ツノヤドカリの仲間は、僕がもっとも大好きなヤドカリです。 何が可愛いって、自ら砂に埋もれて呆けている様が、なんとも愛くるしいではありませんか。
Diogenes pallescens Whitelegge, 1897 / 和名未定
この子はまだ和名がありませんが、日本でもかなり古くから知られていて、且つ謎の多いヤドカリとも言えます。
自然下では、穏やかな泥地を特に好み、いつも泥だらけで活動しています。とは言え、タイドプールや磯場、さらにはダイビングで潜るような水深でも比較的普通に見られます。
サイズは小型で、大きくなってもせいぜい小指の先ほどの殻を背負う程度のサイズです。性格は穏和で動作ものろく、捕らえても殻の中に隠れようともせず、とても反応が鈍い感があります。
尚、同種に極めて近縁の不明種も、同様の環境から見られることもあります。その他、精査でも同定が困難な形質のものも多く、僕らの間でもそれらを一括りにして同種として扱うケースがほとんどです。
水槽ではあまり人工飼料にも餌付かず、ほとんどは砂粒をカリカリ囓って、表面のコケを摂取しているようです。しかし、その割にかなり長寿なので驚きです。砂の撹拌や砂粒磨き係としても、僕のオススメのツノヤドカリです。
Diogenes nitidimanus Terao, 1913/テナガツノヤドカリ
僕自身は今年になって初めて自然下で観察しましたが、やはり海水浴場のような砂浜の浅いポイントに多く見られるようです。
サイズ的には少し大型になりますが、それでも貝殻サイズでせいぜい500円硬貨大くらいでしょうか。上記の D. pallescens に比べると機敏で、危険を察知すると即座に殻に籠もるか、後ずさりでピョンピョン跳ねて逃げ回るような性格です。
本種はツノヤドカリ特有の羽根状の第二触角を持ち、まるでレーダー探知機のように器用に水流に対向させ、漂ってくる懸濁物やプランクトンを捕らえているようです。
写真から判るように、水流を受け止めるような向きで、触角鞭を上手に操ります。一見、水流の抵抗で逆向きにしなりそうな印象があるのですが、何か構造的に理屈な仕組みで構成されているのでしょうか。とてもプロフェッショナルでクールです♪
但し、水槽では本来の栄養摂取が不足しがちで、長期飼育は難しいかも知れません。色々与えてみて、好みを見つけると良いでしょう。僕の経験では、通常の甲殻類向け飼料はあまり興味を示しませんでした。プランクトンリッチな水槽が長寿の秘訣かも?