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サンゴのカラーマネージメントを考える

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アクア業界にも、かれこれLEDが普及し始めて久しいところですが、その一方で益々顕著化してきた問題があります。それはLEDによるサンゴの色揚げの難しさでしょう。
あ・・・いえ、それ以前にLEDによる飼育自体の困難さが浮き彫りになっている、と言った方が正しいでしょうか。。。
ブルー光を当てれば蛍光色が綺麗♪ と言う補助ランプ時代の話はおいといて、昨今のLEDによる白色光源での本格的なサンゴ飼育に関しての問題提起です。

巷ではLEDに関する様々な情報が飛び交っています。LEDで色揚げはできる、できない、水草は飼える、飼えない、どれを信じて良いのか悩ましいところでしょう。しかしこれらの情報は、そもそも検証している環境が統一されていません。LEDとは言っても、古い砲弾型のランプでの話だったり、LED電球での話だったり、スポットだったり、大光量システムライトだったり、それらを同じ土俵で比べても仕方の無いこと。混乱するのも無理ありません。

現状では、大光量システムライトなら、ある程度の波長への取り組みもあり、仮に波長に不足があっても大光量ゆえの最低値の嵩上げが得られる分、まあ無難に飼育は可能にはなってきています。max-s、Vertex、eco-lampsで成功者が多いのもうなづけます。
しかし、スポットをいくつか並べた程度では、なかなか目標の照度は得られず、配光のムラ、波長の欠落も顕著になりがちです。その域でLEDでの飼育難度を評価してしまうことは、非常に危険と言えます。僕も含めてね(笑)

と言う訳で、今回はそれらの成功も失敗も踏まえた上で、もっと根底にあるLEDの根本的な問題について考えてみたいと思います。

振り返ること20世紀末。当時僕らのご用達はメタハラでした。
メタハラでさえあればミドリイシが面白いように飼える!
と言っても過言ではありませんでした。
超浅場マニアなら6500K~10000K、そしてベストセラーのスーパークール、コーラルグロー、アストロビーム。。。どれも高次元なサンゴ飼育には欠かせない必須アイテムでした。

そして21世紀初頭。時代はメタハラからLEDへ♪ ・・・かと思われました。
しかし。。。何故かメタハラの時のような、手離しの楽園は見える兆しがありません。。。

足りないのは光量か!?
ビーム角が悪いのか!?

確かにそれも重要です。
あの照りつける眩い太陽光を浴びて活動するサンゴに対し、LEDはまだまだ非力です。
また、それを補うためのレンズを見ても、ビームの絞りすぎはピンポイントに極端な光量差を生み、サンゴにとってはストレス・光障害の原因になります。
しかし、もっと根本的な、無視することの出来ない、非常に重大な問題があります。

それが、スペクトルの欠落です!

どうしてメタハラ時代はサンゴがモリモリ飼えたのか?
まず、メタハラのスペクトル分布図を見てみましょう。

メタハラのスペクトル

色温度こそ違えど、実は可視光線は勿論のこと、UV~赤外線まで、およそ太陽光を再現するための波長が、メタハラでは一式揃っているのです。

しかし、LEDはどうでしょうか?

LEDのスペクトル

現在流通するアクアLEDの大半が、一般白色LEDとブルーLEDを、ただ組み合わせただけのものです。UVや赤外線は困難としても、可視光線すら満足に再現できていません。青420nm以下の紫色、500nmのシアン、600nm以降の赤、足りないものばかりです。
しかも、メタハラは光束が大きいので、仮に150Wなら全光束は優に10,000lmオーバーですが、もしLEDで10,000lmを確保しようと思ったら、Cree XP-G 139lm/Wの場合でも、1W駆動時で約72素子(72W)、3W駆動時で約42素子(126W)が必要になります。
うん、そう、ノーブランドなら大変な量が必要になりますね(汗)

しかし、問題はもっと複雑です。満遍なく波長が含まれたメタハラの10,000lmと、LEDの偏ったスペクトルの10,000lmでは、LEDの欠落した波長の光束最低値と、メタハラでの該当波長の光束とを比較すると、その光強度には雲泥の差があります。
例えば、メタハラ10,000lm時のシアンの放射束強度が余裕で200lm/5nmあったとしても、一般白色LEDでのシアンは100lm/5nmにも満たないでしょう。。。そう、その最低値をメタハラ並みに確保すべく、全光束を倍の20,000lm用意しても、不足波長強度はまだ足りないのです。なんと言うイケズ。。。

波長って、そこまでシビアに必要なの?

