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T5レビュー:ATI

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♪予告通りに~別~れの日は~僕らの上にやってき~て~

BAKUFU-SLUMP/それから [JAZRAC (笑) 1022-1024号]

前回のGIESEMANN Power Chromeに続き、予告通りATI T5をお送りします。
実は、昨年の11月には既に調査を終え、結果は一部の有識者にのみお伝えしていた分でしたが、とりあえずATI SunPower灯具での計測データは前回「データのみ」と言う条件で既に公開を終えました。一般公開が遅くなってすみませんです。
で、今回は純粋にATI T5ランプの実測データをお届けしたいと思います。
それなら幾分かマイルドにお送りできるでしょう。

用意したのはATIの定番の3タイプ。でも赤入りは興味が無いので辞退(汗)

ATI T5ランプ

  • ATI Aquablue Special
  • ATI Blue Plus
  • ATI Actinic

ATI T5ランプ 蛍光管

光色はこんな感じ。

ATI T5ランプ 光色

個別のスペクトルを実測。

ATI T5ランプ MK350による実測スペクトルとCIE1931色度座標

AquaBlue SpecialはATIで唯一の白系ランプですが、これ自体すでに十分青いので、色温度は計測不能でした。恐らくx,y座標から見ておよそ50000Kですが、GIESEMANN Power Chrome AquaBlue+よりは若干青寄りです。

さらに突っ込んで、実測値とメーカー公称値を比較してみます。

ATI T5ランプ 実測スペクトルと公称スペクトルの比較

ATIの公称スペクトルは実測データを元にデフォルメしたグラフのようですが、概ね実測値と一致しました。さすがです。

気になるのはやはりActinicのUV側出力ですが、球単体では相対値で約3割の400nmが確保できてるので、まあ標準的なActinic球と言えるでしょう。T5ではUV系スペクトルを補完できる唯一の球なので、大変重宝しますね。
ちなみに「Actinic」と言うのは化学線や紫外線の意味で、T5では420nmにピークを持つ球の呼称として一般的に用いられているようです。LEDではあまり聞きませんけど。

で、お約束の実用的な構成ATI版です。

  • 系統 1 (白ch): Aquablue Special ×2
  • 系統 2 (青ch): Blue Plus + Actinic

ATI T5ランプ 実用的な構成による測定結果

Power Chromeの時より、ちょい青くなりました。もう50000Kじゃ効かんかな。

やはりActinic×1灯じゃ400nmの強度はPower Chromeと同様2割が限界ですね。

その他、光量については前回のPower Chromeレビューをご覧ください。
高いだけあって、ATIの方がPowerChromeより2割ほど明るい結果となってます。

さて、今回はオマケとして、Power ChromeとATIのそっくりさんをまとめておきます。
まあ、要するに蛍光体構成と強度が同じものです。光量、寿命は異なるでしょうが。

ATIとPowerChromeの近似スペクトルランプ

ここまで同じスペクトルだと、使い分ける楽しみがありませんね(汗)
なぜ、こんなことになるのか!?

それは、使用できる一般的な蛍光体材料の種類が決まってしまっていて、それらを流用してブレンドの比率を変え、見た目の色味を調整しているだけだからです。

そう、いろんな球を混ぜて波長リッチにしよう♪と言う期待は、儚い夢で終わるのです。
どの球をどう混ぜても、見た目の色が変わるだけで、波長構成はまったく同じまま。。。
だから波長は欠落したままで、一向に補完されません。そんな殺生な。。。
でも、それがT5の現実です。

しかも写真が上手く撮れません。だって発色に必要な波長があちこち欠けてるもん。。。
だからデジカメはなるべくWBオートの優秀な最新の機種をご用意ください。
とは言え、一般蛍光灯とは波長ピークのバランス構成が大きく異なるので、デジカメに任せるより現物合わせでプリセット補正した方が早いかも。デジカメの解析能次第ですが。

とにかく夢を壊してごめんなさい。苦情はメーカーへお願いします(汗)

