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懲りずに書いてみたりする結果オーライな日記

太陽光LED:理想と現実

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そもそもの誤り。

これまで、造礁サンゴの飼育といえばメタハラであり、その恩恵はもはや疑う余地の無い確立された存在でした。そしてその一番の理由は、なんと言っても太陽光の代替として申し分ないスペクトル分布に他なりません。太陽を浴びて生活する生き物に太陽を与えるのは至極当然の模範解答であり、効果を見てもそこに克服しがたい問題点などおよそ見当たりません。そして時代は進み、比較的ハイパワーのLEDが登場したことで、ブルー光などの補色も手軽におこなえるようになりました。そう、あくまでもメタハラの補助に使う分には、LEDは非常に有用なアイテムだったのです。

しかし、ここ最近、状況は変わりつつあります。遂にLEDがメタハラに取って代わり、メイン照明としての地位を築き始めました。特に昨年からのLEDの進化には目を見張るものがあり、驚くほど目覚めしい進化を遂げました。アクア業界でも各社から次々とLED照明がリリースされ、既に多くのアクアリストもその可能性に挑戦し、効果を吟味し、結果も出してきました。

ところが一方で、思うように結果が出せないケースも多く、アクア照明としてのLEDに疑問の声がいくつも挙げられるようになりました。中にはメタハラに戻るユーザーも見受けられます。しかしそんな声をよそに、各社からは何事も無かったかのように黙々と製品が投入されてきます。疑問に応えるアナウンスも、成功のためのノウハウの提供もありません。この温度差はなんなのでしょうか?

まず、落ち着いて冷静に分析を進めてみます。すると、あることに気づきます。
どのLED製品も、メタハラに代わる効果を裏付けたスペックがまるで提示されていないのです。照度こそ今は公開が定着しましたが、なんと肝心なスペクトルの情報が一切公開されていません。ごく一部のメーカーでは公開されているものの、果たしてそれで光合成の要求が満たされてているのかどうか何も触れられていません。それどころか、開発の段階で本当に波長を考慮しているのかどうかすら怪しいのが現状です。そもそも光合成のための製品なのに、光合成の波長が精査されていないなんて。。。

まさか、ただ素子を混ぜてるだけなのか!?

日亜とCreeの白LEDのスペクトル

LED製品の白色光を構成しているのは白色LEDで、およそ上図のような特性です。メーカーや型番によって若干の違いはあっても、青チップと黄色蛍光体で擬似白色を作っている点では同じです。
ここへ青LEDを混ぜて色温度を高めたり、一部の製品では赤LEDを入れている場合もありますが、ちょっと考えてみれば、それをどんなに組み立てたところで、それが太陽光にはほど遠いスペクトルであることは容易に見当が付きます。

そう。あくまでも人間の目で見た光色のみで構成を決定しているのが明らかであり、光合成から見た要求波長を追求した形跡がまるで感じられません。なんてこった。。。それがアクアLEDの現状なのか。。。

いやぁ、前振りの長いこと(曝)
随所のチクチクは大目に見てください(汗)

と言う訳で、僕はちゃんと当初から真剣に取り組んできましたよ。
夜も寝ないで昼寝して。
そしてようやく形が見えてきました♪

オリジナルブレンド4号機のスペクトル

自信を持って公開します。これがオリジナルブレンドの4号機のスペクトルです!
シアンの下限を相対値で50%をキープ♪
アンバーも妥協無しで相対値60%オーバー♪
嘘はありません!(素子の公称スペクトルに嘘が無いことが前提ですが)
今回はベース照明としての白色を極めることを目的としたので、敢えてUVは除外しました。青やUVの補強はあくまでも補助ランプでおこなおうと言うスタイルです。そう、作るべきは、まさに白色のメタハラ♪

そしてもうひとつ、メイン照明にも新たに新LED素子を使ったデモ機を迎えましたが、実はスペクトル自体がまだ製造元から公開されていないため、詳細はもう少しあとになりますのでご了承ください。
とりあえずこちらで観測した分光器によるスペクトルのみ公開しておきます。

