1.023world - ヤドカリパークとマリンアクアリウム -

海洋の仕組みと細菌・微生物から学ぶマリンアクアリウムサイト

1.023world Facebook

結果 Oh! Life (旧ブログ)

懲りずに書いてみたりする結果オーライな日記

コントラスト問題と照度減衰率

マリンアクアリウム エイジ 03:36
この記事を含むタグの全記事リスト: LEDうんちく プチ実験

大雑把な話、2階のベランダで測ろうと、1階の庭で測ろうと、太陽の照度は変わりない。
ところが、メタハラやLEDなどの人工照明じゃ、そうはいかない。
まあ、水槽の場合は何メートルも水深があるわけでは無いが。。。

話を1年ほどさかのぼるが、当時僕はLED+レンズに於いて、やりすぎはコントラスト問題を生む、と豪語していた。そして無難なビーム角として90°を導き出した。集光効果も得られつつ、コントラスト問題も適度に回避できるビーム角だ。

ところで、そもそもコントラスト問題ってなんだ?

それは、レンズによる集光によって強制的に高められた照度は、投影対象に極端なコントラストを与えてしまうと言うものだ。例えば、ミドリイシの上面が超明るいのに、裏面が超暗い状態。また、ミドリイシの頭頂部には数万ルクスも当たっているのに、数センチ下の枝には数千ルクスしか当たらないと言う状況も生み出す。。。

いや、正確にはこれは、感覚的な推測に過ぎなかった。もちろん、光を絞れば絞るほど周囲への反射成分がなくなり、物体のコントラストを強くしていくのは間違いの無いところだろう。しかし後者の「数センチの照度差」と言うのは、この推測から派生した、ただの感覚に過ぎなかったのだ。

先日、水槽を眺めながら、ある悩みにため息をついた。
それは、全てのミドリイシが、ある一線を境に白化したり萎縮したりというもので、その一線とは水面から3cmほどの水深である。ここより深ければポリプも発色も状態が良いのだが、そこより浅くなるとポリプが萎縮していたり共肉が褐色化あるいは白化しているのだ。

コントラスト問題め。。。

そう思った瞬間、ふと気づいた。

ん?
これって、本当にコントラスト問題っけ?

いつものように前置きが長くなったところで、本題に入ります。
検証には、以下のLEDを使いました。

20WのLED、レンズの有無によるビーム角の違い

また、これだけでは心もとないので、エリジオンのブルーホワイトも参戦させた。
以下、各LEDのレンズあり無しの照度減衰率の測定結果である。

各条件での照度減衰率

11Wがエリジオン。各値は照度lx。

距離
[cm]
レンズ無し レンズあり
11W 20W 11W 60° 20W 90°
10 26,020 40,100 102,600 53,400
15 12,120 21,100 52,100 31,290
20 7,000 11,650 36,590 19,650
25 4,520 7,410 24,520 13,000
30 3,220 5,160 17,390 9,290
35 2,396 3,907 12,970 6,880
40 1,850 2,935 10,050 5,390
45 1,478 2,340 8,010 4,260
50 1,204 1,888 6,520 3,539
55 1,015 1,584 5,430 2,989
60 848 1,348 4,590 2,538
65 728 1,149 3,965 2,193
70 629 996 3,450 1,921
75 558 878 2,993 1,702
80 497 780 2,644 1,515
85 437 680 2,354 1,322
90 396.7 604 2,095 1,184
95 360.6 544 1,903 1,077
100 328 494 1,704 981

更に値読み取り用にピックアップしたもの。

レンズの有無による照度の減衰率の測定結果

この測定結果を基に、各条件で目的の照度を得た場合の、+5cm時との照度差を比較してみました。

目的照度 [lx] レンズ無し レンズあり
11W 20W 11W 60° 20W 90°
20,000lx 距離 12cm 15.3cm 27.8cm 19.8cm
+5cm 17cm
9,400lx
20.3cm
11,300lx
32.8cm
14,600lx
24.8cm
13,200lx
10,600lx 8,700lx 5,400lx 6,800lx
10,000lx 距離 16.5cm 21.5cm 40cm 28.8cm
+5cm 21.5cm
6,000lx
26.5cm
6,600lx
45cm
8,000lx
33.8cm
7,400lx
4,000lx 3,400lx 2,000lx 2,600lx
5,000lx 距離 23.8cm 30.5cm 57.5cm 41.5cm
+5cm 28.8cm
3,500lx
35.5cm
3,800lx
62.5cm
4,300lx
46.5cm
4,000lx
1,500lx 1,200lx 700lx 1,000lx

なんと、この結果によれば、レンズは無いよりあった方が照度差は小さいのだ!?
そう、コントラストと照度差は考え方が逆だったのだ。

そして、その集光した光の使用位置は、照明直下よりも、少し減衰率が落ち着いた当たりの距離が良いだろう。上のグラフで言えば右側のことだ。
これは、レンズの無い照明だと、照度を稼ぐためにより水面に近く設置しなければならないが、レンズさえあれば水面から離すことが可能になる、と言うことと見事にシンクロする。

要するに、レンズの無い照明をギリギリ水面に寄せて得た20,000lxは、少し潜るとすぐに照度が減衰してしまうが、レンズのある照明を水面から離して得た20,000lxなら、少し潜ったくらいじゃ照度は減衰しない、と言うことなのだ。

照度減衰率のイメージ

これは、文字通り光を光束に例えると良く判る。レンズと言うのは四方八方に広がるはずの光を狭い面積に集めて太い束にすることである。極論を言えば、光の束を太くすればするほど距離に対する照度の減衰率は下がり、ミドリイシの頭からつま先まで均一な照度で照らすことができるのだ。まさに太陽光のように。そういう意味でも、レンズオプションを出したmax-sは、つくづく賢いと言えるだろう。

ただ、実はこれは少しトリック気味に書いている。本当の問題はレンズがあるかどうかではなく、先の線グラフの右側(光源から遠め)を使うかどうかで、照度の減衰率は決まってくるのだ。その証拠に、それぞれの倍率(台数)を等価的に揃えた場合の照度をみれば大差ないことが判る。

距離 レンズ無し レンズあり
11W 20W 11W 60° 20W 90°
30cm 3,220 5,160 17,390 9,290
倍率 5.40 3.37 1.00 1.87
40cm 1,850×5.4
9,990
2,935×3.37
9,891
10,050 5,390×1.87
10,079
50cm 1,204×5.4
6,502
1,888×3.37
6,363
6,520 3,539×1.87
6,618
60cm 848×5.4
4,579
1,348×3.37
4,543
4,590 2,538×1.87
4,746

ただ、そうなると、用意すべき光量はメタハラ並みとなり、LEDなのに結局大電力食らいとなってしまう。例えば上の表からも判るとおり、エリジオンのレンズありの照度を稼ぐには、エリジオンのレンズ無しだと5.4台も必要となる。レンズがあれば一台で済むのに、だ。
とは言え、拡散・反射成分も無くすほどの狭角なレンズは推奨しない。やはり60~90°が妥当ではなかろうか。

と言うことで、照度の減衰率はコントラスト問題とは別の問題であることが判った。今後、この問題のことを、レンズが無いと水面が明るくても水底が暗いじゃん問題と呼ぼうと思う。長いか。

ところで、肝心の僕の水槽の悩みが解決していない。
仕方が無いので、とりあえず照明の高さを5cm離してみた(苦笑)
これで水面の照度は約40,000lx。
水面下3cmの個体にとっては、まだ眩しいのだろうか。。。

こちらのエントリーもどうぞ♪

コメントとトラックバック

コメント及びトラックバックはありません

コメントフォーム