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すべての答え:トゲピンク篇

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トゲサンゴの色素や色揚げに関する質問が多いので、先日紹介したすべての答え第一弾からデータを抜粋して、軽くご紹介しようと思います。

サンプルのトゲサンゴ・ピンクはこの個体↓です。

トゲサンゴ・サンプル

このトゲサンゴに関する測定・検証データはこちら↓です。

トゲサンゴの反射・吸収・蛍光スペクトル

全ての考察を一から百まで詳細には解説していませんが、見る人によっていろんな考察や解釈があり、そうした楽しみ方もこのデータの使い道のひとつだと思います。

では、このトゲサンゴのデータを使った解釈の一例をご紹介します。

まず、掲載データでは、10種類の単波長LED毎の反射スペクトルと6500Kの自然光LEDの反射スペクトルを基として、それを反転した単純な吸収スペクトルを例に挙げてますが、以下のようにより厳密な吸収スペクトルを算定することも可能です。

6500K光源スペクトルと反射スペクトルから吸収率を導き出す

トレースが大変ですが、計算自体はエクセルで簡単に得られます。
吸収率スペクトル = (1 - 反射スペクトル÷6500K光源スペクトル)[400-700]
これをグラフ化すると、以下の緑色のスペクトルが得られます。
これぞ、このトゲサンゴの吸収スペクトルです♪

6500K光源とトゲサンゴの反射スペクトルから算定された吸収スペクトル

試しに、Advanced Aquaristの有用な記事 Feature Article: Coral Coloration, Part 5: Non-fluorescent Chromoproteins (CP-480 to CP-562) から、似たようなピンク・赤系のクロモプロテインの吸収スペクトルを拝借して重ねてみると、、、

トゲサンゴの吸収スペクトルと、近似サンゴのクロモプロテイン

特にCP-560 PINK ハナヤサイと良く一致してるのが判りますね。

まだ僕の蓄積している実測データは少ないですが、それでも吸収スペクトルのピークにはある程度の傾向が見られ、例えば他のブルーやバイオレットなどのクロモプロテインの吸収ピークは大抵アンバー(橙580nm)前後にありますが、トゲやフトトゲなどの赤系は黄緑560nm前後に吸収ピークがありました。これによって、照明の向き不向きも考察することができるでしょう。

例えば、以下のように照明のスペクトルを重ねてみると、、、

トゲサンゴの吸収スペクトルと、各照明のスペクトル

吸収ピークの560nm自体は、いずれの照明でもカバーされていることが判ります。
あとは、スペクトルの全体のバランスが重要になります。

例えばこのトゲの場合でも、相対的に緑より青が多ければ緑の波長を補完すべく蛍光グリーンが発動しやすく、また青系の波長はカロテノイド(褐色系)も促進しちゃう可能性が大です。そう言う意味では、トゲに関しては蛍光灯の3波長はうまくマッチしていますね。フルスペの場合でも、青少なめ・白多めを推すのは、こうした理由からです。ま、今はXPが出たので容易にはなりましたが。。。

よく勘違いされることですが、こうした吸収スペクトルは絶対的要求の特性では無く、あくまでも波長に対する受容性としての特性です。要するに、波長毎にどれくらい窓口を広く開けているかの度合いのようなものです。トゲのような色素系はまだ解釈しやすいですが、特に蛍光タンパク系は蛍光と色素が複雑に絡み合って光合成を構成しているので、下手に吸収スペクトル通りに波長強度を与えると蛍光の褪色や消失に繋がる場合もありますから、反射・吸収・蛍光すべてに通して入念な考察が必要になってきます。

さて、このトゲの場合、広くは400nm~420nmと、520nm~590nm、そして670nm~680nmに吸収ピークがあることが読み取れます。今となっては言わずもがな、「トゲ・ショウガ・ハナヤサイのピンク維持には中域の波長を!」と言うのは、この特性からもよく理解できますね。当時は海藻のフィコビリン系色素の要求をサンゴに当てはめて導き出した答えでしたが、まさか遂に自分で実測しちゃう時代が来ちゃうとは。。。曝
また、680nm前後の要求にしても、クロロフィルの赤側の特性なので納得ですね。

でも、ひとつ気になるのは、、、400-420nmの要求?

これはまだ多くの検証データが必要ですが、今のところ僕の予想では、例えばブルーベリーやナスでお馴染みのアントシアニン色素の色度増強をUVAの紫外線が促進していることからも判るとおり、UVAは色素を濃くする傾向を持つと考えられます。同じ赤系のハナヤサイやトゲでも、自然下では一律の色度(濃度)では無く、明るいピンク以外にも、濃い赤、パープル寄りの赤など、バリエーションが豊富なのも頷けます。実際、これらのサンゴは強いUVAに晒される超浅場に多く生息するため、色素を濃くして紫外線から身を守るべく、こうした作用が働く訳です。そうした自然本来の色度を維持するためにも、自然下同様の紫外線量は非常に重要であると言える訳です。

もし、濃い赤も濃い紫もみんな薄いピンクになっちゃう方は、UVも疑ってみてください。

ちなみにすべての答え第一弾には、

  1. ストロベリー・ピンク
  2. ストロベリー・グリーン
  3. スパスラタ・バイオレット
  4. スパスラタ・グリーン
  5. スギノキ・ブルー
  6. ユビ・ブルー
  7. トゲ・ピンク
  8. フトトゲ・ピンク
  9. ハイマツ・オレンジ

を収容しています。
トゲのようにリクエストが増えたら、また奮発したいと思います♪
なお、すべての答えはそろそろ第二弾にも取りかかりたいなぁと考えています♪

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