では、いつもの海洋性光合成色素の各要求波長を見てみましょう。

このグラフにあるような代表的な種だけで見ても、およそ海中のスペクトルに合わせて可視光線の全域に渡り波長の要求が見られます。特に紫~青・シアンに掛けては複数の光合成色素が競合しており、その波長の重要性が伺えるでしょう。ただ、このうちシアンについては、先日リリースされたLeDio 21e PearlWhiteにより、シアンカバー率相対値4割を確保したスペクトルが実現されたため、まずは道は開けたと言えるでしょう♪

しかし、問題は青以下の紫色、そしてUVの補完です。幸いUV 400nmについては、ボルクスジャパンが2009年に400nm入りLeDio 9をリリースしたことで、ある程度はサンゴの要求を満たすことができるようになりました。しかし、400nm以下と420nm前後については、まだこれをカバーできる製品が流通していません。当面は、UV 400nmと青RoyalBlue 450nmをテンコ盛りにして、420nmの最低値を嵩上げするしか方法がありません。。。

また、クロロフィルabの赤側の要求やフィコシアニンの要求にも、一般白色LEDは満足に応えられません。赤の絶対的な光強度不足です。しかも600nm前後だけならまだしも、650nm以降の波長となると、それを満たすLED素子がなかなか存在しません。
しかしご安心ください。電球色LEDを混合することで、その蛍光体により赤側の発光強度が700nm近くまで得られるため、およその要求を満たすことが可能になります。今回の新LeDio 21eでは、積極的に電球色LEDを採用(CB/AB/PW)しており、赤も安心なスペクトルと言えますね。

ちなみに、赤の色素フィコエリトリンは緑~黄色の波長を利用していますが、この帯域は一般白色LEDが最も多く含んでいる帯域(比視感度を優先したLEDなので当然です)なので、敢えて緑やアンバーのLEDを補完する必要はありません。

今思い出してもハッキリと覚えています。
当時、レイシーの6500K(イワサキ)からabの10000Kに変更し、それでもいまいちと思い、当時の師匠の故松本氏に勧められ、スーパークール・マリンブルーを足した時のことです。浅場のミドリイシのいくつかがスイッチが入ったようにモリモリと成長し始めたときのことを。。。
さほどスペクトルに違いの無いメタハラ同士で、何故これだけの差が生まれたのか。これらのいずれも波長の欠落は無いのにです。勿論光量の違いもありますが、スペクトルを比較して気づいたことは、スーパークールはまさに海中のスペクトルバランスを忠実に再現していると言うことです。青の強さ、シアンの強さ、赤の強さ、肝心なのはバランスです。どれかひとつ強度が変わっても、生体の感受性・生理に大きな影響を与えるのでしょう。我々人間も含め、生き物は環境の変化に対し、紙一重のところで生命を維持しています。体温が1℃変化しても、水分が1%変化しても、大変なダメージとなります。光合成を命の糧にする生き物たちにとっても、波長がどれか数%でも狂うだけで、実は大変なストレス・ダメージを受けているのかも知れません。だって、何万年もの太古から同じ太陽を浴び続けて回ってきた生命に対し、ある日突然とんちんかんなスペクトルを与えて、それで順応しろと言う方が無謀です(苦笑)
ここで僕は悟りました。陸生の野菜栽培のように、必要な波長だけ青と赤を与えりゃ育つと言う考えで海は創れないと。要るモノも要らないモノもあってこそ、本来の生理が回るのだ、と。そして僕は、太陽の崇拝者となりました。アクアリウムに於けるLED照明でも、太陽光は再現するべきであると♪
もちろん、そうじゃないと、自然本来の色での鑑賞にはなりませんしね。