↓判りやすく言うとこゆこと。

ATI 蛍光体のピーク

みんな同じ蛍光体で構成してるってこと。強度バランスを変えてるだけ。
Actinicは他とは違って420nmの蛍光体を持ちますが、他の細かな部分は同じです。

現状のT5の波長不足を解消するには、メーカーが積極的に流用ではない独自蛍光体の開発に着手し、波長が欠落している帯域に新たな蛍光体を補完していくしかありません。そうしなければ、いつまで経っても、何をどれだけ混ぜようとも、UVや他の欠落を埋めることは不可能です。ただ・・・現実問題としては、何年待っても無理でしょうね。コスト的に。
そこに現れた救世主がZEOvitです。問題の解決は無理としても、T5でパステルを楽しむと言う道を開きました。それもひとつの解決の形だと思います。とても建設的です。

ただ、T5にできるなら、メタハラやLEDの方が色彩豊かなパステルが可能かな?と(汗)
あ、やるなら光量を落とすか、添加量を制限してくださいね。抜けすぎます。

一方、T5の波長不足の解消の必要性に気付いてしまった方、パステルよりも本来の色の再現性・色揚げを尊重される方は、、、どうしましょ?
もちろん、いつでも相談に乗りますので、お気軽にメールをどうぞ♪

とりあえず、T5ネタはやんわり解禁ということで・・・汗

こちらのエントリーもどうぞ♪

T5レビュー:GIESEMANN PowerChrome

この記事を含むタグの全記事リスト: T5 スペクトル 蛍光灯

ふとした経緯で、ギーゼマンパワークロムと言うT5ランプを試すことにしました。
検索したら、たまたま見つけた即日発送と言う売り文句に惹かれ即注文♪
ブルーミングアクアさんです。
基本的に在庫販売なので、15時までの注文分は大抵即日発送できるそうです。
よくある受注後に取り寄せと違って、急ぎの時なんかはありがたいですね。
ま、別に急いでなかったけど、待たずに済むならそれに越したことは無いですし。

今回は気になる5タイプを購入。ピンク系とか赤の入ったモノは辞退しました(汗)

GIESEMANN PowerChrome

  • GIESEMANN PowerChrome - Midday
  • GIESEMANN PowerChrome - AquaBlue+
  • GIESEMANN PowerChrome - LagoonBlue
  • GIESEMANN PowerChrome - Actinic+
  • GIESEMANN PowerChrome - PureActinic

GIESEMANN PowerChrome 球

光色はこんな感じ。

GIESEMANN PowerChrome 光色

個別にスペクトルを測定してみました。

GIESEMANN PowerChrome 各ランプ実測スペクトル

最後のPure Actinic、、、残念でした(苦笑)
まあ、そうだろうねぇ。。。

では、さらに突っ込んで、実測値とメーカー公称値を比較してみます。

GIESEMANN PowerChrome 各ランプの実測スペクトルと公称スペクトルの差異

1番目のMiddayは、公称値はなかなかフラットな理想的なスペクトルでしたが、実測値は普通に緑の前後が沈んでますね。まあ、むしろその方が妥当な曲線です。

2番目のAquaBlue+は、ATIで言うところのAquablue Specialです。ほぼ一致。

3番目のLagoonBlueは、AquaBlue+とActinicを足したような感じ。意図的に混ぜて作り出すくらいなら、これ一本で済むので意外と重宝するかも?

4番目のActinicは紛らわしい名前だけど、ATIで言うところのBlue Plusです。まさに。なんでこの名前にしたんだろう?

5番目のPureActinic、これこそATIで言うところのActinicそのものです。残念ながら公称スペクトルのUV大盛りは何かの手違いだったようです(笑)
ま、やっぱり所詮こゆのは一般向け製品の流用品なので、アクア専用に開発された蛍光体を使ったT5なんて存在しないのでしょう。あっちもこっちもみんなみんな兄弟です。
次回、ATIの同様のレビューを出しますので、その際に比較してみてください。

とりあえず、スペクトルだけ見れば、

  • PowerChrome AquaBlue+ ≒ ATI Aquablue Special
  • PowerChrome Actinic+ = ATI Blue Plus
  • PowerChrome PureActinic = ATI Actinic

と言うオチでした。

それにしても、このPowerChromeの公称スペクトルは、かなり適当ですねぇ(汗)
適当と言うより、これ、多分測定器が壊れてるか、測定方法が可笑しいです。
グラフを作成した時点で気付かなかったのかしら???
わざと放置してるなら景品表示法違反でしょっぴくぜぇ?

