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懲りずに書いてみたりする結果オーライな日記

色温度からスペクトルは計れない

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僕がフルスペフルスペ言うから悪いのか、はたまたフルスペ=太陽と言うイメージから派生して、太陽=6500Kだからフルスペ=6500K?とまで飛躍しちゃうのか・・・!?

答え:

太陽=フルスペクトル (天気関係なく)
太陽=6500K (快晴時)
× フルスペ=6500K
× 6500K=フルスペ

さて。下の図は、CIExy色度図と黒体軌跡上の色温度を示したものです。アクア向けに、多少の最適化はあるやも知れませんが。

CIExy色度図と色温度

黒体軌跡と言うのは、黒い物体の温度が上昇していくときに可視光線として見える色の変化を表したものです。炎の温度が低い時は赤く見え、温度が高くなるに従い青くなる、というアレです。

で、これを照明の光色に当てはめて考える際に注意して欲しいのは、色温度・光色はあくまでも光源の波長・スペクトルに関係なく、結果的に目に映る光の色を表しているに過ぎない、と言うことです。光の色とスペクトルは不可逆的な関係であり、スペクトルから光色を算定することは可能ですが、光色から想定されるスペクトルは多岐に渡ります。(もちろん計器によりスペクトルを解析することは可能ですよ)

小学生の頃、写生会で絵の具の黒を使い果たして途方に暮れていた時のこと。

先生: 「エイジ君は黒ばかり使うのね。黒はあまり使わない方がいいわ」
エイジ: 「え? じゃあ、黒いところはどうやって塗るの?」
先生: 「いくつか色を混ぜてごらんなさい」
エイジ: 「うおおおおおおおっ!!!」

なつかしい。。。僕が絵に関して開眼した瞬間でした(大げさな)
ちなみにホントはもっと富山弁バリバリでしたけど(汗)

ある色を得ようとする時、その色を構成するレシピにはいくつものパターンが存在します。
しかし、結果的にその色が得られても、レシピを辿ることは出来ません。。。

色温度や光色からスペクトルは計れない

* グラフは相対値であり、実際の混合比ではありません

メタハラの6500Kも白色LEDの6500Kも、6500Kに見えるように作られた光源です。しかし、その6500Kの光色を構成するスペクトルはまったく違います。それでも同じ色温度は得られている訳です。
また、水色のシアンを見た時、それが本当に500nmの波長からなるシアンそのものなのか、はたまた青と緑を足して作られた嘘のシアンなのか、光色からは判りません。パープルも同様です。。。

少なくとも、RGBの3色があれば、多彩な色を再現することが可能です。この3色があれば、概ね全ての色を作り出すことが出来ます。その上で、6500Kも、10000Kも、18000Kも、思いのままです。RGBについては過去の記事もご参考にどうぞ。

もちろん、そうした演色や観賞としての光色・色温度で目的が果たせる用途(舞台照明、魚水槽など)ならそれでも十分です。しかし、光合成や蛍光を命の糧とするサンゴにとって本当に必要なのは、演色でも光色でも色温度でもなく、波長やスペクトル分布です。

サンゴ: 「おう、悪いけどUV 400nm当ててくれへんか?」
飼い主: 「今ちょっと無いわ。青と赤ならあるわ。足したらパープルやで♪」
サンゴ: 「頼む。俺を海に返してくれ・・・」

サンゴ用LED照明は、必ず光合成・蛍光タンパクの要求スペクトルを満たす波長のLED素子群を配備した上で、且つ色温度の設定が必要な場合は、それらが生み出すフルスペクトルが破綻しない範囲で調整できるべきです。間違っても、波長・スペクトルを無視して、光色・色温度を基準に構築してはなりません。

最近のLEDシステムライトを見ていて、とても不安なのは、
色温度が作れる♪=サンゴが飼えるスペクトルが作れる♪
と言う誤解が生じてないかどうか。
光色・色温度は作れても、波長・スペクトルは作れませんから。

そして、もうひとつの懸念は、
調光によるスペクトルの破綻の回避策は用意されているのかどうか?
と言う点です。
間違っても赤だけガンガンとか拒否するようになっとらなアカん。。。汗

じゃ、フルスペってどんなのがフルスペやねんっ!?

