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アグラオネマの照明

ブログ エイジ 21:00 コメント2件
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LEDスペクトルデザイナー、ついに観葉植物の世界にも進出か!?笑

昨年の話ですが、「アグラオネマの照明が欲しい」と依頼を受けました。
あぐらおねまってナンジャラホイ?汗

アグラオネマ (まんじゅういしさんからお借り)

* 画像はまんじゅういしさんから拝借

アグラオネマは熱帯の森林の日陰に生息する植物で、あまり強い光は要らないとか。
とは言え、日陰に差す太陽の木漏れ日も当然フルスペクトルなので、例え光量は控えめで良いとしても、スペクトル設計は妥協せず最高のお持てなしで望みたい!
あわよくば、あの空の下と同じように、スクスクと満足げに育ってくれれば言う事なし!
ならば、やはり目指すは一般的な光合成色素の吸収スペクトル実現でしょうかね。

光合成色素の吸収スペクトル

アグラオネマの光合成色素がクロロフィルaかクロロフィルbか判りませんが、とりあえず陸生植物の成長に関しては、青の波長は400-470nm、赤の波長は640-680nmあたりをカバーすれば対応できそうに思えますけど、果たしてどうだろう?

そこで、念のためアグラオネマの吸収スペクトルも測ってみました。
特にアグラオネマはトリカラー(Tricolor)と言う3色のグリーンの迷彩模様が売り?ですが、その維持や鑑賞を考えても各色部分の吸収スペクトルを知っておくことは有意義です。
但し、クロロフィルを直接測定することは僕の設備上無理なので(汗)、あくまで葉の表面色としての吸収スペクトルを見てみることにします。

アグラオネマの葉の緑色の濃淡ごとに反射スペクトルを測定

もっとも薄いグリーン部分をGreen 1、中間のグリーンをGreen 2、もっとも濃いグリーンをGreen 3と定義し、それぞれを複数の部位で測定し、平均値を探ります。

緑色の薄い順にGreen 1/Green 2/Green 3と定義

まず、Green 1の反射スペクトルから算出した吸収スペクトルです。

Green 1の吸収スペクトル

続いて、Green 2の反射スペクトルから算出した吸収スペクトルです。

Green 2の吸収スペクトル

そして、Green 3の反射スペクトルから算出した吸収スペクトルです。

Green 3の吸収スペクトル

それらを比較してみると、、、

Green 1/2/3の吸収スペクトル比較

先述のクロロフィルのような明確な特性は判りませんが、少なくともそれぞれの吸収ピークはおよそ読み取ることができました。

Green 1シアン500nm/ディープレッド670-680nm
Green 2シアン490nm/ディープレッド660-670nm
Green 3シアン500-510nm/ディープレッド660nm

やはり、クロロフィルの吸収スペクトルと大きく異なる事も無く、目指すは一般の光合成色素のフルカバーで対応できそうです♪
ま、それが大変なのですが(汗)

で、出力はさほど求められないので、手始めにバイタルウェーブをベースにLED素子の換装を試みることにしました。ただ、設計だけならスペクトラを使えば簡単にシミュレーションが可能ですが、実際にはLED素子の厳密な出力、波長誤差、実装レンズの特性などが影響し、完成品の色温度や演色性、スペクトルは微妙に異なってきます。従って、結局はひとつずつLED素子を実際に換装していって、測定結果を確認していくしかありません。なかなか地道な作業になります。

こうして、バイタルウェーブ・リーフ(葉)製作プロジェクトは静かに幕を開けました。
それが去年の12月の話。。。

バイタルウェーブをベースに何度もスペクトルデザインを試作...

その後、スペクトルシミュレーション→実装→光学測定、の繰り返しです。
途中、必要な波長を得るために何度もLEDメーカーへ新たな素子を特注したり。。。
そして、延々と試作を繰り返すこと3ヶ月、試作回数は実に14回。。。
ようやくゴールが見えてきました♪

ようやくそれっぽいのが完成♪

色温度はやや高くなりましたが、日陰なので10000Kなら許容範囲でしょう。
演色性はRa91をマーク!
なによりこのスペクトルを見てください♪

完成品のスペクトル分布

太陽も思わず嫉妬するフルスペクトル!!!笑

そして、お気づきになられましたか?笑
そう。なぜか波長ピークが10箇所もありますぜ???
バイタルウェーブのLED素子は7ヶしかないのにホワイ???