さて、そろそろ本題です(いつも前置きが長くて恐縮です)
サンゴの色揚げと光色の考え方は、特にLEDだけに限った考察ではありませんが、単波長なLEDの特徴からして、特にLEDでは制御が顕著になるという意味で、これをLEDによるサンゴ・カラーマネージメントと呼ぶことにしましょう。

まずは、演色性と言う、色の考え方

演色と色の見え方

演色とは、光に照らされた物体がどんな色に見えるか、と言う尺度です。かな?(汗)
白い紙に青を当てれば青い紙に見え、赤を当てれば赤い紙、それが演色です。
また、物体の色とは、その色に該当する波長の光を反射するからこそ、その色が目に届き認識される色です。太陽光を浴びた黄色いサンゴが黄色く見えるのは、可視光線の様々な波長を吸収しつつ、そのうち黄色だけを吸収せずに反射するために引き起こされる発色現象です。そのためには、反射すべき黄色の波長が光源に含まれている必要があります。そう、RGBのLED(赤、緑、青)の混合色による擬似白色を当てても、黄色の波長がないために黄色のサンゴは黄色く見えないのです。エライこってす(汗)

もし、黄色いサンゴが黄色く見えないときは、LEDに黄色が入ってるのかな?と疑ってみましょう♪

次は光合成色素が放つ、色の見え方

光合成色素と色の見え方

先の光合成色素の吸収スペクトルからも判るとおり、実は光合成色素は、自身の色とは異なる色の波長を利用しています。「実は」って事も無いけど、勘違いしてる人が意外と多いので。
例えば、フィコシアニンと言う青い色素を例に挙げると、この色素は橙~赤の波長を光合成に利用しています。一方、青の波長は不要なので反射しちゃってます。そっか!だから青く見えるのか! はい、そゆこと♪
なので、この色素に赤以外の波長を当てていても、色素色の青は維持できません。とは言え、先の演色と言う効果を利用すれば、とりあえず青い光を当てることで青く見せることは出来ます。しかし、あくまでも「見えている」だけなので、そのうち色素色の青は減退していくでしょう。。。

見た目どおりの色素色を持つサンゴ(スギノキ、ハナヤサイ、トゲ等)は、色素の吸収スペクトルを意識してLED素子を選定しよう♪

続いて、ちょっとややこしい蛍光タンパクによる蛍光色の考え方

蛍光タンパクと色の見え方

蛍光タンパクについては、以前まとめた記事があるので、参考にしてください。

簡単にまとめると、蛍光色を発現させるための光源色は、必ずその蛍光色よりも短い波長であると言うことです。赤い蛍光色なら、UV・青・シアン・緑・橙の波長により励起可能です。ま、実際には緑や橙での励起量は弱いので、主要波長は青~シアンになるでしょう。同様に、緑の蛍光色なら、UV・青・シアンで励起可能、青の蛍光色ならUV~紫で励起可能、紫の蛍光色はUVでしか励起できません。
蛇足ですが、白色LEDの発光原理も、この蛍光色を利用しています。青の光で黄色蛍光体を励起し、青+黄色=擬似白色を実現している訳です。

蛍光色を持つサンゴ(コモン、ミドリイシ、その他ハード・ソフト)が、どの波長で発色するのか見極めよう! できれば色んなLED光を当てて、どの色で一番綺麗に発色するのか知っておこう♪

最後に、現状ではもっとも悩ましいバイオレットのサンゴの色彩パターンの考察

バイオレットのサンゴの波長要求パターン

シアノバクテリアのように色素色としてバイオレットを持つ場合は、それがフィコビリン系色素であるなら、黄緑~赤の波長を当てることで、色素色は維持できますし、光源に紫色(420nm前後)の波長が含まれていれば、演色としても綺麗にバイオレットが発色するでしょう。また、そのバイオレットがUVにより励起された蛍光色なら、もちろんUVも欲しいところです。うーん。。。ややこしい。。。
そして、複雑なパターンとしては、青と赤の色素が混合することでバイオレットに見えているケースも想定してみました(単なる過程で、実物は知りません)。その場合、色素色として青と赤の混合の場合は勿論、どちらかが蛍光の場合も考えられますし、両方が蛍光の場合もあるかな? ・・・そこまで来たら、もう考えたくありませんね。。。曝

