たいへん長らく間が空いてしまいました(汗)
ようやくVMワラワラ実験の経過報告です。
ちなみに過去のVMワラワラ実験の記事は、VMワラワラ実験のタグを辿ってください。
まず、今回のVMワラワラ実験の経過は以下の通り。
日付 |
炭素源 |
備考 |
2009/10/05 |
37%ウォッカ70倍希釈液を1ml添加。
50%みりん95倍希釈液を1ml添加。 |
本当は各0.1ml添加のはずが間違えて10倍の1mlを添加してしまったため、以降添加無しで監視することに。 |
2009/10/06 |
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24時間で鞭毛虫がかなりの増殖を見せる。 |
2009/10/07 |
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2日目よりも更に凄い密度で増殖中! |
2009/10/08 |
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3日目と密度はさほど変わらず。大型生物が目立つ。 |
2009/10/09 |
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2009/10/10 |
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2009/10/11 |
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2009/10/12 |
↑ |
↑ |
2009/10/13 |
この間ずっと無し |
この間ずっと放置(^^; |
2009/10/14 |
↓ |
↓ |
2009/10/15 |
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2009/10/16 |
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2009/10/17 |
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2009/10/18 |
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2009/10/19 |
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2009/10/20 |
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2009/10/21
(本日) |
ウォッカ70倍希釈液を0.1ml添加。
50%みりん95倍希釈液を0.1ml添加。 |
大繁殖していた鞭毛虫は皆無。炭素源の枯渇により消滅したものと思われる。
本日より毎日各0.1mlの添加を開始。 |
まあ♪ なんて無駄な表かしら(汗)
ま、要するに、炭素源の添加は初日に入れた規定量の10倍濃度のみで、それ以降は何も添加せずに放置していたと言うことです(苦笑)
で、本日のウォッカ層、みりん層のワラワラ検鏡結果は以下の通り。ちなみに、恐らくデトリタスの分解が進んだせいか、ウォッカ層もみりん層もデトリタスが全て細かな粒子状になってしまっていて、抽出にてこずりました(笑)
検鏡の結果、ウォッカ層にもみりん層にも、あれだけ大繁殖していた鞭毛虫の姿は、既にありませんでした。散々探して数匹程度、あとは線虫ばかりでした(ちなみに、みりん層には例のツチノコ君をまた発見しました。みりん好きなのか? 動画参照)。
ま、本当は減っていく経緯も観察したかったんですが、バタバタしてて。。。(汗)
で、昨日の時点では、もはや完全に実験前の穏やかな海の状態に戻っていました。
さあ、考えよう♪
まず、細菌・微生物による炭素源の消費は非常に速やかに行われるため、継続的添加がなければあっという間(数時間~数日程度)にワラワラが消費し尽くしてしまうと言えるようです(これらの増殖速度は植物の細胞分裂の速度の比ではありません)。今回の初期の監視でも、10倍濃度の誤添加だったにも関わらず、4日目の増殖率が3日目とほとんど変わらなかった事からも、消費から飽和への移行速度が非常に短時間だったと言う印象を受けました。
また、炭素源が枯渇してしまうと、それ以上ワラワラが増殖することは出来ず、むしろ速やかに消滅の一途を辿るようです。もちろん、高次消費者による捕食によっても減少は加速しますが、低次生産者の消滅により、それらの消滅も時間の問題と言えます。
このことからも、如何にワラワラ(に限らず生命)の活動にはC:N:P比(レッドフィールド比)が大きく関係しているのかが読みとれます。窒素やリンだけがどんなに存在していようとも、炭素源が無ければそれらを利用し活動することが出来ないと言うことです。
ちなみに、微生物の世界での平均的なC:N:P比は、106:16:1と言われています(動物プランクトンが103:16.5:1、植物プランクトンが108:15.5:1、日本実業出版社/海洋の仕組みより抜粋)。僅かな窒素と微量のリンを処理するために、如何に相当量の炭素源が必要であるのかが判りますね。
また、もう一つの考察として、ワラワラの増殖中に於ける窒素(今回は試薬がないのでリンは割愛)の濃度の推移も、実は見ていました。
事前の仮説では、例えスキマーによるワラワラの回収が無くとも、増殖中のワラワラが窒素を取り込んでいる期間、死滅による流出さえ無ければ、相対的に飼育水中の窒素濃度は下がって見えるはず?、と言うモノ。
で、思ったような結果が得られなかったので公開はしていませんでしたが、実験開始時とワラワラ増殖4日目のピーク時に、ウォッカ層・みりん層それぞれの硝酸塩濃度を調べてありました。
結果は以下の通りです。
はい。そもそも濃度が高すぎて比較になりません(苦笑)
もっと感度の高い試薬で、且つ低濃度時の推移として観察しないと、その違いを掴むのは難しいようですね(^^;
また、試薬測定時のサンプルの中にもワラワラが含まれてしまう可能性も考えられます。あくまでも目で見える範囲では水中よりもデトリタスに多く分布していたとは言え、見えない範囲の部分については図り知れません。
よって、本日からは毎日規定量の炭素源を投与し、継続的にワラワラをガンガン増殖させた上で、頃合いを見計らって、高レベル測定により何とかして違いを捻り出してみようと思います(笑)
とは言え、C:N:P比のこともありますから、窒素量の変化にまで影響が及ぶには、トータル的に相当量の炭素源の投与が必要になるでしょう。逆に言えば、ちょっとやそっとの炭素源には左右されないとも言える訳です。だって、炭素源を106入れた頃に、やっと窒素が16、リンが1処理される訳ですからね♪
しかし皮肉なことに、海洋ではもっとも不足しているのが窒素やリンです。このことからも水槽って凄く過酷な環境だなぁと思い知らされますね。海洋の考察を水槽に当てはめる際には注意が必要です。
今、巷で流行している炭素源投与による低栄養塩の実現には、規定量の連続的な炭素源の投与はもちろんのこと、炭素源により窒素やリンを吸収した微生物群を如何に効率的にスキマーで回収できるかが鍵となります。ある程度の試行錯誤は興味が尽きませんが、あまりに脱線するのは危険ですので、特にメインタンクで直接実戦されている場合には注意が必要です。実際に皆さんが几帳面なくらい炭素量をシビアに測って実施しているのも、あながち大げさではないのです。それも生体への愛の証♪
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