はい。実は先日のデュアルチップLED素子を贅沢にたっぷりと使いました♪
なぜあんなに多様なデュアルチップを作っていたのかこれでお判りですね(曝)

バイタルウェーブ・リーフのLED素子構成

スペクトル合成時の波長強度を分散する意味でも、シングルチップとデュアルチップの使い分けは非常に有効なんですよ。

そうして完成した、バイタルウェーブ・リーフ(葉)がこちらです!

1.023worldオリジナル、バイタルウェーブ・リーフ(葉)

ベース筐体込みで2万円位になっちゃいましたが(曝)
だって、ディープレッド680nmのLED素子だけで4000円くらいするんだもん!
ま、巷じゃ何万で売ってますから、これでも激安ですけどね(汗)
それに、この680nmチップはドイツ製ですぜ!(残りのチップは全てEpileds社製)
そこまでして680nmを入れる必要があったのか?
と聞かれたら、答えはハ~イ~です♪ (タラちゃん風)
680nm素子入りの植物育成LEDスポットって、もしかして世界初なのかしら?
660-670nmはよくありますけどねぇ。。。

そして、完成品の光合成色素カバー率がこちら。

バイタルウェーブ・リーフの光合成色素カバー率

光合成色素が泣いて喜ぶフルスペクトル!!!曝

しかも、植物育成ランプにありがちなピンク照明(笑)ではなく、日陰でありながら高演色な観賞性も見事に実現した色温度10000K高演色Ra91、そして極めつけは葉の緑が引き立つようにグリーン530nmだけはシングルチップで波長強度を確保した上での、この見事なフルスペクトルです♪

まさに植物にとっての太陽の恵みが屋内に降臨~♪

特にこの530nmの調達には本当にこだわりました。何度か入手した素子はどれも520nm前後ばかりだったので、LEDメーカーに執拗に(汗)にお願いして探してもらい、結局530nmのLEDチップだけわざわざ台湾から調達して頂いたのです(苦笑)

成長・色維持に関してはこれからですが、ひとまず発色に関しては絶賛を頂きました!
あとは、アグラオネマ本人にも満足してもらえたら嬉しいなぁ~♪
ま、自信満々ですけども~笑

以上、かなり駆け足でザックリとお送りしましたが、ご用命はメールにて承ります。

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コーラルカラーチェックのご提案

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今、巷ではトリトン水質検査が流行ってますね!
僕も今年1月にコーラルラボに立ち寄った際に話を伺いましたが、強く感銘を受けました。

TRITON LAB

トリトン水質検査の目的は、水槽の海水成分に於いて、
何が不足していて何が過剰かを見極め、水質を厳格に管理する。

この思想、完全に同意します。
測りようのないものを間違った根拠で添加している場合じゃないですもんね。

水槽でも自然の海に倣ってサンゴ礁の水質を再現したり、さらにバクテリアや微小生物らによる水質への寄与も考慮してワラワラ(生物相)の構築も目指したり、とにかく海洋生物を飼うからには海洋生物のいた環境をなるべく忠実に再現する工夫が不可欠です。 僕もサイト開設当初から海を創るにはワラワランドで推奨してきました。特にバクテリアの効果は絶大で、現在では豊富なバクテリア源としての新鮮なライブロックやライブサンドが入手困難な時代になりましたが、ビオアクアマリン*を初めとする優秀なバクテリア添加剤が5年前には既に登場しており、今では十分な代役を熟しています。

海の子には海を。

* ビオアクアマリン解説
山・河川・海洋から採取された豊富な細菌類をパッケージした画期的なバクテリア添加剤。アミノ酸18種類含有。乾燥休眠状態なので菌叢の劣化に強い等のメリットも持つ。

そしてそれは照明も同じ。
どの波長が不足しているか、サンゴがどの波長を要求しているか、それらを科学的検証から見極めた上で理想のスペクトルを構築し、サンゴの要求に応える。
これまでのスペクトル設計SPSカラーレポートがまさにそれでした。

