(将来のコンテンツのための雑学メモ 3.)
前回までの雑学
サンゴの白化現象
光合成をするサンゴの体内には、渇虫藻と言う渦鞭毛藻の仲間が共生しています。
サンゴはその共生藻からの栄養を使って炭酸カルシウムを形成し、成長していきます。
この代謝は両者に最適な環境下でおこなわれ、光が強すぎたり水温が高くなると、活動が抑制されます。
環境が改善されない場合、共生藻が光合成色素を失ったり、あるいはサンゴから排出されることによって、共肉が透き通り、白い骨格が浮き彫りとなるため、俗に言うサンゴの白化現象となります。
白化したサンゴは、渇虫藻からの栄養が得られなくなるため、そのまま回復できなければ斃死が待っています。
白化のメカニズム
サンゴの白化現象は、サンゴ本体と渇虫藻のそれぞれの代謝と連携して起こります。
白化のきっかけは、高水温によるストレスを受けることから始まります。
種によって温度の耐性は様々ですが、全般的にサンゴ本体より渇虫藻の方が高水温には弱いようです。
まず、渇虫藻は高水温により光耐性が低くなり、通常の光環境ですら光阻害が起こり始めるため、光合成回路に支障をきたすようになります。
またサンゴ本体は高水温により、炭素固定回路(石灰化)が機能低下に陥ります。
この条件で光合成を開始すると、炭素固定回路で消費するはずだったエネルギーが行き場を失い、酸素と結びついて活性酸素を発生させ、より渇虫藻の損傷や破壊を招く悪循環となります。
渇虫藻の損傷が著しいと、細胞が破壊されたり、光合成色素を失って透明になったり、さまざまな変性が渇虫藻に見られるようになります。
勿論、症状が進行するほど、光合成能は低下し、最終的には機能を失います。
この時サンゴは機能維持のため、初期の段階では、損傷を受けた渇虫藻を優先的に体外へ排出しますが、環境が改善されず被害が著しくなる頃には、サンゴ自体も制御に支障をきたし、渇虫藻の損傷の有無に関わらず、渇虫藻の排出に暴走傾向が見られるようになります。
ここまで来ると、比較的早期にサンゴは白化してしまうようです。
サンゴが何をきっかけに渇虫藻をコントロールするのかハッキリとは解明されていませんが、主に活性酸素の発生や渇虫藻からの栄養供給の低下などが考えられます。
また、種によっては白化から回復する能力に長けたものも見られ、如何にすばやく炭素固定回路を復旧させ、活性酸素の発生を抑制できるかが鍵となっているようです。
ちなみに、白化したサンゴに直接バイオマスを与え、渇虫藻の生産物の代替えが可能かどうかを調査した報告もあります。
一方で、先日のサンゴ白化に新データ 褐虫藻「排出」ほぼなしと言う記事もあります。
但しこの記事はとても判りづらく、調査結果を正確に評価できないため、研究機関からの発表を基に慎重に判断する必要がありそうです。
参考:沖縄科学技術振興センターのサンゴの研究の各研究報告書
現在までに各機関から報告された調査結果等を基に、僕の浅知恵で解釈した白化のメカニズムです。なるべく専門用語を避け、判りやすさを重視しています。
また、サンゴの白化現象後の斃死も含め、サンゴ体表の共肉が消失した死骸の状態も「白化」と表す場合がありますが、ここではあくまでも渇虫藻の変異・排出により共肉が透き通って白色個体となった状態のみを「サンゴの白化」として扱いました。
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