今回は、前回ご紹介した、
脅威のUV出力1000mWオーバーを誇るナイトライド370nm搭載3WスポットLED
の誕生秘話に迫ります!
ナイトライド370nm 1000mWスポットLED 誕生ヒストリー
驚異の1000mWオーバーを誇る、ナイトライド NS365L-3SVR 365nm LED!
果たしてこれをどう使う?
注) NS365L-3SVRはメーカーサンプル供給が終了したため、
現在は同等製品のNS365-3SVG(660mW@500mA)か、
または上位モデルのNS365L-3SLG(1150mW@1000mA)となります。
いずれも石英ガラスレンズ採用の長寿命仕様です(但し出力は樹脂の15-20%ダウン)
当時の記事も参考にどうぞ。
このUV LEDを搭載させる筐体として真っ先に思い浮かんだのは、例のコレ↓
そう、過去にもシアンスポットやバイオレットスポットでお馴染みの3Wスポットです。
しかし、シアンやバイオレットなど可視光線で使う分には何の問題もなかったんですが、これを紫外線相手に使おうとすると、色々と問題が生じます。
まず第一の懸念はアクリルのUV透過率です。
前回のIllumagicの記事でも触れましたが、ガラスと違ってアクリルはUVを通しません!
そう、この3Wスポットの純正レンズはアクリル製なんです。。。
これは、前回のIllumagicの記事で紹介したガラスとアクリルの実測透過率です。
アクリルでは390nm以下の紫外線がゴッソリ減衰しているのが判ると思います。
ここに、今回の目的の370nmのスペクトルを当てはめてみると、、、
・・・全部もってかれるやん!爆
実際に、ガラス1mmとアクリル1mmを挟んで370nmのスペクトル強度を測定すると、
違いは歴然。。。汗
こりゃ、ガラスかシリコンのレンズ見つけるしかないな。。。
さて、これだけのUVエネルギーがロスしたと言う事は、そのUVは一体どこに消えたのか?
はい。実に90%以上ものUVエネルギーがアクリルに吸収・消費されたということです!
そりゃ~アクリルも焦げる訳だ。。。
それが第二の懸念、アクリルのUV劣化です。
と言う訳で、色々と調達した素材がこちら。
左から、
- 元々の3Wスポットの純正アクリルレンズ
- シアンスポットやバイオレットスポットで使用したアクリルプリズムレンズ
- 今回ようやく見つけたガラスレンズ
- 今回ようやく見つけたメタルリフレクター
まずは、これらの370nm減衰量を調べてみます。
測定にはオーシャンオプティクスの積分球FOIS-1を使用します。
形状の問題で全光線は取り込めませんが、各素材とも同条件での強度比較となります。
すると、、、意外な事実が判明!?
3Wスポットの純正アクリルレンズが、一般的なアクリルより遙かに透過率高いやん!?
まさか、この3Wスポットに紫外線透過型アクリルレンズが使われていたとわ!?
紫外線を透過するアクリルは、例えばアクリペットで言うとVH000みたいな奴です。
この図の青線がUVを通すVH000、赤線がUVを通さない一般のアクリルVH001です。
そうか。集光で使う場合なら3Wスポットのレンズこのまま使えるな。良いこと知った(笑)
続いて、リフレクター+各レンズでどんなビームになるか見てみましょう。
元の370nm+リフレクターのみだとこんな感じです。
そこへ各レンズを載せたモノはこちらです。
うーん。。。
左は3Wスポットの純正アクリルレンズですが、UV透過型とは言え、レンズでの激しい吸収(笑)が見られますね。この分がロスと言うことです。てことは、さっきのスペクトル強度は集光レンズによって光が多めに積分球に入ってた可能性も疑われます(汗)
中央のアクリルプリズムレンズは、吸収すら見られないので、まともにレンズに入射すらしてない感じ?苦笑(裏面がポコポコしたプリズム形状なので)
右のガラスレンズは、吸収もなく全光線が前方に照射されています♪ さすがです!
注:写真に写ってる光はあくまで可視域に近い波長部分のみ(+周囲の蛍光反応)であり、見えていないUVA域すべての強度を目視で計り知ることは出来ません。念のため。
次に、実際に3Wスポットにレンズとリフレクターを組み込んでUV照度を比較します。
まずはリフレクター無しのレンズのみ。
ちなみにビーム角の計算はこんな感じ。
続いて、各レンズ+リフレクターあり。
やはりリフレクターを入れると、ハウジング内でくすぶってた分も全て取り出すことができるようになり、ものによってはUV照度が2倍にまで引き上げることができました。アクリルプリズムは論外として(汗)、ガラス45°レンズのように、比較的ビーム角の広いレンズほどその差は顕著になるようです。一方アクリル30°の方は、そもそも狭角すぎてリフレクターの恩恵をほとんど受けないようです。それはレンズ面の写真を見れば理解できますが、ケントデリカット現象(笑)によって、リフレクターの反射面が見えない=前方への光量に影響しない、ということのようです。
上記のUV照度をスペクトル強度で表すと以下のようになります。
これは、元々の純正アクリルレンズを100%として、増減の変化を示してたグラフです。
やはりガラスレンズ+リフレクターのUV照度増加率が著しいです!
一方、純正アクリルレンズとアクリルプリズムレンズは、リフレクター効果がほとんど現れていませんね。
ちなみにこれらはあくまでUV照度であり、光源が持つUV量を示したモノではありません。
UV照度とは、特定の面をどれだけ強いUV放射量で照らすかの度合いであり、すべてはビーム角が作り出すトリックです。小さなUV量でもビームを鋭く絞れば面は強く照らされ、逆に大きなUV量でも広いビーム角で照らせば面は弱く照らされます。
そこを誤解しないように、一応積分球でもUV量を直接測定してみましょう。
それぞれリフレクターのありなしでUV量の増加率を計算してみました。
UV照度の測定結果と違って、やはりスポットから発せられるUV量自体は、純正アクリルレンズよりもガラスレンズが上回っていることが読み取れますね。
やっぱり、ガラスレンズは良いことずくめ! 45°とリフレクターの相性もバッチリ♪
ただ、純正アクリルレンズもロスが少なくて使い物にはなるので、検査用の20°ビーム品としてなら価値がありそうです。
ちなみに当初は、プリズムレンズ+365nmで試作品を作って蛍光チェック用や蛍光促進用に試してましたが、今思えばまともなテストになってませんでしたね(汗)
だって、このスペクトル強度でガラスレンズと比較したら、積分値で5.5倍差ですぜ?笑
しかもガラスレンズ+リフレクターと比較したら、積分値で16.6倍差ですぜ?爆
UV照度で比較するとリフレクター無しで8.9倍差、リフレクターありで17.6倍差(曝)
あ…あ…あ… 曝
ね? 測定器によるデータの検証って、メッチャ大事でしょ?
“LEDコンシェルジュ・エイジは、
LEDで明るい未来をアクアリウムにお届けします♪”
~完~
※注意事項
各スペクトルグラフの縦軸の数字に単位のないものは、
1) 最大値が1(1.1)のもの:相対グラフ
2) その他1000~10000のもの:スペクトロメーターのカウンタ量
であり、視覚的な相対比較を目的としており、光学量を示したモノではありません
あ、コンシェルジュと言えば、今晩22時のホテルコンシェルジュをお見逃しなくぅ~笑
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