太陽の子には太陽を。

そして、トリトンLABの最大の売りは、
「ユーザー各々の水槽の水質を個別に検査します」

じゃあ、こっちもやろうじゃないの!
「ユーザー各々のサンゴの色を個別に検査します!」

コーラルカラーチェックサービス

さあ、1023LAB(笑)による前代未聞世界初のサービスがここに誕生しました!
その名もコーラルカラーチェック/Coral Color Check、略して3Cサービスです!
この3Cサービスを基盤としたサンゴの色揚げ攻略法を、3Cメソッドと提唱します!
過去のSPSカラーレポートを参考に色揚げを実践されている方も既に3Cメソッドです♪
皆さんも気になるサンゴの色彩構成データを知り、是非色揚げにお役立てください!

当面は枝状SPSのみ承ります。国内限定です(笑)。まずはご相談ください。

コーラルカラーチェック「3C」サービス概要 (有償サービス)

  1. まず、メールにてご連絡ください。その際に、検査希望のSPSの写真(なるべく見た通りの色彩が撮れてるもの)も添付してください。折り返し送付先をお知らせします。
  2. サンゴ片発送は、海水を半分程度入れたペットボトル、またはナイロン袋(500ml-1L程度)にサンゴ片を入れ(枝1本3-5cm程度)、さらに水漏れしないように厳重にナイロン袋に入れて、元払いにて送付してください。複数体の場合は個別にパッキングするかサンゴ片同士が接触しないように工夫してください。
    冬期はカイロ同梱、夏期は保冷剤同梱など、工夫をお願いします。死着状態でも共肉が一部でも残っていれば測定可能ですが、生時の特性は保証されません。また、完全に共肉が分解されて残っていない場合は測定は不能です。その際、検査費用は頂きませんが、送料はご負担頂きます。
    尚、サンゴ片は当方で処分します。返却はできません
  3. CCCフォーマット検査結果は現カラーレポート(右図)と同じフォーマットで作成し、PDFにてメール送付します。また、明らかに色彩の異なる部位が存在する際は、色彩毎にレポートを作成します。レポートには下記の各項目に加え、当方による分析見解も併記いたします。

    ■検査項目
    1. 370nm反射スペクトル
    2. 400nm反射スペクトル
    3. 425nm反射スペクトル
    4. 450nm反射スペクトル
    5. 475nm反射スペクトル
    6. 500nm反射スペクトル
    7. 520nm反射スペクトル
    8. 595nm反射スペクトル
    9. 630nm反射スペクトル
    10. 660nm反射スペクトル
    11. 白光5000K反射スペクトル
    12. 吸収スペクトル (算定値)
    13. 蛍光発光スペクトル (算定値)
    14. 蛍光励起特性 (算定値)

  4. 費用はサンゴ1体につきトリトン水質検査と同額の¥4,860円(税込)を承ります。データと引き替えに指定金融機関へお振り込みください。
    但し、著作権を放棄される場合は半額の¥2,430円(税込)にて承ります。
    この場合、今後カラーレポートに掲載され一般公開されます(←これが本来の目的)
  5. その他注意点:
    ・専門機関のような検査精度はありません。あくまでもホビーレベルとご理解ください。
    ・検査結果のご利用は自己責任でお願いします。実施結果は一切保証できません。
    ・色彩の異なる部位毎のレポートは、2箇所までは1体分の価格で対応します。
    ・↑2箇所を超える場合は1箇所につき+2,000円(税込)にて承ります。
    ・3Cによるカラーレポート公開はサンゴデータ10体ごとに行う予定です。
    ・万一ホワイト蛍光タンパクが発見された際は、色々とご協力をお願い致します(笑)
    ・3Cサービスの内容やルールは臨機応変に検討・対応・訂正していきます。

と言うのはどうでしょうか?
しかも、トリトンの検査データは本人にしか役立ちませんが、3Cのデータはカラーレポートとして全世界のアクアリストに有益な情報となります♪

■水質検査はトリトンLABにお任せ!
■サンゴの色検査は1023LABにお任せ!

