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前回までに様々なメタハラのスペクトル測定結果をご紹介しましたが、多くの球にはある程度のスペクトル特性の癖があり、特に青系の球は微妙な演色の調整により、色味こそ違えど含まれている波長は大差ない事が判りました。よって極論を言えば、色の好みで球を選んでも波長の心配は無用、と言えそうです。そしてそれが言わばメタハラのメリットだったのでしょう。
しかし、あいにく今回は赤外線問題が発覚したので、せめて、この夏の節電に向けた球選びに役立てていただければと思います。
さて。まだ続きます。
実はメタハラ以外にも色々と測定してきました。
あ、もちろんLEDも測りましたが、それはまた次回。
今日はT5蛍光灯の測定結果をお送りします。
T5と言えばZEOvit。ZEOvitと言えばT5。なんかそんなイメージがありますが。。。
えっと、何コレ? みんな兄弟ですね(笑)
前々から薄々判ってましたが、改めて蛍光灯って人間の目を満たすための光源なんだなぁと実感しました。人間の目って青と緑と赤を足せば白色光に見えますから、三波長型蛍光灯のように光の三原色が基本形になってる訳です。それ故、蛍光灯の原理として発光体の紫外線から励起される蛍光体のバリエーションも、450nmピークの青、540nmピークの緑、620nmピークの赤が主波長であり、本当の意味で波長目的のアクア向けランプの開発が行われない限り、400nmピークや500nmピークなどの特殊な蛍光灯は生み出されないと言う訳です。少なくとも今回測定対象となったアクア向け蛍光灯ランプ群の中には、そういったこだわりの製品は見受けられないように思いました。あくまでも一般向けランプの製造ラインを流用してのOEM製品の域を出ないものでしょう。その証拠に、巷の植物育成向け蛍光灯ランプでさえ、主波長構成はほとんど同じものです。2年以上前の古い記事ですが、それらの波長について触れた記事があるのでご参考ください。
雑学5.光合成色素の種類
ま、陸生植物のみをターゲットにしたなら、これらのスペクトルは各種光合成色素の吸収波長の要求とおよそシンクロした波長構成と言えるのですが、海水の場合は相手が光合成色素だけでは無く蛍光タンパクも備えた生物なので、特に400-500nmの波長強度は妥協する訳にはいきません。そのための専用設計の蛍光灯ランプがあれば良いのに、と思いました。
以下、今回測定した蛍光灯ランプの個別のスペクトル特性です。
演色を無視するなら、正直RGBの三波長がある程度カバーできてるタイプのいずれかひとつの球さえあれば、波長的にはそれ以上加算する意味はなさそうです。よって、こちらもまた、メタハラの時のように好みの色を作る事だけに注力して球を選択すれば良いのです。
今回たまたま蛍光灯ランプをブレンドした場合のスペクトルも測定したのでご紹介します。以下は、KZ社のSuperBlue 20000K、FijiPurple、NewGeneration 14000Kの3種の球をブレンドした例です。FijiPurpleはよく耳にするので人気がありそうですね。
メンタル面でも満足度の高いブレンドだろう(汗)と思われますが、実は波長構成は大して変わらないことが判ります。変わったのはこれらの波長の比率による演色(目に見える色味)だけです。まあ、緑が強くなったり、赤が強くなることでの生体の反応の変化は勿論期待できますが、ユーザー意識としての「色んな球を足せば波長が補完しあって満遍なくスペクトルが形成されそう♪」と言う甘い期待は見事に裏切ってくれています(汗)
では、400nmや500nmを強化するにはどうしたら良いのか?
うーん。。。それに特化した製品が出ない限り、蛍光灯のみでは難しいと思われます。
- 紫外線(400nm以下の本当のUV)や赤外線を無駄に含まない光源。。。
- そして水温を上げたり無駄にクーラーをガンガン稼働させない光源。。。
- 波長を満遍なく均一に再現できる光源。。。
- 無駄に拡散せず水槽だけを効率よく照らせる光源。。。
- ランニングコストの低減、設置スペース、調光などの機能面。。。
なんだ!