既製のアクアLEDと自作LEDのスペクトル比較

比較のための太陽光、日亜とCreeの白LED、そして今回のオリジナルブレンド4号機と新LEDデモ機のスペクトルと演色です。

日亜・Cree共にシアンは大きく欠落し、演色を見ても黄色と黄緑の区別がつかず、シアンも赤もドス黒いのが判ります。これが現状のLED照明もれなく全ての特性です、残念ながら。これでメタハラの代わりをさせようと言うのはあまりに無謀ですよね。

一方、今回の僕の新作は、共に青から赤までのおよそフラットなスペクトル分布を実現しました。太陽光には負けますが、まずは叩き台としては満足のスペックです。特にオリジナルブレンドは高い色温度にも関わらず鮮やかな赤が発色できるのがミソですかね。もちろん、シアンも超鮮やか♪

だけど、これはあくまでも公開用のものです。
実はまだ本命の隠し玉があったりして♪

おっと、いけねぇ。今はここまでだぜ。

さて。ちょっと休憩ネタを。
下の画像は、分光器で見た肉眼での見え方と、いざ撮影した場合の比較です。

肉眼で見た分光スペクトルと撮影したスペクトルの違い

シアンも黄色もデジカメには写らなくていつも難議してます。
これまでの画像でも、緑と赤の境界には黄色があると思ってもらって差し支えありません。画像では欠落した谷のようにも見えますが、ちゃんと連続したスペクトルになってます。
また、シアンは多少は写るので、太陽光のスペクトル画像だと青と緑をうっすらと繋いでいる程度には認識できます。しかしそれが感じられないものは、やや谷になっていると捉えてもらえばOKです。
ちなみに、日亜やCreeのような一般の白LEDともなると、完全に青と緑が分断して黒いスペースが発生します。これがシアンの欠落です。そしてこれを補完するのは並大抵ではありません。。。

上記のオリジナルブレンド4号機の方は、LeDio 7をベースに素子の換装で製作可能です。もしご希望の方がいましたらメールください。ある程度のご要望がまとまれば、製作代行を承ります。但し、素子の調達に時間が掛かったり、素子が欠品になる場合もあるので予めご了承を。
ご希望・予約はこちらまで→ info@1023world.net

2010/11/10 14:00 追記
オリジナルブレンドのベースランプは、LeDio 7やLeDio 21あたりが可能で、お手持ちのものをお送りいただく形でも、こちらで新品を用意しての改造でもOKです(もちろんメーカー保証は無くなります)。また、それ以外のものでも可能な場合がありますので、必要であれば事前に前面カバーを外して、素子面の写真をお送りください。該当製品のメーカー名と型番もお願いします。それによって可能かどうか判定させていただきます。

2010/11/11 13:00追記
若干青っぽくとか、好みに応じて多少の色味の調整も可能ですが、僕的には基本光源として波長全域をカバーしたホンモノの白を強くお勧めします。その上で好みの補助ランプで色を補正すると良いでしょう。要するにメタハラと同じ使い方です。UVも含みませんので、レディオの400UV等で補完すると良いでしょう。

携帯からご依頼の方は、こちらからの返信に備えて、1023world.netドメインを受信可に設定しておいてください。メールがエラーで返ってきてしまいます(汗)

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LEDの問題点と現状での解決策、でもまだ問題が…

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昨日の投稿で「次回へ」と手抜きしたので、とりあえず続きです。

まずは、お約束のいつものグラフ。主な海洋性光合成色素の吸収スペクトルです。
要するに各色素がこの感度で光(波長)を利用していると言うことです。

海洋性光合成色素の吸収スペクトル

で、次に現在アクア向けに流通しているLED照明(システムもスポットも含め、もれなく全ての製品)で採用されている素子の種類と、その組み合わせ例です。実際のスペクトルデータは人気のCree社のものを用いました。

既製のLED製品の素子の組み合わせ

ちょっと判り辛いけど、白LEDの光源の青ピークとロイヤルブルーのピークが同一の帯域なので、スペクトル曲線が重なっていて見辛いですが、ご了承ください。

ご覧の通り、白LEDの特性は、光源の青と、それに励起された黄色蛍光体の発光スペクトルが合成された、2つの山で構成されています。これが一般的な青チップ+YAG蛍光体による白LEDの特性です。日亜特許の真骨頂です(笑)。
そして現在、アクア製品で採用されている白LEDの全てがこれに該当します。見ての通り、500nm前後のシアン領域と、650nm前後の赤領域の波長強度が極端に弱いことが判りますね。そしてもう一度最初の光合成色素の吸収スペクトル図を見ていただきたいのですが、シアンはカロテノイド系色素や一部のフィコビリンが利用していますし、赤はクロロフィルは勿論のこと、一部のフィコビリンも利用しています。そう、この白LEDの特性では、その比較的重要な帯域が欠落しているのです。

