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雑学2.炭素循環と光合成

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(将来のコンテンツのための雑学メモ 2.)

前回までの雑学

炭素循環

炭素循環には、比較的サイクルの短い生物学的反応によるものや、何万年規模の周期を要する地核的な循環が挙げられますが、ここでは地核的循環やメタンハイドレート、温暖化問題等の話題は割愛し、短期的な生物学的循環について触れていきます。
また、サイトの性質上、マリンアクアリウム寄りの内容となるため、陸生の代謝については省略している場合があります。

短期的な炭素循環には、海洋による放出と吸収の他、生物の呼吸(放出)と光合成による固定(吸収)が挙げられます。

生物の呼吸によって放出された二酸化炭素は、まず一次生産として多くの光合成生物によって取り込まれ、次に高次消費者らによって摂取され、物質が移動していきます。それはいずれ排泄物や遺体となって、最終的には微生物によって水と二酸化炭素に分解され、炭素は循環していきます。

炭素を固定する生物の代謝反応には、主に植物や藻類、シアノバクテリア、光合成細菌による光合成と、細菌による化学合成が挙げられます。

炭素の固定

●光合成

光合成生物のうち、植物や藻類、シアノバクテリアは酸素発生型の光合成を行いますが、その他の細菌による光合成では酸素は発生しません。

全ての光合成生物はクロロフィル:葉緑体(細菌ではバクテリオクロロフィル)と呼ばれる光合成色素を持ち、この色素により光エネルギーを化学エネルギーへ変換します。
クロロフィルは構造により、a(緑)、b(黄緑)、c(青緑)、[d,e] のタイプに分けられ、多くの光合成種が主要色素のクロロフィルaを持つ他、植物はクロロフィルbを、藻類はクロロフィルcを補助色素として併せ持つ場合が多いようです。
クロロフィルaの光の波長吸収特性は、主に青と赤にもっとも大きなピークを持ちます(クロロフィル自体の色素に由来)。また、クロロフィル以外の光合成色素には、カロチノイド(黄~褐色)やフィコビリン(青、赤)があります。

例外を除き、すべての光合成ではカルビンサイクルが用いられ、1回転あたり1分子の二酸化炭素を固定します。

光合成による反応回路
明反応 光化学系 I (PS I) 12 H2O + 12 NADP+ + エネルギー → 12 NADPH + 12 H+ + 6 O2
光化学系 II (PS II) ADP + Pi + エネルギー → ATP
暗反応 二酸化炭素固定 6 CO2 + 12 NADPH + 12 H+ + ATP → C6H12O6 + 6H2O + 12NADP+ + ADP + Pi
カルビンサイクル 12 H2O + 6 CO2 + エネルギー → C6H12O6 + 6 O2 + 6 H2O

NADPH:還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸 (還元力)

ATP:アデノシン三リン酸 (エネルギー)

光合成生物による炭素固定回路
植物、藻類、
シアノバクテリア
カルビンサイクル
還元力にはNADPH2(水)を利用
(海洋では主に炭酸脱水素酵素により炭酸をCO2源とする)
光合成細菌 紅色硫黄細菌 カルビンサイクル
還元力には硫化水素等の硫黄化合物を利用
緑色硫黄細菌 還元的TCA回路(TCA回路[クエン酸回路]の逆回転)
還元力には還元型のフェレドキシンを一部利用
紅色無硫黄細菌 炭素源に有機酸(乳酸等)や有機物(イソプロパノール等)、還元力に水素を利用し、ブドウ糖を生成
緑色無硫黄細菌

紅色硫黄細菌: クロマチウム属/Chromatium (バクテリオクロロフィルa,[b])など

緑色硫黄細菌: クロロビウム属/Chlorobium (バクテリオクロロフィルa,c,[d,e])など

紅色無硫黄細菌: 嫌気性光合成従属栄養性 (暗条件下にて好気的従属栄養性)

緑色無硫黄細菌: 嫌気性光合成従属栄養性 (好気下にて好気的従属栄養性)

●化学合成

化学合成独立栄養細菌は、無機物またはメタン等を酸化して得たエネルギーを用いて、二酸化炭素を固定します。
またメタン発酵では、嫌気的環境にて二酸化炭素と水素または酢酸等を用いてメタンを生成します。

化学合成生物による炭素固定回路
亜硝酸菌 カルビンサイクル (還元力は必要としない)
2 NH3 + 3 O2 → 2 HNO2 + 2 H2O + エネルギー(炭素固定)
硝酸菌 カルビンサイクル (還元力は必要としない)
2 NO2 + O2 → 2 NO3 + エネルギー(炭素固定)
無色硫黄細菌 カルビンサイクル (還元力は必要としない)
2 H2S + O2 → 2 S + 2 H2O + エネルギー(炭素固定)
2 S + 3 O2 + 2 H2O → 2 H2SO4 + エネルギー(炭素固定)
メタン細菌 二酸化炭素を炭素源、水素を還元力に炭素固定
CO2 + 4 H2 → CH4 + 2 H2O

亜硝酸菌: ニトロソモナス属の Nitrosomonas europaea など

硝酸菌: ニトロバクター属の Nitrobacter winogradskyi など

無色硫黄細菌: チオバチルス属/Thiobacillus、ベギアットア属/Beggiatoa、チオプローカ属/Thioploca など。上記反応式は Thiobacillus thiooxidans による

メタン細菌: メタノコッカス属/Methanococcus、メタノバクテリウム属/Methanobacterium、メタノロバス属/Methanolobus など

炭素の分解

一方、炭素が大気に開放される反応は、生物の呼吸以外には、微生物による分解やメタン資化などがあります。
生物の排泄物や遺体は、様々な分解者によって細かく解体され、最終的には多くの微生物によって無機分子(水と二酸化炭素)にまで分解されます。
メタンの資化では、メタン細菌によって生成されたメタンが、メタン酸化細菌によって二酸化炭素に再酸化されます。