つづく

オマケ:スーパークールとKR93SPの色温度

スーパークールとKR93SPの色温度

* SCの色温度データはハナアレジーさんから拝借
* KR93SPの色温度データはeco-lampsから入手

KR93SPの白chは、スペクトル的にはスーパークール・マリンブルーに酷似しますが、色温度で見るとSCサンホワイトに極めて近いようです。また、白ch+青chのフル出力時では、SCアクアブルーに近い色温度となり、これはコーラルグローやアストロビームにも近い色温度と思われます。何人かのユーザーさんが「KR93SPの光色ってコーラルグローみたい」と仰っていたのは、このフル出力時の色温度のことです♪
その上、白chと青chの比率を変える事で、上の図の28000Kの位置から、下方の青chの位置まで、色温度が行ったり来たりすると言う訳です。LEDシステムライトって、この調光機能が良いですよねぇ♪

こちらのエントリーもどうぞ♪

フルスペ便り、北の国から

この記事を含むタグの全記事リスト: eco-lamps KR93SP LEDライト

よいこのみんなぁ~?
フルスペってしってるぅ~?

「けーあーる93えすぴぃ~♪」

は~い、よくできました~♪

と言う訳で、どういう訳で、本日はフルスペ便りです。

これは、前回のeco-lamps訪問の帰路、BHで撮ったフルスペ水槽の写真です。
フルパワー全開設定で、スーパークールよりもコーラルグローよりも、青寄り状態です。

KR93SP水槽 by ブルーハーバー

写真を見れば、特に経験者の方はすぐに気づかれるかも知れません。
そう、フルスペは色ムラの無い均一な配光!
あのLED特有のカラフルな斑模様の影、ディスコのようなチカチカがありません♪
あ、ディスコ知らない人はググッてくださいね(汗)
それよりも、まだフルスペ知らない人はKR特設サイト必読ですよ!

ま、実物を見てもらうのが一番なので、一度ブルーハーバーへお越しください♪
また、下記のショップでもフルスペの展示があるそうです♪

そして本日は、ホットなフルスペ便りが、北の国からサクッと届いております。
アクアリストなら誰もが尊敬する、にゃんこ先生こと、秋田のスーリンです♪
いよっ! 待ってました~♪

スーリンはフルスペの予約が開始されるや否や、36インチを2台ご注文されました。
当初はノーマルとフルスペ1台ずつでしたが、途中で2台ともフルスペに変更!
そうでしょう、そうでしょうともっ!

スーリンはそれまでMT250+アストロビーム×3基=750Wを使用しておられました。
それを今回フルスペ36インチ×2基=300Wに変更され、正味450Wの省エネに!
昨年の12月初旬に設置されましたので、既に一ヶ月以上が経過しています。

スーリンの水槽は、2008年の秋田遠征の記事でも紹介しています。

これまでの水槽データは、

  • W1150 x H730 x D600 mm (水深600mm)
  • 主に浅場のSPSを飼育
  • MT250+アストロビーム×3基=750W
    UVカットでもUVが多いので水面からかなり離して設置

それを今回のフルスペで、

  • 水槽同じ
  • サンゴ先端水深20cm / サンゴ最深部60cm
  • KR93SP-36S×2=300Wに変更
    水面20cmへ近接して設置 (水深が深いため)
    9:00~18:00 フルパワー (前後2~3時間フェード)

そして、今回スーリンからいただいたフルスペ設置直後の写真がこちらです。

KR93SP水槽 by スーリン

あんまり綺麗なので、クリックで拡大するようにしておきました(笑)

色ムラも無く、言われなきゃてっきりアストロビームかコーラルグローかと見間違うほど♪
フルスペって凄いなぁ。。。誰が作ったんだろ。。。笑

以下、スーリンからの感想です。

  • 水深35cmのイエローグリーン系ミドリイシ先端に微かに青が乗ってきた!
  • MT250時と比較して照度不足感なし、サンゴの発色・成長度十分!
  • 白化なし、シアノなし、悪い変化なし
  • クーラー作動時間減少、電気代削減♪

ですって!!!
ミドリイシの先端にブルーが乗るのは、もはやフルスペの定番のようです♪

極めつけは、

メタハラ750Wの替わりを普通に難無くこなすので、報告するのも忘れてた!

とのことでした(笑)
さすがにメタハラ750W→LED300Wなので、いくらフルスペとは言え、何かしら悪い方向の変化があるだろうと覚悟していたそうです(苦笑)。それが、白化も色下がりも変なコケも出ず、メタハラ750Wの代役を普通に難なくこなすので、正直驚いたそうです。
そうでしょう、そうでしょうともっ!

一見、何も変わりなく推移して見える水槽。。。
それを変化が無いと見るか、それともメタハラ750Wの光環境を保持できていると見るか、それはあなたの自由だぁぁぁっ!!!