そして更にマリンアクアリウムでは、色温度を高くするために、白LEDに対して青系の素子をブレンドしているケースがほとんどです。パターンとしては、460~470nmの通称ブルーの素子を混合したり、あるいはより濃い450nmのロイヤルブルーを混合したりと、メーカーや製品によってまちまちです。

ただ、ここにもひとつの問題が見られます。
上の図の通り、どうせ混合するなら、やはり少しでも帯域を広くカバーするために、ロイヤルブルーではなく普通のブルーを混ぜるべきでしょう。それだけでも500nmのシアン帯域は若干の引き上げが得られますから。但し、白無しのブルーランプとするなら、ブルーとロイヤルブルーの混合は大変有意義だと思います。

さて、昨日も書きましたが、照度の確保によって何故うまくいき易くなるのか、判りやすく図で表すと、こんな感じです。

照度確保による成功例の種明かし

ただ、赤字の通り、どうしても副作用的な挙動が付きまとうのは避けられません。不足分の引き上げに伴って、どうしても青や黄色が強くなりすぎるのです。
そして、グラフの背景のグラデーションが太陽光のスペクトルなのですが、本来こうあるべきスペクトルに対して、このようなLEDのスペクトルなのですから、不具合があって当然なのかも知れません。

ちなみに赤はなんとかなります。あくまでも白LEDはそのまま増やさずに、代わりに電球色を追加することで、相対的に赤みが増し、良い具合に赤が補完されます。
しかし、シアンはどうにもなりません。現状、シアンを補完する方法は提供されていないのがほとんどです。確かmax-sのオプションではシアンLEDがラインナップされていた気がしますが、実際には売ってるのを見たことがありません。
また、これは僕の経験ですが、シアンの素子を試してみて、まともにシアンであった試しがありません(曝)。ランクの問題だと思いますが、どう見ても緑な場合が多いのです。確かにシアンの範囲は490~520nmあたりとされているようですが、520nmと言えば立派な緑です。もしかしたら、シアンの505nmって作るの難しいのかしら?
そのため、よほどしっかりとランクを管理して販売しないと、クレームの元になりそうです。最近の各社のラインナップにシアンがなくなってきたのはそのせいか?(単に需要の問題かも知れんが)

と言う訳で、LEDの現状での解決策の答え合わせは以上です。
ま、ほとんどは僕が勝手に言ってるだけなので、間違いがあったらご指摘ください。

次回、白LEDの根本的な波長問題の解決策として新たに開始したLED実験第3弾のスペックについて触れていきたいと思います。

追伸:
今気づいたけど、太陽光スペクトルのグラデーションの色がだいぶずれてますね(汗)
次の機会に描き直します。。。

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太陽光LED:序曲…

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ごぶさしぶりです。
ネタ出す暇がありません(汗)

LEDのアンケート、たくさんのポチッありがとございます!
使用状況は「メタハラ+LED」がダントツ。
効果は「生体によって何らかの挙動の違いが見られる」がダントツ。
要望は「安くして欲しい」がダントツでした(汗)

この結果から察するに、ほとんどの方がまだLEDは半信半疑であり、また実際に生体の不調を体験している方も多いことが判りました。さらに価格の問題から尚のこと選択に至らないという面もあるようです。確かにまだまだ高いよねぇ。。。
一方で、LEDでも順調に飼育されている方も多く見られました。思ったより多かった(汗)
では、その違いは一体どこにあるのでしょう?

取り急ぎ今日はその辺だけサクッと答え合せしてみましょう。

いくつかの中で一番の大きな要因。それはやはり照度(光量)にあると言えます。
以前から口を酸っぱくして反芻してますが、少しでも照度の高い製品を、それが無理なら可能な限り数多く取り入れること。これが成功への近道です。

あれ?
波長の話は?

