含まれる訳でもないし、むしろUVとシアンが足りないのは明白なので、そこに影響を受けるサンゴさえ入れなければ大丈夫でしょう。
明るく感じたと言うのは見る目があります。普通の人はレンズの付いてないライトの方が横から見た時に素子がまぶしいので明るいと錯覚しやすいんです。
素子交換は、残念ながらKRは分解できないようにしてあるので、修理に出すしかないです。もちろん修理はして貰えるはずです。
ただ、経験上、素子自体がよほど粗悪でない限り、1W駆動では切れません。
むしろ寿命も考慮して、そのための1W駆動とも言えます。
3W駆動ならあるいは切れる場合もあります。寿命も短くなるだろうし。
max-sが素子交換できるのは、実は元々ノーブランドを3W駆動して寿命が短くなることを踏まえての仕様だと思います。今は都合よくカスタマイズ性と言ってますが(笑)
3. TAKA 2011/04/21 04:07
もう少しLED関連で質問させて下さい。
エイジさんは、スペクトルが重要だと書かれています。私もそう思うんですが、白と青だけのLEDシステムライトだけでも、結構SPSを綺麗に維持されている方もいます。こういうのを見るとスペクトルは白と青のLEDだけで十分なでは?と感じるのですが、どうなんでしょうか?私の頭の中に何か抜けてるからそう思うのでしょうk?
KR93/92のスペックをみて、こちらで売れてるAIのSolを頭を横切りました。こいつは、3WのXPG(白と青)を12インチモデルで24個使用しております。レンズも使用されており40度と70度のレンズが複合されているようです。
以前にKR93をレビューした感じでエイジさんの見解をお聞きしたいのですが、可能でしょうか?
http://aquaillumination.com/sol/index.html
4. エイジ 2011/04/21 08:50
> 白と青のLEDだけで十分なでは?と感じるのですが、どうなんでしょうか?
もしTAKAさん自身が過去にUVが必要だシアンが必要だと体感していないなら、僕の演説はただの寝言かも知れません。しかし僕はそれを必要と知り体感もしたので邁進しているところです。
よって、TAKAさんが周りを見て白と青だけでうまくいってると思われたのなら、そこに習うと良いと思います。
しかし、逆に同じ構成で失敗する人も必ず居ます。その人を無視することもできるけど、その場合、成功者の環境を忠実に再現しないと、同じように成功する保証は無いかも知れません。そうでなければ、TAKAさんも失敗者の仲間になり得ます。
また、僕は半ば太陽の崇拝者です。6500Kや10000Kを愛用してきた人間です。だからLEDでも太陽を再現したいと考えています。その意味でも、既製のLEDに欠落しているUVとシアンが必要なのです。
では、UVやシアンが無くても上手くいってる水槽はなんなんだ?と思われるでしょう。
この記事で少し解決しませんか?
http://www.1023world.net/blog/2010/11/09
一般の白+青でも、UVやシアンは絶対的ゼロではないです。素子を増やして、出力を上げて、レンズで集光して、それなりにかさ上げは成されます。
あるいは、一番の問題は、何をもってして「上手くいってる」と言えるのか?にもよります。100のサンゴを入れ、適応して生き残った50のサンゴだけを見て「成功」とするのか、消えた50のサンゴも見て「失敗」とするのか。単純に100の成功を収めた人など居ないはずです。消えた部分にも目を向けないと。
> KR93/92のスペックをみて、こちらで売れてるAIのSolを頭を横切りました。
構成はまるで別物のようですよ。確かに白はCree XP-G、青はXP-Eを使ってますが、更にロイヤルブルーも使ってるようです。
と言うことは、もし、青について先日の僕のVertexのレビューのような思惑があっての構成なら、大したもんです。
http://www.1023world.net/blog/2010/12/14
ま、仮にそうでなくとも、40°と70°なら、相当な照度でしょうね。
ちなみに僕はこの基板とレンズ構成を見て、すぐにSolarMaxのLEDを思い出しました。
http://www.1023world.net/blog/2010/06/12
外観は違うけど、中のユニット構成は似てますね。
レンズがある点で僕は「あり」かなと思います。もう少し広角・拡散にして欲しいけど。
あとはBlue/RoyalBlueの意図次第では、評価が全然違ってきます。シアン対策が出来てるなら75点、ダメなら65点です。
Creeなので少し評価が高いけど、UV、効率、広角・拡散、赤の点で-25点です。
そういう意味でKRも65点です。
僕の中での現時点での最高点はmax-s Cree版です。標準のままではレンズ、効率、シアン、赤の点で50点(失礼)ですが、レンズキット(フライアイ90°)+シアン+電球色を入れたなら90点になります。-10点は効率です。仕方ないです。
ま、あくまで僕の勝手な評価の話ですよ。ご容赦を。
5. TAKA 2011/04/21 13:12
エイジさん、まいどありがとうございます!