えるいーでぃがあるじゃんっ♪
一旦CMです。
ここまでの放送は、こっそりアップしたのに嗅ぎつけられて困る応援市場の提供でお送りしました。特にフルスペ12インチは時間の問題です。。。
1. TAKA 2012/04/30 04:47
お〜T5の測定お疲れ様です。特にFiji Purpleは公式に波長が公表されていないのでためになりますね。
僕はこの結果から、波長がすべて相対的にカバーされていなくても問題なく綺麗にSPSを含めてサンゴを飼育できる(人間への見た目、及びサンゴの成長度など)というふうにとりました。ご存知のようにT5蛍光灯は欧米でかなりのユーザーがいます。しかも、MA誌や私のブログで紹介したT5のBiopellets水槽(http://www.taka-tech.net/2011/02/biopellets_10.html)を見て頂ければ、T5での実績がわかるかと思います。400nmや500nmなどがあれば良いのかも知れませんが、なくても綺麗にサンゴを維持できるのではないでしょうか?
少し前からSCのマリンブルーを使用しています。どのサンゴも綺麗に見えるのかなと考えていましたが、そうではなかったです。当たり前かと言えばそなのかもしれませんが、少し意外でした。
後、白、青、Royal BlueのLEDだけでサンゴを維持できるか調べていたのですが、ネットと実際の店舗でそのようなサンゴ水槽を見ましたが、かなり綺麗にSPSを維持されていました。コロラドで有名な店でメタハラとLED(白、青、Royal Blue)の比較実験をした話を聞きましたが、同じように飼育できると仰っていました。
あと、SCを使用している人でもマリンブルーだけで飼育されているいうよりは、それをメインにアクアブルーやCIEROなどと組み合わせて使用している人が多いと感じます。他の球を使用した時点であのマリンブルーの波長の構成は相対的には崩れてしまうと感じますが、どうなんでしょうかね?
2. エイジ 2012/05/01 02:55
TAKAさんT5でしたっけ?
多分ガッカリさせたでしょうね。すみません。
でも恨むなら製造元を(汗)
> 400nmや500nmなどがあれば良いのかも知れませんが、なくても綺麗にサンゴを維持
その波長を必要とするサンゴにとっては「良いかも」ではなくて「良い」んですよ。なので、もし「なくても」綺麗に維持できるなら、「あれば」もっと綺麗が期待できると言えます。井の中のなんちゃらにならないような視野を持ってください。
> どのサンゴも綺麗に見えるのかなと考えていましたが、そうではなかったです。
確かにマリンブルーはスペクトルの中域がある程度大きいので、単純に蛍光が映える青系ランプに比べ、照らしたその場では「綺麗に見えない」と表現できるでしょう。しかしマリンブルーは上記のT5の測定結果にはない大盛りの400nm前後のスペクトルを持つので、長期的に見てバイオレットやブルーの蛍光(それを持つサンゴなら)が育まれ「綺麗になる」ことが期待されます。その場限りの演色では無く、本当の意味での色の維持に目を向けましょう。
> 後、白、青、Royal BlueのLEDだけでサンゴを維持できる
上と同じで、400nmや500nmがあればもっと綺麗に色素が育めるでしょう。ただ、その実験結果は400nmや500nmの有効性を否定できる内容では無いですよ。はき違えないよう注意してください。
それに、白+青だけでも、スペクトル次第(白の黄色蛍光量)では、かなり多くのサンゴを維持できますし、その効果は既知の範囲です。かれこれKR92の時代からもそうですし。
> アクアブルーやCIEROなどと組み合わせて使用している
それは短波長域の補強の意味にもなりますが、多くは見た目の演色性(蛍光)のために、アクアリストは青系の球を追加します。あるいはそれはより深い水深スペクトルの再現が目的かも知れません。それらはフルスペのチャンネル概念にも通じます。いずれにしても基礎となるフルスペクトルがあってこそ許容される操作です。
TAKAさん、僕は別にSCマリンブルーだけが唯一の完璧スペクトルとは言ってませんよ。
いずれにしても「無くても飼える」と言うのは人間のエゴに過ぎず、栽培の概念です。
僕はサンゴや生体に太陽を提供したいと考えているのです。
ま、本当に不要な波長部分については無くても良いと思いますが、僕は過去の実験結果から400nmも500nmも必須だと確信していますので、波長の欠如を正当化する暇があるなら波長をカバーする努力をした方が建設的だし、そうしないなら製品としての未来は無いと考えています。ただ、これは僕の考えに過ぎないし、間違ってたかどうかの結果は製品が出してくれるし、僕はその結果を事実として公表しているだけです。製品選びにはスペックの開示が必須だと思いますからね。だからそれを見た上で何を選ぶのもユーザーの自由です。
多分、TAKAさんも一度フルスペを使えば、考えも意見も変わるでしょう♪