現在、白色LEDには、大まかに分けて以下のタイプがあります。
- 一般白色LED (青チップ+黄色蛍光体)
- RGB一体型白色LED (青チップ+緑チップ+赤チップ)
- 高演色白色LED (青チップ+緑赤蛍光体)
- 超高演色白色LED (UV+青緑赤蛍光体)
このうち、僕の太陽光LEDシステムデモ機には4番の超高演色白色LEDを採用していますが、この超高演色白色LEDは光量・効率面でもまだまだ課題が多く一般的ではありません。また、入手にも難があるため現実的ではありません。
となると、現実的な選択肢としては上記1.~3.が挙げられます。
もっとも多いのが1.のBlue+YAG蛍光体による白色LEDで、既製品の大半を占めます。
2.のRGB白色LEDは、映像表示用途には適していますが、効率や制御面、演色性の悪さ、発色の経年変化の面からも、実は物を照らす照明用途には向きませんし、実際あまり使われていません。
3.の高演色白色LEDは、美術やデザイン関係など、高い演色性が求められる分野で需要が高く、該当製品も家電各社からは多数販売されています。が、アクア業界での採用は皆無ですね。恐らく効率や光量の問題からの敬遠か、はたまたコスト面か。。。
そこで今回は、これらのLEDのアクア照明としての有効性について実際に検証しました。
用意したのは、一般白色LED、高演色LED、そしてRGB白色LEDが無かったので、強引に単色LED素子の組み合わせで擬似RGB白色LEDを再現することにしました。
いざ、点灯!
改めて、赤と緑と青を混ぜたら白になるんだ~と感心しました(笑)
ま、所詮「白に見えてるだけ」ですけど(汗)
これで水槽を照らすと、こうなります。
一般白色LEDは何とも言えない見慣れた黄色調ですね。シアンと赤が足りない。
背景の壁も黄色っぽいです。
素子混合の擬似RGBは、やっぱ各色制御しないと綺麗な白にはなりませんね。
今回は電流固定なので、ちょい赤っぽいかな。緑が弱い感じかな。
でも背景の壁の色は、一般白色LEDと比べると随分とマシな白さ加減です。
ちなみに、ポンプ止めなかったから水面の揺らぎのせいで色ムラが凄い。。。汗
ま、あくまでもこれは工程なので、実際の水槽での見え方は大して重要ではありません。
肝心なのはこのLED構成による波長分布ですから。
高演色白色LEDはさすがです。一般白色LEDと比べても、しっかりと赤も出ていて、色空間に深みがありますね。背景の壁の白さも凄く自然な感じです。
ただ注意すべきは、上記の「白さ」と言うのはあくまでも人間の目の見え方であって、スペクトルを保証するものではないと言う事です。最低限の3原色さえ含まれていれば、随所に波長の欠落があっても「白く見える」訳ですから。それに、必要なのは白さではなく、波長全域に渡る連続スペクトルです。その結果が白く見えると言うだけです。
ところで、上の写真ではスギノキが全然青くありませんが、この実験ではUVが当たってないため、スギノキの青蛍光やシアン蛍光が発動してません。こないだの実験も参考にどうぞ。ただ、最近少し色が薄くなってきたのも事実で、原因はただいま調査中です。
では、それぞれのスペクトル結果です。
今更ですが、一般白色LEDには、シアンと赤が足りません。仮に電球色で補っても、シアンは補完できません。シアンは現状、高演色を使うか、単色素子を使うしかありません。
続いて問題のRGB白色LEDですが、蛍光体による広範囲の励起光分布を持たないことが何を意味するのかが一目瞭然です。各3色の光量制御の強弱とは関係なく、文字通り青・緑・赤の3色の波長しか含まれていないため、海洋性光合成生物の多様な光合成色素の要求を満たすことは不可能です。いや、陸生のクロロフィルに対しても、青と赤のそれぞれの帯域が狭すぎて、十分な要求に応えられないでしょう。
と、そこで話が終わると建設的では無いので、改善策として、シアンとアンバーを足した場合のスペクトルも出してみました。まず、シアンの恩恵で、青と緑を薄っすらと繋ぐことが出来ました。そしてアンバーの恩恵で、赤の短波長側をかなり補完することが出来ました。が、どうしても緑とアンバーの中間地点を埋めることが出来ませんでした。これは、緑が520nm~530nm、アンバーが580nm~590nm、その間に50nmものブランクがあるためです。この帯域は鮮やかな青や赤の光合成色素のフィコビリン系色素がもっとも要求する波長帯域なので、絶対に無視する訳にはいきません。550nmの黄色LEDでもあれば良いのですが、ハイパワー素子では今のところ見たことありません。たまに黄色といわれてる素子も、大抵はアンバーのことですし。。。ま、仮に黄色が補完でき、各単色の混合によって見た目の白色が得られたとしても、根本的にスペクトル自体は連続にはなっていませんから、そのすべての隣接域に波長の欠落が生じています。これはどう見繕っても光合成に対して不完全であると言わざるを得ません。やはりRGB白色LEDは、電飾用途(光自体を見るための用途)はこなせても、太陽(物を照らす用途)には程遠いようです。
最後に、高演色白色LED。
このスペクトルは賞賛に値しますね。人間の目にはもちろんのこと、サンゴから見てもこれは太陽の白です。例えどんなにサンゴの光合成色素が多種多様であろうとも、どこでも好きな波長を使って遠慮なく光合成しちゃってくださいませ♪
自作派なら、シャープの銭型のHi color 6500Kあたりを通販でゲットするも良し、面倒なら家電各社の高演色ダウンライトあたりをゲットするも良し、とにかく一度は試してみて欲しい本物の白です。
あ、但しUVは含まないので、必要なら別途補助ランプ等で補ってください。
結論。
- 高演色白色LEDが、スペクトル的にも圧倒的に有利である。
- 一般白色LEDはシアンと赤が足りないが、それ以外は連続スペクトルで良好。
- RGB白色LEDは、多様な光合成色素相手には向かない。
現状では、高演色白色LEDを試せる人はごく限られてしまうでしょうけど、近い将来、光合成向けアクアLED照明は、必ずこの方向にシフトしていくはずです。それは我々以上に生体が望んでいるからです。
犬猫のペットの世界では、満足に餌を与えなかったり、散歩に連れて行かないことは、既に十分に虐待行為に当たるそうです。と言うことは、サンゴの光合成が十分に得られないような照明を使ったり販売する行為も、いずれ虐待とみなされる時代が・・・?
大げさと笑うか、真剣に取り組むか、各社の手腕が問われます。