過去の関連記事はこちら。
サンゴのストレスと白化
前回の雑学3.サンゴの白化のメカニズムを改めて簡単にまとめると以下のようになります。
平常時の環境下 | 光合成効率OK、炭素固定能OK |
---|---|
高水温+光なし | 光合成効率OK、炭素固定能低下 |
高水温+光あり | 活性酸素上昇→光合成回路損傷 |
高水温+強光下 | 白化まっしぐら(汗) |
白化フローとしては、まず高水温により褐虫藻の炭素固定能が阻害され、続いて光合成の余剰エネルギーが活性酸素を生成し、それが光合成色素の損傷やサンゴへのダメージへと繋がり、以降悪循環となって白化に至ります。
サンゴの白化耐性は共生している褐虫藻の白化感受性により決定づけられるため、サンゴは褐虫藻の選定または複数の褐虫藻と共生することで環境に適応していると思われます。そしてこの順応性が高く、また白化に強い褐虫藻と共生しているサンゴほど、白化耐性は強くなると言えます。
詳しくは雑学3.サンゴの白化のメカニズムを参考に。
褐虫藻の種類
まず、サンゴの褐虫藻は、プラヌラ幼生期に水平感染として体内に取り込まれます(遺伝ではない)。そして成長と並行して、環境に応じた褐虫藻の選定と取得が必然的に行われているようです。
褐虫藻は形態の違いにより10種程度に分類が進み、また現在では18SrDNA解析によりA~Hのクレードに分けられています。
以下、最近読んだ書籍やネットでかき集めたデータを元に、褐虫藻の種とクレードのリストを作成してみました。但し、なるべく種名(学名)が判明しているものに限定し、種名無しのサブクレードはデータが膨大になるので省略しています。
尚、文献の時期により情報が交錯しているため、なるべく新しい情報を優先して編集しましたが、なんせ無学による適当なリストなので予めご容赦下さい。誤りがあったら訂正しますのでお知らせいただけると助かりますです。
クレード | 褐虫藻の種類 | 検出元 | |
---|---|---|---|
A | A1 | Symbiodinium microadriaticum subsp. microadriaticum | クラゲ、サンゴ |
A1.1 | Symbiodinium microadriaticum subsp. condylactis (=Symbiodinium cariborum ?) | クラゲ | |
A2 | Symbiodinium corculorum | シャコ貝 | |
Symbiodinium meandrinae | サンゴ | ||
Symbiodinium pilosum | サンゴ | ||
A4 | Symbiodinium (=Gymnodinium) linucheae | クラゲ | |
? | Symbiodinium natans | 新種(2009) | |
B | B1 | Symbiodinium bermudense | イソギンチャク |
Symbiodinium pulchrorum | イソギンチャク | ||
B4 | Symbiodinium muscatinei | イソギンチャク | |
C | C1 | Symbiodinium goreaui | サンゴ |
D | サンゴ | ||
E | E1 | Symbiodinium californium | Bに再分類? |
E? | Gymnodinium varians | ||
F | F5 | Symbiodinium kawagutii | |
G | サンゴ、イソギンチャク | ||
H |
現在、私的に注目(笑)している対紫外線色素 MAAs については、クレードAの褐虫藻が有しているそうで、このことから恐らく浅場の多くのサンゴがこのクレードAの褐虫藻を持つと思われます。一方、少し深場のサンゴではクレードAの必要性は緩和されるため、多様なクレードを広く有している可能性がありそうです。もちろん、クレードAを持たないサンゴに過度のUVを照射することは危険でしょうね(汗)
ちなみに、褐虫藻以外の共生藻としては、イソギンチャク等から緑藻ズークロレラと言う光合成藻が、ハナヤサイサンゴからヘテロカプサ属の渦鞭毛藻、ヒラムシからアンフィディニウム属の渦鞭毛藻が見つかっています。
サンゴと褐虫藻の共生は、サンゴによる嗜好性は見られるものの、必ずしも特定の褐虫藻に限定を受けず、環境によって別の褐虫藻や複数の褐虫藻を臨機応変に取り込んでいるようです。
参考文献
- 海洋微生物と共生 - 石田祐三郎 著/成山堂書店
- サンゴー褐虫藻共生系の多様性とストレス耐性に関する研究 - 琉球大学/日高道雄/H19.6
- オーストラリア温帯域のミドリイシと共生する褐虫藻の遺伝的多様性 - 琉球大学/安部真理子
- Symbiodinium Freudenthal, 1962: 52
- The evolutionary history of Symbiodinium and scleractinian hosts-Symbiosis,
diversity, and the effect of climate change - INVESTIGATING THE BIODIVERSITY, ECOLOGY, AND PHYLOGENY OF ENDOSYMBIOTIC
DINOFLAGELLATES IN THE GENUS SYMBIODINIUM USING THE ITS REGION: IN SEARCH
OF A “SPECIES” LEVEL MARKER. - Feature Article: An Update on Zooxanthellae (Symbiodinium spp.) What a
Difference a Year Makes!
1. takuro 2010/01/09 14:23
こんにちわ。
褐虫藻をもたない陰日性サンゴなのに
明るいところを好むトゲトサカはどういうメカニズムなんでしょうね?
サンゴって本当に不思議だと思います。
2. エイジ 2010/01/10 03:54
こんばんわ。
僕も光合成はしませんが日向ぼっこは大好きです♪
トゲトサカは従来ろ過時代に2~3体しか経験してませんが、僕の記憶では光に関係なく伸びていたり縮んでいたりしていたように覚えています。ま、弱ってくると縮む頻度が増えてたかな。給餌もさぼり気味で、なかなか維持できませんでしたけど。
3. takuro 2010/01/10 09:06
いえいえ暗いところに置くと明らかに縮んでしまいますよ。
強い水流と適度な照明が必要です。
LeDio7 UV の直射はさすがにだめでしたが・・・
どこで見たか覚えていませんが
トゲトサカは褐虫藻は持たないが
なんか似たような成分を体内に持っているらしいです。
不思議ですよね。
そもそも陰日性サンゴなのに2m~20mと比較的浅い水深のところにいるそうですからね。
なんで光が必要なのか・・・
是非研究してみてください。
うちで飼育しているヤギも強い光を当てた方が調子がいいイソバナなんてあったりします。
4. エイジ 2010/01/10 13:52
うちにはトゲトサカはいないので、是非takuroさんがレビューしてください♪
昼と夜の違いを一定期間モニタリングして、光の要求性が確認できれば、それはそれは素晴らしいネタになると思います。是非読んでみたいです。
確かに南紀や四国行くと、漁港の堤防の明るい水面にも生えてますね。
とは言え、潮通しが良ければ深場や暗い地形にも関係なく見られます。
ダイビングで洞窟も経験がありますが、真っ暗の中でもフサフサしてますよ。
ただ、光の届く有効層に分布するというのは正解だと思います。
プランクトン摂取のためです。
しかしこの事がむしろ、夜間のワラワラ活動にあわせて、暗い方がよりポリプを開くと言う生理に繋がると思います。
自然下での話ですがね。