メタン酸化細菌: メチロモナス属/Methylomonas、メチロバクター属/Methylobacter、メチロミクロビウム属/Methylomicrobium など

参考: 環境微生物学、海洋微生物の分子生態学、
クロロフィルカルビン回路光合成色素硝化細菌

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海水サイト評価低迷

先月から今月に掛けて、ちょいちょい更新されてきたGoogleページランク。最近は微調整も含めると、結構頻繁に更新されているようです。
特に今月初旬のメジャー更新では、あちこちから「下がった!」とか「無くなった!?」なんて声も多く聞かれましたが、僕んとこは特に変化もなかったので、「ふーん」くらいに思っていました(汗)

が、先ほどリーフリングのリンク切れ定期チェックをする際に、そう言えばメンバーサイトのページランクはどうだろう?と思い、久しぶりに全メンバーサイトのPR抽出結果を眺めてみてびっくり!?

ページランク PR5 PR4 PR3
2009/07/08 0サイト 1サイト 7サイト
2008/09/27 1サイト 4サイト 34サイト
2008/07/27 0サイト 3サイト 23サイト

過去のログと比べても一目瞭然。全体的にすごい下がりようです!
ま、ページランクが下がっているのは海水業界だけでは無いと思うけど、それにしてもなんでまたこんなに下がったんだろう?

更に詳しく調べてみると、どうやらここ数年更新されていないサイトはテキメンに下がってるようです。それもゼロとか無しに。中には、つい最近まで3だったサイトでさえ、突然ゼロになっているサイトもありました。お・恐ろしい。。。
また、長らく4や3を維持してきた古参サイトでさえ、3や2に下落しているようです。例え更新がそこそこあってもです。

これはもう、被リンクやサイト年齢だけで安泰と言える時代は終わったんだろうなぁ、と言う印象を受けました。まあ、Googleのアルゴリズムも年々変わってきてますし、評価基準や方法もより洗練されてきたのでしょう。更に、検索結果のクリック率やサイトのトラフィックなんかも見てるのかも?

でも、まだやっぱり腑に落ちない評価が与えられたサイトはいくつもあります。それもそのうち相応の評価に行き着くんでしょうねぇ。。。

不本意に落ちた方、ガッカリしないで前向きに。
ホッとした方、油断は禁物です。

念のため、現時点でのリーフリングメンバーサイトの全評価分布です。

PR5 PR4 PR3 PR2 PR1 PR0 PR-
20089/07/08 0 1 7 82 92 17 58

こりゃ、モチベーション下がるだろうなぁ。。。まさかDさんやGさんまで下がるとは。。。

ま、僕も人ごとじゃないので、そのうち連鎖的に下がる可能性は大ですね。リンク貰ってる多くのサイトが下がってる訳ですから。イヤぁ~っ。

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雑学1.サンゴと共生藻

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(将来のコンテンツのための雑学メモ 1.)

サンゴ礁を形成するサンゴの仲間は、活動に必要なエネルギーの大部分を、体内に共生する渇虫藻の光合成産物から得ています。
この渇虫藻は、シンビオディニウム・ミクロアドリアチカムSymbiodinium microadriaticum Freudenthal, 1962)という光合成型渦鞭毛藻で、主にサンゴに共生することで知られる渦鞭毛藻の仲間です。
また、ミドリイシのような造礁サンゴからソフトコーラルまで、光合成をする多くのサンゴに共通する共生藻と言われています。
(尚、これらの共生藻には、近年の研究で複数の遺伝子型が存在することが判明した)

この共生藻は大きさが 10μm 程度の球体で、サンゴの体内では 1mm3 あたり約 30,000 個ほどが活動しています。
一方で、高水温や光の影響によりサンゴの体内から放出された際には、通常の渦鞭毛藻と同様の特徴である 2 本の鞭毛を備えます。
ちなみに、この時の渇虫藻の離脱が著しい場合には、世に言うサンゴの白化現象となりますが、環境が改善されれば渇虫藻は再びサンゴに取り込まれ、活動を再開します。
(7/11追記:サンゴの白化は渇虫藻の離脱ではなく脱色だと言う新たな報告もあるようです。by TAKAさん情報)

以下のデータは、放射性同位元素 14CO2 を用いてハナヤサイサンゴから得られたエネルギー収支の調査結果です。

J:ジュール 渇虫藻の光合成エネルギー1日あたり
渇虫藻の全生産量 250.7J 100%
用途 渇虫藻の成長 0.22J 0.1%
渇虫藻の呼吸 24.6J 9.8%
サンゴの成長 2J 0.8%
サンゴの呼吸 103.6J 41.3%
体外へ放出 120.3J 48%

海洋微生物の分子生態学入門より

サンゴから放出された無固多糖類(グリセリン、グリコース、アミノ酸などの光合成産物)は、魚類や甲殻類等の生物の栄養源となります。また、サンゴへの堆積物、環境の急変などの外的要因(ストレス)によっても、防御反応として放出される場合があります。

サンゴのエネルギー源 100%
摂取 渇虫藻の生産物 (炭素源) 70%
動物プランクトン (窒素源) 17%
溶存態有機物、細菌 (リン等) 13%

サンゴは必要なエネルギーの約 70% を渇虫藻から得ていますが、その中には石灰化に必要な有機物の生成に関与する成分も含まれおり、これは造礁サンゴと渇虫藻が強い共生関係にあることを示唆します。
その他にも、動物プランクトンや細菌、溶存態有機物など、約 30%  を自身で直接取り込んで利用しています。

参考:海洋微生物の分子生態学入門

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