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論考1:サンゴと褐虫藻の問題提起

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クリティカルシンキング(批判的思考/論理的思考)と題してシリーズでお送りします。
第一回目は序章としてサンゴと褐虫藻の問題提起です。
アクアに関わらない世間の方にも広く知って欲しい内容です。なるべく拡散希望です。。。

  1. 論考1:サンゴと褐虫藻の問題提起 - 2015/2/19
  2. 論考2:サンゴのアミノ酸取り込みの意味
  3. 論考3:サンゴのアミノ酸生合成
  4. 論考4:サンゴの蛍光タンパクとアミノ酸

サンゴのイジメ、ダメ。ゼッタイ。

昨年11月に開催された第17回サンゴ礁学会に参加してからと言うもの、サンゴ飼育に対する姿勢や考え方がより固まったと言うか、とにかく強い確信と使命感に駆り立てられるようになった今日この頃です。それほどこのイベントには大きな影響を受けました。
そしてそれは記事を書く姿勢にも大きく関わり、僕に限らず、ネット上で公開する情報には確かな検証データに基づく論理的な考察が如何に重要かを、今まで以上に意識するようになりました。迂闊な情報や根拠のない理論、ましてや感情論などで決して無責任にアクア業界の発展を妨げないよう、自分の能力の範囲で責任感を持って丁寧に慎重に努めていきたいと、烏滸がましいながらも決意も新たに気を引き締めているところです。

まず、今回のサンゴ礁学会で一番強く感じたことは、

サンゴの研究=褐虫藻の研究である

と思えるほどに、褐虫藻の研究が盛んだったと言うことです。数えてみたら、口頭発表とポスター発表のうち直接的なサンゴの研究が約50あり、そのうち20以上の研究に褐虫藻や白化が関わっていました。また、次世代シークエンサーによるDNA解析が取り入れられた研究も多く見られ、大変興味深く時代を感じました。

  • サンゴが如何に褐虫藻に依存した生き物であるか
  • サンゴが褐虫藻から何を得ているか
  • なぜ白化は起こるのか
  • なぜ白化すると斃死に繋がるのか

このように知れば知るほど、サンゴと褐虫藻は決して切り離せない密接な関係であることを思い知ることになります。一見当たり前のようで、しかし近年のマリンアクアリウムに於いてそれが当たり前ではなくなってしまっている現状に、強い違和感を覚えました。

元々僕は、以前から度々こぼしているように、人為的に褐虫藻を抜いてパステルを目指すZEOvitのようなシステムがあまり好きではありませんでした。特に明確な理由があった訳ではありませんが、なんとなく好みと言うか、ただ漠然とそう感じていたのかも知れません。あるいは、僕の色彩感覚的にそれを成功と呼べる水槽になかなかお目にかかれなかったことも要因の一つかも知れません。
でも、ヨッシー氏のZEOvit水槽は綺麗だったなぁ。。。畳まれたのは本当に残念でした。

ZEOvit ヨッシー水槽 1

ZEOでも褐虫藻量と波長次第で蛍光タンパクはギラギラできるんですよ♪

ZEOvit ヨッシー水槽 2

でも、そもそもZEOvitって難しいですよね。。。
今回、サンゴと褐虫藻の密接な関係を再認識して、余計にそう思いました。
また、サンゴ礁学会で研究員の方々と雑談した際に、褐虫藻の話の流れで人工白化の話をしてみたら、皆さん顔をしかめておられました(汗)

念のため、マリンアクアリストではない方のために、簡単な解説をどうぞ。

ZEOvitシステムによるサンゴ飼育の仕組み
ゼオライトや時には薬品を用い、サンゴから強制的に褐虫藻(共生藻)を排出させることで、サンゴから褐色が抜け、全体的に明るいパステル調の色彩が得られると言う飼育理論。しかし、サンゴは栄養のほとんどを褐虫藻の光合成産物に依存しているため、その不足分をすべて各種添加剤で補わなければならない。とは言え、それらがサンゴにどれだけ消費され、海水にどれだけの濃度で推移しているか大半は知る術も無く、また成分不明なモノやあまりに多い種類数に翻弄され、日々の水質管理は極めて困難を極めると言える。そのため、なかなか成功例にお目にかかれないのが現状。但し、褐虫藻を抜かない方向で運用される場合もあり、好みは分かれる。

実際に薬品を使って強制的に褐虫藻を抜いた例がこちらです。

ZEOvitの薬品(Spur2)を使って褐虫藻を抜いた例

* トミー氏の検証記事からお借りしました(了承済み)

これはZEOvitのSpur2と言う薬品に0.5~1時間程度薬浴させたものです。本来は水槽にごく少量を添加して運用するものですが、巷には直接薬浴させる裏技(汗)があるそうで、せっかちな人を中心に広まっている?ようです。。。うーむ。。。
ただ、やればやるほど褐虫藻は抜けるので、欲を掻いて引き際を誤ると数日後には斃死、なんてケースもネット上ではよく見受けられます(汗)

あぁ。。。
もっと早くに警鐘を鳴らすべきでした。。。
関係各方面でこぞってサンゴの調査研究に取り組まれ、サンゴの保護や移植放流活動の重要性・必然性が叫ばれる中で、、、

  • 褐虫藻を抜けば褐色がとれて色素だけの綺麗なパステル調の色彩が作れる?
    いくら綺麗にしたいとは言え、あまりに身勝手な人間のエゴの最たるモノでした。。。
  • ポリプがフサフサ伸びて綺麗? それって本当にサンゴの喜びの声ですか?
    褐虫藻から得るはずの栄養を絶たれ、まさにもがき苦しむ小さな手に見えませんか?
  • 褐虫藻を強奪され人工白化したサンゴはいつ転んでもおかしくない状態!
    添加剤だけで褐虫藻のすべての補填が叶うはずもなく、そのうちポリプも沈黙し。。。
  • これはただの生体実験・虐待行為では?
    動物愛護の観点から見れば、こんな悲しいペットへの仕打ちはあり得ませんよね。。。

本来サンゴを一番愛していなければならなかった我々が、まさかこんな飼育術に手を染めてしまっていたとは。。。一体これで今までどれだけのサンゴが死んでいったのだろう。。。

人工白化に対して今までどうにも釈然としなかった感覚、、、これが答えだったんだ。

でもこれはあくまでも僕目線での答えです。この考えを皆さんに押しつける気はありません。実際に褐虫藻を抜くにしても、恐らく軽い気持ちから、決して悪意はなかったはずですし。
それに、実際に何名かのZEOvitユーザーの方に聞いてみたところ、「添加剤は使うけどゼオライトや薬品で褐虫藻を抜いたりしない」と言う方もおられました。そのようなサンゴに優しい運用方法であれば大賛成です。僕も以前からオススメしてきました。
しかしそうでない方にとっては、この答えはとても批判的に映ったかも知れませんし、不愉快な気持ちにもさせたかも知れません。その点についてはお詫びします。

でも、せっかくの機会ですから、一度だけ、少し立ち止まってみませんか?
サンゴの色揚げって、サンゴの命を削ってまですることなんだろうか?と。
今回のシリーズは学術的にも最新の情報で構成していきますから、古い情報や間違った情報を上書きするチャンスです(笑)。その意味でも、どうか知識の糧に読み進めていただければ幸いです。
その上でまだ褐虫藻を抜く色揚げにご興味があるなら、その時はもうお引き止めしません。
ただ、将来的にサンゴの飼育が禁止されないことを願ってやみません。。。

次回は、サンゴのアミノ酸取り込みの意味について。

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