The official spectrum is considerably wrong.
Probably the measuring instrument is out of order, or the method is wrong.
When a graph is created, GIESEMANN should notice.
It is a fraud if maker perform it intentionally.

最後に、ATI SunPower 24W×4を使って、およそ実用的な構成も試してみました。

  • 系統 1 (白ch): Midday + AquaBlue+
  • 系統 2 (青ch): Actinic+ + PureActinic

でもMiddayの替わりにAquaBlue+×2の方が良いかも?

GIESEMANN PowerChrome 実用構成

色温度は計測不能ですが、x,y座標から見て、およそ50000Kくらいかな?

尚、PureActinicは1本しか入れなかったので、400nmは相対値で約2割しか確保できてませんから、ブルー系蛍光タンパクに対してはちょっと物足りないかも知れませんね。。。
まあ、足すにも限界がありますが、灯具の許す限り入れたいところです。

さて。スペクトルはこの辺にして、次は光量の測定結果を見てみましょう。
手を抜いてメタルラックに載せて測ったので、ちょい暗めに出てるかも(汗)

結果は・・・うーん。。。PowerChromeって、ATIより結構暗いようです(汗)
ま、これが価格差って奴かも知れません。まさに差額1,000円分の違いが。。。笑

100W構成
30cm測定
ATI GIESEMANN
PowerChrome
eco-lamps
KR93SP 24″
試験灯具 ATI SunPower 24W×4 -
構成 Aquablue Special ×2
Blue Plus ×1
Actinic ×1
=96W
Midday ×1
AquaBlue+ ×1
Actinic+ ×1
PureActinic ×1
=96W
白ch 63W
青ch 28W
=91W
交換球価格 (24W) 約3,000円 (1本) 約2,000円 (1本) -
JIS 照度 (AA) 10,814 lx 8,936 lx 18,368 lx
簡易照度 (CIE) 19,560 lx 14,880 lx 34,530 lx
PPFD 372 umol/m2/s 275 umol/m2/s 666 umol/m2/s
UV (UVA-UVB) 19.1 uW/cm2 39.1 uW/cm2 51.7 uW/cm2

* クリアパネルを外して測定、30分点灯後に測定

参考にフルスペも並べてみました。いじわる?笑
PowerChromeの方は専用灯具じゃ無いので云々・・・と言うケチが付くかも?笑

考え方としては、PowerChromeの方の白chにLagoonBlueが入ってる分、ATIの構成に比べると緑の帯域の強度不足がやや照度結果に影響したかな?とも考えられますが、それだけでPPFDに100umol/m2/sも差が付くことは考えられないので、要するにPowerChromeはATIよりも2割は暗い、と言うことができそうです。但し繰り返しますが、純正灯具だとどうなるのかは判りませんよ?よ?

また、UV値について念のため補足ですが、どこかにも書きましたが、フルスペの場合はLEDは単波長なので、UVメータが示す値は明らかに380-400nm(400nm LED由来)のUV強度を表しますが、T5の場合はUVメータの測定範囲280-400nm全域に微量の漏れUVを発しているため、それらが積もり積もった総和量としての値になります。よって、T5のUV値を見ても感嘆には値しませんからご注意ください。

  • LED(400nm入り)のUV測定時の判断:
    UV値 ≒ 400nm LEDの短波長側成分(380-400nm)の積算値
  • T5のUV測定時の判断:
    UV値 ≒ 280-400nmの全域の漏れUVの総和量

今回はPureActinicの公称スペクトルに期待(350-400nm大盛り?)してのレビューでしたが、残念ながらそんなに美味い話は無いって事が判りました(曝)
そんでもって、ギーゼマン・パワークロームは安かろう暗かろうと言う結果も判明?したので、その辺をよく理解した上で使用する分には問題ないと思います。

以上、参考になれば幸いです。

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元祖スギノキブルー化計画?

この記事を含むタグの全記事リスト: 400nm LEDうんちく スペクトル 海洋雑学 色素

前世紀シリーズ 2.