そしてスーリンからのお褒めの言葉。

さすがエイちゃんのプロデュースです。

いやぁ~、それほどでも~、あるけど~♪笑

でも実は、スーリンチェックは相当なプレッシャーでした(汗)
何より、当時は製品の告知だけで、現物も実機データもない段階でのご予約でしたから、言ってみれば僕への信用買いです(大汗)
ひぃぃぃ! これは絶対にガッカリさせらんない~!!!
勿論、すべてのユーザーさんに対しても同じ気持ちでした。

絶対に幸せにしてみせる!!!

そしたら、本当に皆さん幸せになりましたとさ。
めでたしめでたし♪

みんなもおいでよ~♪
うふふふふ~♪♪♪
チクチクやってないでさぁ~♪

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ありがとう2011、フルスペヒストリー

この記事を含むタグの全記事リスト: eco-lamps KR93SP LEDライト

年明けのKR93SPの追加ロットの入荷が、なんと昨日届いたそうです♪

と言う訳で、少数ではありますが、応援市場にも在庫を少し割り当てていただきました。
ま、今慌ててポチッても出荷は年明けと思われますが、、のんびりしてたらまたすぐに在庫切れになっちゃうので、これを絶対に逃したくない方は、なるべく早めにご注文ください!

応援市場 > ブルーハーバー > KR93SPフルスペクトルエディション

ちなみに、30インチは既に在庫切れです(ショップからの引き合いらしいです…)

今年もあっという間に終わりを迎えましたね。ホント、加速する年月。。。
でも、今年は例年になく凄い一年になりました。
アクア業界を震撼させた年と言っても過言ではありますん?笑

そう、我らが“フルスペ”です♪

もう完全に合言葉は“フルスペ”状態ですね。
KR93SPの愛称として、すっかり耳に浸透しちゃいました。てへ♪
また、KR特設サイトも公開され、KR93SPについても詳細に情報が載ってますので、お時間があれば是非KRシリーズの魅力をご堪能ください!

では本日は、特設サイトにはないフルスペのヒストリーを、簡単に振り返ってみましょう。

2011年8月、フルスペ初号機の試作開始!

2011年8月。ブルーハーバーの和田さんから依頼を受け、KR93をベースにフルスペクトルモデルを試作する。

KR93SP - 1.023world試作機 - スペクトル設計ver.1

この時の仕様は、白chと青chをフル点灯させればフルスペクトルが得られると言うものだったが、白chと青chの出力を可変すると、フルスペクトルの連続性が破綻してしまうのが欠点だった。(とは言え既製品は未だに全てこの方式だが)
また、素子コストをケチッて(汗)UVや420nmの明るさが十分に確保できなかったり、シアンも個人では満足のいく波長ランクを入手できず、ほとんど緑色に近いものだった(汗)

ちなみにこの時使用したUVと420nm素子は共に1W/90-100mW/TEKCOREチップ/$4/10ロットのものだったが、後日談として、1W/200-250mW/SemiLEDsチップ/$10/10ロットを見つけて買ってみたら、確かにかなり明るいものだった。LEDの明るさは決してブランドの違いだけではなく、チップサイズとランクがより重要であると、改めて実感した。

2011年9月、早速eco-lampsから試作機が到着!

KR93の生みの親eco-lamps社に、採用LED素子のスペックの選定も含めて、僕の試作機と同じ仕様で製作を依頼した。

KR93SP - メーカー試作機 - スペクトル設計ver.1

しかし、この試作機はLEDチップのブランドや出力にはあまり固執せず、とりあえず波長優先で作ったため、やはりUVや420nmは僕の時と同様、やや弱いものとなった。ま、僕の試作機よりは確実に明るくはなったのだけど。。。
さて、どうするか。そもそも弱いことを見越してUV素子数を増やすか、はたまたコストアップを覚悟して高出力ランクの素子を調達させるか。。。
しかし、その問題解決も重要だが、更なるフルスペクトルのクオリティ向上と言う課題が、次の欲求として僕を駆り立てた。MACNAで“黄色い” “もっと青味を”とか言われちゃったのも悔しかったし(笑)
目指すは、白chと青chをどんな風に調光しても破綻しないスペクトル性と、リアルな水深スペクトルと日照変化の再現。それこそがメタハラや蛍光灯では不可能な、LEDならではのメリットですから。

そして、一切の妥協を排除して、究極のスペクトル設計バージョン3に行き着いた。

2011年12月、ついに最終設計モデルが初期ロットとして完成!

待ちに待った正規版KR93SPが完成した。試作から実に4ヶ月が経過していた。予定から1ヶ月遅れた原因は、製造途中でUVの仕様ミスが発覚し、急遽代替素子に切り替えたためだったが、そのことが結果的に仕上がりに大きな貢献を及ぼしたのだ。転んでもタダじゃ起きない!