もちろん大いに関係あります。
例えば一般のLED製品(残念ながら既製品もれなく全て)では、白LED(青+YAG蛍光体)の性質上、シアン(500nm)とアンバー以降(580nm~)が極端に欠けています(これについては次回)。とは言っても波長強度はゼロでは無いので、照度を高く、あるいは数を打つことで、これらの欠落した波長強度の下限が引き上げられ、光合成に必要な波長強度が辛うじて確保されるのです。もちろん、単に照度を確保する意味にもなります。簡単に言えば、難しく考えないで、とにかくジャンジャン多灯すれば、比較的上手くいきやすいと言うことです。ただ、サンゴの種が多様なほど難しくなっていくので、その辺は成功者の努力と苦労の賜物でしょう。

今、LEDで成功している方の多くは、きっとこう言った部分を理解され、大型照明や多灯方式に行き着いたのだろうと思います。違ったらすみません(汗)
でも実際僕の場合でも、スポット数本だけで運用していた時期はなかなか思うようにいきませんでしたが、大型のLEDシステム照明をベースに照度を確保し、残りをスポットで波長補完するように変更したら、あっけなく上手くいくようになりました。

また、高いメーカー品が良いのか、安価な製品でもいけるのか、ここが一番の悩みのタネだと思われますが、現段階では考え方次第で僕はどっちもありだと思います。品質や安心をとるか、価格や量をとるか。仮に一年しか持たなくても諦めの付く価格とも言えますし、その頃にはもっと良い物が出てるだろうし、と考えれば、メーカー品が絶対とも言い切れません。って、僕がこんなこと言って良いのかしら(汗)。ま、フォローとしては、例えば某一体型レンズの配光やブレンドを一度味わったら、旧レンズには戻れないと思います。サンゴを満遍なく照らすか、斑な光強度でストレスを与えるか。ま、これも近づけすぎないで距離を離してその分多灯すればおよそ解決が得られるでしょう。その意味でも多灯は有意義です。ある程度のチカチカは付きまとうかも知れませんが。。。

ただ、この方法にも欠点はあって、照度確保により欠落波長はギリギリ稼げても、その分他の帯域の波長強度が極端に大きくなるため、その部分による光障害・生理不順は起こり得るという事です。これが、多くの方が感じている「生体によって異なる挙動」だと思われます。まだ僕もハッキリとは結論が出せてませんが、例えば肌荒れ、形状異常、色素抜け、成長鈍化あたりは体感的に感じていて、これを改善するには、やはり根本的に波長の問題をクリアしなければ次に進まないだろうと考えています。

で、ご存知の通り(?)、そのための試行錯誤を裏でコソコソとシコシコと進めていた訳ですが、これがなかなか一筋縄ではいかない。。。あまりに途方に暮れるので、まだ期は熟していないのかも?、と嘆いてみたり・・・(汗)

まあ、それでも着実に一歩ずつ前には進んでいます。
ここに至るまでかなり散財しました(曝)が、まあおよその目星は付いてきたので、とりあえず先日からLED実験の第三期に移行しました。

第三期LED実験の仕様

第二期から使用していたボルクスのデモ機を終了し、新たにメインにニューフェイスを採用しました。写真は暗く写してありますが、実際は目が潰れます(笑)。でもまだ全容を明かせないのでモザイクでごめんなさい。多分、まだ国内でも誰も使っていない代物です。あるいは海外でも初かも?
ちなみにこれは製品では無く、素子やヒートシンク、リフレクタ、ドライバを取り寄せて組み合わせたデモ機ですが、なんとこれ単素子で補助ランプの必要なく波長全域をフラットに出力します。スペックについては次回また紹介します。

その他、左のオリジナルブレンドもこの度めでたく4号機に昇進してます。こちらも波長全域フラット出力版に進化しました♪
こちらは例の如くレディオ7の素子換装でいけるのですが、素子の調達にやや難ありで。。。ま、素子の問題さえクリアできれば、希望者には有償で作ってあげられると思います。まあ、暇があればだけど(汗)。もし準備が出来たらまたご案内しますね。

あ、そうそう。
写真にも写ってますが、エダコモン各種も入荷したんですよっ♪
ホワイト♪ オレンジ♪ パープルっ♪
これもまた次回に!

取り急ぎ、近況報告でした。
さ、寝ます。

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