UVやシアンが必要かどうかは私にはわかりません。シアンに関しては、エイジさんが初めて注目したんじゃないかなと思います。着眼点がすごいなと。
エイジさんと違って、この趣味を始めた頃はすでに14000Kや20000Kなどの青球が流行っていたので、6500Kや10000Kの効果はよくわかりません。10000Kは一度使用したことありますが、あまり効果を実感できませんでした。
白や青のLEDでシアンが0でないことは理解できます。メーカーがそれを狙ってシアンを補完しているのか知りませんが。
「うまくいっている」ってのは確かに曖昧な言葉ですよね。でも、皆さん100入れて100成功している人なんていないのではないでしょうか?僕が言いたかったのは、「LEDだけで綺麗なSPSを不可能」だと思っていたのに、意外に多くの人が綺麗に維持されている点です。
Solの感想ありがとうございます。ちょっと弄ればエイジさんから結構良い点もらえそうですね。Upgradeを見越した構成になっているので、メーカー次第で良い方向にいきそうですね。
6. エイジ 2011/04/22 13:50
> シアンに関しては、エイジさんが初めて注目したんじゃないかなと思います。
「UVに関して」「電球色に関して」もよろしくお願いします(笑)
シアンの波長帯域をサンゴが利用しているかどうかと言うソースは僕発ではありません(秘密)
僕はただ、出回っているアクアLEDが漏れなく白+青と言う単純な構成だったので、UVもシアンも赤も欠けてますよ!と警鐘を鳴らしただけです。太陽光を望むなら。
> 10000Kは一度使用したことありますが、あまり効果を実感できませんでした。
目的ありきですよ。生体と水深に合わせて適切に光線を割り当てないと、実感の前に視点の定めようがありません。
生息環境優先なら、深場の人は6500K使わないし、浅場の人は20000K使わないです。
鑑賞優先なら別として。
> メーカーがそれを狙ってシアンを補完しているのか知りませんが。
今のところシアンを意識しているのはMaxspectとVertex(多分)だけじゃないかしら?
> 僕が言いたかったのは、「LEDだけで綺麗なSPSを不可能」だと思っていたのに、
「綺麗な」と言うのも曖昧ですよね。
一見どれも綺麗な水槽でも、もしかしたら青だけ維持できないのかも知れないし、パープルがダメかも知れない。ミドリイシのパープルはOKでも、エダコモンのパープルはダメかも知れない。結局は生き残った綺麗なものだけ集めたら可能ですから、それは。メタハラでも同じ面はありますが、波長が偏ってる分、LEDはより顕著です。
また、超浅場の綺麗な個体集めた水槽を維持するよりも、浅場以深の綺麗な個体集めた水槽の方が維持は容易です。浅場ではUVもシアンも赤も再現が必要ですが、深場なら青ベースで他は多少弱くても許容されますし。トリックじみてるけど。
更に、ミドリイシの綺麗な個体は諦めて、丈夫なソフトの中から綺麗なものを探した方が早い、なんてことも。
あとはソースの信頼性の問題もありますね。1年2年の経過画像でもあれば確実ですし。買って並べてパチリは誰でも出来ますから。
あるいは、実はメタハラ当てていた!?なんてこともあるかも(汗)
と、これだけ疑心暗鬼にならなきゃダメなほど、LEDはまだまだ混乱が多いです。情報に振り回される難民が無くならないし、僕だって正しいとは限らない。むしろ僕が混乱の元かも♪