今年のブームになったら良いなぁ~♪

とりあえず、当面はこのページをご覧の上、メールにてご依頼ください。
検査希望サンゴの数量と写真、価格コース、その他水槽システム(照明構成や水質データも)と該当サンゴの購入日(維持期間)や色変化なども判る範囲でお知らせください。
3Cお試し期間として、今月は半額コースを¥2,000円@1体(税込)にて承ります!
反応を見ながらいずれ専用ページ(または応援市場)を設けます。

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すべての答え:蛍光タンパク篇2

この記事を含むタグの全記事リスト: スペクトル プチ実験 海洋雑学

前回のすべての答え:蛍光タンパク篇では、SPSカラーレポート第一弾の中からスパスラタのシアン蛍光タンパクCFPをご紹介しましたが、今回はSPSカラーレポート第二弾の中からグリセアコモンのグリーン蛍光タンパクGFPをご紹介します。
ご存じの通り、GFPはサンゴの中でももっともポピュラーな蛍光タンパクです。

グリセアコモン・蛍光グリーン

このグリセアコモンは凄いですよ。いや、GFPが凄いと言うべきか。。。
文献を失念しましたが、確か生物由来の蛍光タンパクの発光効率は化学合成の蛍光色素の非では無い、とかどうとか。。。まさにそれを痛感するような発光量を体験できました♪

見よ! このとんでもない反射スペクトルを!

グリセアコモン・蛍光グリーン 反射スペクトル

このグラフは前回でも触れたとおり、370/400/425/450/475/500nm等の出力を揃えたLEDを個別にサンゴに照射して得た反射スペクトルですが、他のサンゴはいずれも反射スペクトルを10倍程度に拡大しないとその蛍光スペクトルを拾い出すのは非常に困難でしたが、なんとこのグリセアコモンの蛍光スペクトルは僅か3倍に拡大しただけでこの発光強度が確認できるのです。

賢明なスペクトルマニアの皆さんなら、このグラフからだけでも判りますよね?
そう、この中からは、ピーク520nmのグリーン蛍光GFPの存在が読み取れます。

では、LEDごとに個別に見ていきましょう。

グリセアコモン・蛍光グリーン LEDごとの反射スペクトル

475nmと500nmなんて、光源と蛍光の強度関係が逆転しちゃってます(笑)
まあ、それだけ光源の波長を吸収しているという証拠でもあります。

これはグリセアコモンに限らず、一般的な蛍光グリーンのサンゴならいずれも当てはまると思います。蛍光グリーンは海洋でももっともポピュラーな蛍光タンパクで、最初に発見された蛍光タンパクがオワンクラゲからのGFPだったくらいです(下村, 1962)。そして上記グラフからも判るように、これが何を意味するかというと、それらのサンゴが生息する水深のスペクトルの主要波長がおよそ420/450/475/500nmで構成されていると言うことです。その環境に適した蛍光タンパクがまさにGFPなのでしょう。

また、その励起範囲と励起量から見て、水槽でもとりあえず一般的なロイヤルブルー450nmやブルー460-470nmあたりを当てておけば十分に蛍光グリーンが励起されることも判ります。LEDにしろ蛍光灯にしろ世のアクア向けライトにはこれらの波長はほぼ確実に入っていますから、それが蛍光グリーンの維持の容易さにも繋がっているのでしょう。

そして、上記のグラフから蛍光スペクトルのみを単離するとこうなります。

グリセアコモン・蛍光グリーン GFPスペクトル

ブルー蛍光BFPやシアン蛍光CFPと違い、グリーン蛍光GFPの励起にはUV 370nmやUV 400nmはほとんど必要ありません。完璧を期す場合でも420nmあたりから500nmまでカバーした光源があれば十分ですし、極端に言えば450nmや460-470nmだけでもそこそこの励起量になるでしょう。スターポリプ、ウミキノコ、ハナガササンゴなど、メジャーなサンゴ飼育の光源で悩まないのはそういうカラクリだったのです♪

まあ、それはそれ、これはあくまでも蛍光タンパクのみに言及した話であって、それとは別に肝心の光合成をカバーするだけの光条件は少なからず必要になります。まあそれでも普通の白色LEDなり白色蛍光灯でも十分だと思いますが。

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