KR93SP - 初期ロット - スペクトル設計ver.3

当初予定していたUVの出力は1素子あたり250mWだったが、それをなんと代替素子で400mWを達成してしまった。おおお。。。普通なら暗く見えがちなUV素子が、目で見ても明るく見える♪
しかも、出来上がったスペクトルは、、、まさにスーパークール♪

今回の初期ロットで採用したLEDチップも簡単にご紹介しておきます。白系は省略。

KR93SPのLEDチップ群

当初の予定から変更になったのは、UV 400nm SemiLEDs→Epiledsと、Cyan 500nm SemiLEDs→TEKCOREです。その以外は予定通りですが、一部のチップは出力が変更になっています。
それにしても、まさか1Wで400mWも叩き出す明るいUVチップがあったことに驚きです。。。LEDの日々の進化に改めて感心させられますね。僕が最初に使った100mWは何だったんだ。。。ま、その分、高いだろうけど。。。汗
尚、シアンはチップの納期の問題でやむなく変更になりました。出力は同等です。

以上、KR93SPの裏事情を簡単にご紹介しました。
その他、詳しい仕様・性能については、KR特設サイトをご覧ください。

こうして、記念すべきKR93SPフルスペクトルエディションの初期ロットは、その製造期間・製造コストにも関わらず、応援市場だけで**台、ブルーハーバーでも同**台を売り上げ、当初余裕を持って発注した数量すべてが完売となり、あわてて増産した分が昨日やっと入荷したと言う状況です。

早い方では、設置後既に1ヶ月が経過しています。
気になる肝心のサンゴへの効果のほどは如何に!?
特設サイトの会員専用コンテンツKR-CLUBでも既にユーザーによるレビューが公開されていますが、もっと知りたい方はブログ記事も検索してみてください。敢えて大きな声では言いません。だって、一目瞭然なんだもの♪

目指して目指せたもの、そして次に目指すもの

最後に、ひとこと。

僕がKR93SPで目指したもの。

それは、“サンゴが飼えるLEDライト”ではなく、“太陽・メタハラと同じスペクトルのLEDライト”でした。
僕の考え方はかれこれ10年以上前から一貫して変わりませんが、僕が環境の構築に求める一番のこだわりは、生体を飼うための最低条件のクリアではなく、生体が当たり前に得てきた自然の恵みの完全なる再現です。「蛍光灯でも大丈夫」「10ppmでも大丈夫」と生体を選ぶのではなく、どの生体でも当たり前に育む“海”をそもそも再現しましょう、と言う考え方です。LEDライトについても、「暗くなるからUV省略で」「クロロフィルに合わせて青と赤にピーク」などと光合成種を限定するのではなく、全ての光合成種が当たり前に浴びてきた“太陽”を再現することにこだわりました。要するに太陽が持つ旨味も苦味も全て再現する訳です。そうしないと、紫外線からの防御色としての本来の蛍光色も発現できないからです。ですから、UVが欠落したり赤が突出したり、そんな歪なスペクトルは避けなければなりません。そうして、全ての光合成種が“日向ぼっこ”を楽しむような、そんな至高の光を目指しました。

近年、メタハラからLEDに移行したアクアリストの多くは、言い知れぬ挫折感を味わってきたことでしょう。その主な原因は、光量不足の他に、メタハラの球ならどの色温度であっても関係なくたっぷり含まれていたフルスペクトルが、LEDには大きく欠落していたことです。これにより、飼えるサンゴと飼えないサンゴが顕著化しました。
また、UVや赤など、一部の波長は補助ランプで補えたものの、420nmやシアンは補助ランプすら存在しませんでした。

メタハラの時は水質だけ考えれば良かったのに、
LEDにしたら波長も考える必要が出てきちゃった。。。

普段から慣れない悩みが増えたことで、これをクリアする術を持たない・知らない・判らないアクアリストは、さぞ迷走したことでしょう。。。結果、メタハラや蛍光灯に回帰した方も。。。

僕は、それをどうにか解消したかったのです。

そして、ようやくそれが形になりました。
年明けには、もっと多くの評価を目にすることになるでしょう。。。
しかし、のんきに構えている暇はありません。
せっかく実現できたこの究極のスペックを、より安定して固めるべく、品質の向上と更なる進化を夢見て、遂に僕は40年の人生で初めてパスポートを作りました(笑)
これがあれば、eco-lamps本社も工場も射程距離だそうです(曝)

イヒ?

では、良いお年を♪

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