とは言え、紫色の波長420nmのLED素子を用意するのは、現状ではかなりしんどいのよねぇ。。。これなんだけど↓

でも、既存のLED照明にこれ入れると、、、良いんだよねぇ~、、、ギラギラ感が♪
そう、スーパークールが420nmやシアンにピークを持つように、420nmを大盛りにすると、まさにメタハラ感が漂うのよねぇ~。。。みんなにも味わって欲しいなぁ。。。ま、そのうち♪

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サンゴと蛍光タンパク質

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蛍光タンパク質

画像は発光する蛍光タンパク質、Tsien Laboratoryより

以前ご紹介したエダコモンのオレンジポリプ発現個体以来、蛍光色素について色々と調べていました。今回はそれをちょこっとメモ程度にまとめてみます。

まず、僕は今までサンゴの蛍光色を、ただ漠然と「蛍光色素」と表現してましたが、その方面?での用語の使い分けに際し、蛍光物質には「蛍光色素」や「蛍光タンパク質」があり、どうやらサンゴのそれは蛍光タンパク質と言い表すのが適切であるようです。

で、それらを大まかに区別すると、およそこんな感じのようです。

蛍光 蛍光色素 蛍光タンパク質
成分 化学合成 生物由来
特徴 低分子 蛍光強度が高い
用途 細胞や染色体などを染色 遺伝子工学によるタンパク質の追跡

まず、蛍光色素には非常に多くのバリエーションがあります。
以下の資料は参考程度にご覧下さい。

一方、生物由来である蛍光タンパク質には、我々も非常に関心の高いサンゴ由来の蛍光タンパク質がいくつか抽出・生成されています。

  • Fluorescent Proteins (PDF)
    ミドリイシ・シアン
    ウミキノコ・グリーン
    アザミ・グリーン
    クサビラ・オレンジ
    桂馬/Keima570(赤)(コモンサンゴ)
    ドロンパ/Dronpa・グリーン(キッカサンゴ)
    カエデ/Kaede(緑・赤)(ヒユサンゴ)
    その他…
  • Living Colors Fluorescent Proteins (PDF)
    RCFP (reef coral fluorescent proteins/造礁サンゴ由来蛍光タンパク質)
    シアン(AmCyan1)
    緑(ZsGreen1)
    黄(ZsYellow1)
    赤(DsRed-Monomer、DsRed2、DsRedExpress)
    深赤(AsRed2、HcRed1)
  • Keima-Red
    mKeima 440nm-620nm
    dKeima 440nm-616nm
    dKeima570 440nm-570nm

厳密な励起波長・発光波長は別としても、多くは普段から僕らも観察し見慣れているサンゴの蛍光色ですね。

各サンゴの蛍光色

各蛍光タンパク質の紹介はここまで。各々の特徴・詳細については割愛します。
興味があれば必要に応じて検索してみてください。

そして、肝心の蛍光タンパク質の働きについて、有用な情報もひとつご紹介します。

刺胞動物と蛍光タンパク質 (PDF)

以下、引用。

採集した蛍光性サンゴと非蛍光性サンゴに強い紫外光を照射すると、後者においてより顕著に光合成阻害が認められた。
-
この結果から、蛍光タンパク質が褐虫藻を強い日光から保護することが示唆された。
-
実際、1998年に大堡礁で起こったサンゴの大規模な白化現象においてサンプリングしたものを調査したところ、蛍光タンパク質を発現する個体ほど白化しない傾向が確かめられている(Salihetal.2000)。

確かに蛍光色の励起は、青を吸収しての緑・赤励起、そして紫外線を吸収しての青・シアン励起などがあり、その意味では有害な紫外線を安全な可視光線にシフトしていると言う点で、対紫外線機能のひとつとも言えます。これは昔からよく言われる対紫外線色素のMAAsとはまた別の反応です。

例えば、浅場のミドリイシとして有名なスギノキミドリイシの特にブルー個体に於いては、この蛍光タンパク質によって積極的に紫外線を青色やシアンへシフトしていることが判ります。逆に言えば、どうして浅場のスギノキが青いのか、その裏づけとも言えるでしょう。