むかしむかし、僕がまだ水槽をブンブン回してた頃、ようやくミドリイシ飼育のコツが掴め、比較的容易に成長が楽しめるようになってきた頃のお話です。

スギノキの3ヶ月間の成長度合い

当時は直感的にも経験的にも、メタハラのUVはサンゴに何らかの恩恵をもたらすとは考えていましたが、具体的な情報が皆無の時代でした。

そこである実験を行いました。
それが、かの有名?な「スギノキブルー化計画」です。
主なUV源にはSCマリンブルーを用い、意図したUV量の調整と照射が肝となります。

その結果、スギノキの照射面には見事に「青い色素」が増強されました。

スギノキのシアン蛍光の分布度合い

はい、実は当時はまだ、スギノキブルーの色素原理が、UVにより励起されるブルーやシアンの蛍光タンパクだとは知りもしませんでした(笑)。しかし、それらがメタハラのUVによって強化できる事だけは、経験的に把握できていた訳です。

気まま日誌2000年5月のキャプチャー

2000年5月当時のスギノキブルー化計画の日記

昔は顔文字も使うカワイイ奴だったんですが、そこはスルーしてください(笑)

その後、時代を経て、スギノキブルーの発色がUVによるブルー蛍光・シアン蛍光であることも判明し、現在のアクアLEDのノウハウにも活かされることとなりました。

当時、何気なく実験に用いたSCマリンブルーが、実は最高のUV域保有ランプだったという事実に、近年スペクトル測定環境が整ってから改めて実感させられました。

そっか。。。

あの日の偶然は、今日への布石・・・必然だったのか・・・

このSC普及への貢献は、今なお絶大なSC人気に繋がっています(俺調べ)
そして、現代に引き起こされたフルスペ旋風も、加速する一方です(俺調べ)
いずれも、UVによる色揚げ効果という恩恵があるからこそ。。。

海中スペクトルを見ても判るとおり、水深を増すにつれ赤の波長こそ早くに減衰して無くなりますが、UVは水深30Mでさえ緑~黄色並の光強度があります。スペクトルは約360nmから立ち上がり、400nmでは既にシアン並みの光強度があります。なんと、このUV部分のスペクトルは、SCマリンブルーのスペクトルにとてもよく酷似しているんです。

↓以前、南紀で測定した水深50cmのスペクトル例

青空のスペクトルと海中50cmのスペクトル、各3パターン

一方、フルスペもSCマリンブルーのスペクトルに酷似しますが、流石に本当の紫外線域360nm-400nm間の波長強度はSCに敵いません。とは言え、フルスペはアクアLEDライトの中でも群を抜いて400nmの光強度が高いため、UV側スペクトルの立ち上がりが380nmから始まり、390nmあたりで相対値4-5割の光強度を確保しています。しかし、それ以下の帯域360-380nmが欠けていることには違いないので、サンゴの蛍光タンパクの色揚げに関して360-380nmにもこだわるなら、現状ではSCマリンブルー等のメタハラに頼らざるを得ません。特にややこしい個体に対しては無視できないでしょう。。

尚、T5の場合でも、Actinic系ランプを追加することで400nmの強度を引き上げることは可能ですが、効果的な光強度を確保するなら、全体の2-3割はブレンドしたいところです(8本灯具なら2-3本のActinic系を推奨)
ちなみに、Actinic系無しで構成した場合は、どの光色を混ぜても400nmは相対値で約1割程度しか確保できませんのでご注意ください。

ちょうどこのスレッドこのレスに判りやすいグラフを貼ってますので参考にどうぞ。

SCマリンブルーとフルスペとT5 Actinic系のスペクトル比較

やることをやれば蛍光ブルー系の色揚げは比較的容易ですから、色々お試しください♪

尚、スギノキブルーの発色原理の多くはブルー・シアン蛍光タンパクですが、種によっては非蛍光の色素色のブルーもありますので、注意してください。まあ、今時ならF.P.ドクターと言う秘密兵器があるので判定は容易ですね。400nm前後を当ててみてください。
例えば、このスレッドこのスレの個体は、どうやら色素色のブルー(紫)のようです。

ブルー(バイオレット)系ミドリイシ

mjnekoさんの個体どにゃさんの個体も非蛍光のブルー個体と思われますが、この手の個体の場合、中域の波長(緑~橙)を強化してみてください。まあ、扱いとしてはハナヤサイやトゲのような感じです。
予備知識としては、海洋雑学もどうぞ。

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