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懲りずに書いてみたりする結果オーライな日記

ウラウチ?ウチウラ?

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先日、新種ヤドカリのウルマエビスヤドカリについて投稿した際のことです。

記事の最後の方で、ウチウラエビスヤドカリのことを引き合いに出しました。素直に似てるなぁ、と思ったからです。そして名前を打ち込み終わって、ふと名前を見渡したとき、それは起こりました。

ゲシュタルト崩壊っ!?

気を抜いていたせいでしょう。軽~くあっさりと術中に落ちました。
えっと、えぇ~っっと、、、

あのヤドカリって、こんな名前だっけ???

そのうち、「ウチウラ」と付いたエビスヤドカリ自体、何それ? と言う気になってきました(笑)
しかもよく見たら、超ヤドカリ図鑑ではウラウチに。。。(汗)
挙げ句、ウチウラなのかウラウチなのかも定まらない有様。
不安になり、図鑑を漁るも、エビスヤドカリ属自体、載ってません。
いや、そんなはずはない。確かエビスヤドカリは何かしら文献から拾い出したはずだ。でも思い出せない。。。

あ。論文かも。

論文

で、論文をひっくり返す。徹底的にひっくり返す。が、やっぱり無い。
途方に暮れて、Google先生に聞いてみた。

“ウチウラエビスヤドカリ”の検索結果 31 件
“ウラウチエビスヤドカリ”の検索結果 12件

なんと!? 別の問題発覚っ!
超ヤドカリ図鑑のせいなのか、ウラウチが浸透しているっ!(大汗)
あぁ・・・。深みへ落ちていく。。。
その時、エビスヤドカリ属の各種名を眺めていて、ハッと思い出した。

あ。エビスヤドカリは朝倉先生じゃん!

そうでした。エビスヤドカリ属のほとんどの種は朝倉先生が記載者です。それに以前、Catapagurus ⇔ Hemipagurus と言う事件も(汗)
で、昔、朝倉先生がコラムを書いていた生物研究社のAQUA BIOLOGYと言う冊子をひっくり返したら、あぁ、見つけましたよ。2002年10月に刊行されたNo.142の449Pです。エビスヤドカリ特集です。

AQUA BIOLOGY No.142

表記が全てウチウラエビスヤドカリになってるんですが・・・(汗)

記事中の種名に関する印字は全てウチウラになってます。記載者本人が間違えるはずありません(汗)
あぁ、何と言うことでしょう。。。

どうやら、超ヤドカリ図鑑のデータベースを作成した当初、種名をピックアップする段階でウチウラとウラウチの誤植があったようです。と言うわけで、これまで超ヤドカリ図鑑を参考に、ウラウチエビスヤドカリ、と覚えられた皆さんすみません。ウチウラエビスヤドカリに訂正してください。宜しくお願いいたします。

(当サイト上の表記は全てウチウラに訂正させていただきました)

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ウルマエビスヤドカリ/Catapagurus insolitus

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ヤドカリの新種情報です。
エビスヤドカリ属に新種が追加されました。

ウルマエビスヤドカリ/Catapagurus insolitus Komai & Osawa, 2009
(まだ未経験なので写真等のデータはありません)

先日、千葉の駒井先生から本種の記載論文を頂きました。
最近の論文には模式標本以外にも、標本写真や生態写真なども織り込まれ、英語の苦手な僕としても大変有り難いことであります(苦笑)。またこれは、より先生方の労力となっていることでしょう。本当にご苦労様です!

全ては書き出せないので(と言うか読めないので)、要約や標本情報から、軽く紹介したいと思います。

本種は、形態的には
コスゲエビスヤドカリ/Catapagurus kosugei (Asakura, 2001)
に極めて近似であるとのこと (この種自体、僕は未体験ですが)

また、本属としては希な特徴として、第二触角の触角棘(antennal acicle:基部が変形して棘状に分岐したもの)に複数の棘を備えているそうです。確かに模式標本からもその複雑な棘の様子がうかがえました。ちなみに、この触角棘の部位については、例えばヒメヨコバサミ属あたりが良く発達しているので、該当部を参照すると判りやすいと思います。

標本データによれば、ホロタイプは沖縄県名護市の水深10Mからナイトダイブにより2009/2に捕獲された甲長1.8mmの雄の個体で、パラタイプには雌雄合わせて11体が登録、いずれも沖縄県恩納村の水深10M前後からナイトダイブ(一部海底洞窟)により2003年に捕獲された甲長1.8mm~3.2mmの個体群です。

生態写真を拝見すると、形質的には僕も以前観察したことのあるウチウラエビスヤドカリのような印象です。 ただ、色彩はもっと繊細で、全体が白くやや透き通った体を持ち、さらに各脚の基部に純白のラメをちりばめたような、大変美しい装いのヤドカリです。

写真を見せられないのが辛い~っ。。。

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ツノヤドカリ講座

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ツノヤドカリの仲間は、僕がもっとも大好きなヤドカリです。 何が可愛いって、自ら砂に埋もれて呆けている様が、なんとも愛くるしいではありませんか。

Diogenes pallescens Whitelegge, 1897 / 和名未定

Diogenes pallescens

この子はまだ和名がありませんが、日本でもかなり古くから知られていて、且つ謎の多いヤドカリとも言えます。

自然下では、穏やかな泥地を特に好み、いつも泥だらけで活動しています。とは言え、タイドプールや磯場、さらにはダイビングで潜るような水深でも比較的普通に見られます。

サイズは小型で、大きくなってもせいぜい小指の先ほどの殻を背負う程度のサイズです。性格は穏和で動作ものろく、捕らえても殻の中に隠れようともせず、とても反応が鈍い感があります。

尚、同種に極めて近縁の不明種も、同様の環境から見られることもあります。その他、精査でも同定が困難な形質のものも多く、僕らの間でもそれらを一括りにして同種として扱うケースがほとんどです。

水槽ではあまり人工飼料にも餌付かず、ほとんどは砂粒をカリカリ囓って、表面のコケを摂取しているようです。しかし、その割にかなり長寿なので驚きです。砂の撹拌や砂粒磨き係としても、僕のオススメのツノヤドカリです。

Diogenes nitidimanus Terao, 1913/テナガツノヤドカリ

Diogenes nitidimanus/テナガツノヤドカリ

僕自身は今年になって初めて自然下で観察しましたが、やはり海水浴場のような砂浜の浅いポイントに多く見られるようです。

サイズ的には少し大型になりますが、それでも貝殻サイズでせいぜい500円硬貨大くらいでしょうか。上記の D. pallescens に比べると機敏で、危険を察知すると即座に殻に籠もるか、後ずさりでピョンピョン跳ねて逃げ回るような性格です。

本種はツノヤドカリ特有の羽根状の第二触角を持ち、まるでレーダー探知機のように器用に水流に対向させ、漂ってくる懸濁物やプランクトンを捕らえているようです。

テナガツノヤドカリの第二触角

写真から判るように、水流を受け止めるような向きで、触角鞭を上手に操ります。一見、水流の抵抗で逆向きにしなりそうな印象があるのですが、何か構造的に理屈な仕組みで構成されているのでしょうか。とてもプロフェッショナルでクールです♪

但し、水槽では本来の栄養摂取が不足しがちで、長期飼育は難しいかも知れません。色々与えてみて、好みを見つけると良いでしょう。僕の経験では、通常の甲殻類向け飼料はあまり興味を示しませんでした。プランクトンリッチな水槽が長寿の秘訣かも?

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