実際にブルーのスギノキや他の蛍光サンゴに青色や近紫外線の光を当てて、それぞれの蛍光タンパク質がどのような蛍光反応を示すか、我が家の個体で試してみました。

各サンゴの波長ごとの蛍光反応

仮に、グリーンのエダコモンの蛍光タンパク質をGFP(Green Fluorescent Protein)、オレンジのエダコモンの蛍光タンパク質をRFP(Red Fluorescent Protein)、スギノキの蛍光タンパク質をCFP(Cyan Fluorescent Protein)としますと、GFPやRFPは青色~シアンの光でもっとも強く反応(吸収極大)し、スギノキのCFPは近紫外線の400nmが吸収極大であることが判ります。

また、スギノキの蛍光タンパク質について更に詳しく観察してみました。

スギノキブルーの蛍光タンパク質の反応

最近気づいたのですが、このスギノキの場合、共肉は強いシアン蛍光ですが、実はポリプにも発光強度が弱いながらも蛍光発光があることが判りました。UV 400nmを当てると、ポリプが薄っすらとロイヤルブルー(あるいはブルー)を帯びているのです。
でも写真にはうまく写らない。。。判るかなぁ?
でも発光量が弱すぎて初老の老眼にはチト確認が辛い。。。気のせいだったりして(汗)

このことからも、スギノキブルーには適度な紫外線を当てるべきだと言えるでしょう。
そうでなければ、自然光下で見られる本来の濃ゆいブルーが発現できないと思われます。
これまでのようなメタハラや蛍光灯の環境では意識せずとも含まれていた紫外線も、オールLEDの水槽では意図的に入れる必要性が生じますので、可能であればUV入りLEDランプを併用することが理想的です。
ただ、ご使用のランプの中に一般白色LEDが混じっているならば、幸い蛍光体による励起波長範囲に僅かな近紫外線域が含まれますから、スギノキブルーの青みもそれなりに出ると思います。でもフルブーストを掛けるなら是非UV入りを入れたいところです。
尚、RGB白色LEDの場合は蛍光体励起が無い分、近紫外線は一切含まれていないため、青蛍光やシアン蛍光は得られず、単なる青光成分による演色効果でしか青みは得られません。この場合、UV入りランプは必須となるでしょう。

さて、今回自分なりに時間を掛けて蛍光タンパク質について調べてみたつもりでしたが、それで蛍光グリーンのエダコモンサンゴのポリプに蛍光オレンジが乗った原因が判ったのか?と言うと、それが結局さっぱり判りませんでした♪
人為的に蛍光タンパク質の発光色・強度を改変する場合、その蛍光タンパク質の遺伝子クローニングののち、DNAのアミノ酸配列を組み替えることで実現するそうですが、そういう変化が自然下でも起こるのか、それとも単に異なる蛍光タンパク質を獲得したのか、と考えると、やっぱり後者の方が自然の成り行きかな?
でも、当時は蛍光オレンジなんて水槽のどこにも無かったんだけどなぁ。。。
実は蛍光タンパク質は細菌の如くどこにでも存在するモノなのか!?
そういえばサンゴのプラヌラ幼生も、最初は持ってないはずの褐虫藻をいつのまにか取り込んでるようだし。。。
ただ、ひとつ気になるのは、このようなエダコモンの現象は今までに一度も見たことがなく、今回LED環境で飼育してみて初めて遭遇した現象だと言えること。まさかLEDの破壊的な光線により遺伝子が組み替えられた!?・・・なんてことはないよね(笑)

と言うわけで、答えは先送りです。

尚、念のため補足しますが、サンゴの色彩を決定づけるのは蛍光タンパク質だけではありません。褐虫藻自体の色、密度、そしてクロロフィルやカロテノイド、フィコビリンのような光合成色素など、さまざまな要因により見た目の色彩が形成されていると思われます。

その他の参考関連情報

その他、間違い等あればご指摘頂けると助かります。

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雑学5.光合成色素の種類

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光合成色素については、なかなかまとめるための情報に恵まれませんが、きりがないので一旦まとめちゃいたいと思います(笑)

海洋生物の光合成色素の種類と吸収スペクトル

以下の2枚の図は共に視覚でとらえるフォトサイエンス生物図録(数研出版)より引用。

光合成色素の種類

これはサンゴではなく主に藻類に見られる光合成色素ですが、サンゴも同系統の多様な光合成色素を持つと思われます。
上の表でも、クロロフィルaが多くの藻類の主要色素として存在していることが判りますが、併せて他の色素も主要色素として働いていることが判ります。青や赤のシアノバクテリアにはフィコビリンが、褐色の珪藻類にはカロテノイドが存在し、それらがそれぞれの特徴的な色彩の要因となります。

光合成色素の吸収スペクトル

これは各光合成色素が吸収する波長帯を表したスペクトルグラフです。「吸収」とは、その波長帯が光合成に利用されているという意味になります。

例えば、緑色の曲線は陸生植物でも大部分を占めるクロロフィルの吸収特性であり、市販の植物育成ランプのスペクトルもこれに対応した特性を持っています。
しかし、海洋生物は、その多彩な色彩が示すように、クロロフィル以外の光合成色素が非常に多く活躍しており、むしろ植物育成ランプに無い波長域こそ配慮しなければならないでしょう。

各社の植物育成ランプスペクトル

よく見かける植物育成ランプのスペクトルはBR型が多く、オレンジ帯域の欠落が気になりますが、HGやFRはシアノバクテリアのフィコエリトリンやフィコシアニンを見事にカバーしているように見えます。このスペクトルの形を覚えておいてランプ探しをすると良いでしょう。
ちなみに、このHGやFRのスペクトルは、実は一般蛍光灯のそれと大差ないようにも見えるのですがねぇ(汗)

スギノキミドリイシに必要な光源の考察

シアノバクテリアが持つ鮮やかな青や赤の色素を例に取ると、赤はフィコエリトリン、青はフィコシアニンですが、以前Tetsuo氏から頂いた情報でも、スギノキミドリイシの青の色素はChromoproteins-588と言う色素で、主に566~620nmのオレンジ帯域の波長光を利用し、特に588nmを吸収するとのことで、やはりこれはフィコシアニンの吸収波長特性に酷似しています。
このフィコシアニンの特性を上の図で見ても、クロロフィルの特性とはまったくカブッていないことが判りますから、もしスギノキを青くしようと思ったら、クロロフィル向けの植物育成ランプではなく、まずは橙色を優先的に多く含むランプをチェイスしなければならないでしょう。

そのことからも、スギノキの飼育に向いたランプとしては、比較的色温度の低い6,500K~10,000Kあたりのメタハラが、まずは無難なところです。あるいは蛍光灯なら、植物育成ランプの多く(BR等)は肝心の橙色を欠いたものも多いため、下手なランプより普通の白色蛍光灯の方がマシかも知れません(汗)。と言うか、蛍光灯でスギノキの要求する照度を用意するのも大変ですけどね(苦笑)

で、問題はLEDでこれを実現する場合です。ピンポイントでオレンジ色を用意することもできますが、ひとつの波長のみでは自然光であり得ない分布ですし、それによる生体の反応が判らないため、やはり満遍なく帯域をカバーしつつ、その上で橙色をある程度のレベルで確保したいものです。

そのために考えられるのは、やはり白色LEDや電球色LEDでしょう。これらのLEDには黄色をピークに緑から橙まで満遍なく含まれていますから、とても理に適う選択と言えます。

白LEDとフルカラーのスペクトル比較

但し、フルカラーRGBの3原色による白色LEDは除外しなければなりません。なぜなら、フルカラーRGBは見た目こそ白色光ですが、中身は赤・緑・青のピンポイントを並べただけですから、緑と赤の間が大きく欠落していて橙色が含まれていません。もしどうしてもフルカラーRGBによる白色LEDを使うなら、そこに580~590nmピーク程度の黄色の素子を同レベルで補完すると良いでしょう。まぁ、それでもある程度の帯域抜けはどうしても発生しますので、白色LEDを使ったほうが早いと思いますけどね。

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