1.023world - ヤドカリパークとマリンアクアリウム -

海洋の仕組みと細菌・微生物から学ぶマリンアクアリウムサイト

1.023world Facebook

結果 Oh! Life (旧ブログ)

懲りずに書いてみたりする結果オーライな日記

プチ雑学:光とサンゴ篇

この記事を含むタグの全記事リスト: スペクトル 海洋雑学

調べ物してたら良い読み物があったのでご紹介しておきます。
(前にも同じの出してたらすみません・・・歳とると記憶が・・・汗)

引用元:AMSL 阿嘉島臨海研究所
挿絵:1.023world

トップ > 刊行物 > みどりいし > No.13 2002年3月 目次 >
刺胞動物と蛍光タンパク質法 (PDF)

(抜粋)
採集した蛍光性サンゴと非蛍光性サンゴに強い紫外光を照射すると、後者においてより顕著に光合成阻害が認められた。褐虫藻のクロロフィルが三重項励起状態に移行して、活性酸素による光合成器官の破壊が起こったものと考えられる。この結果から、蛍光タンパク質が褐虫藻を強い日光から保護することが示唆された。その保護機序としては、太陽光の強度を弱めること、太陽光に含まれる短波長成分を長波長にシフトすることが考えられる。実際、1998年に大堡礁で起こったサンゴの大規模な白化現象においてサンプリングしたものを調査したところ、蛍光タンパク質を発現する個体ほど白化しない傾向が確かめられている(Salihet al.2000)。

* 強調は当方による

1998年のエルニーニョによるサンゴの白化状況

これは水槽にも言えることですが、例えば波長不足等で蛍光タンパクが減退するような環境で飼育されていたサンゴにある日突然強いUVを照射したら、蛍光をしっかり持った通常の状態のサンゴに比べ、何らかの光障害に至る可能性が非常に高いと言えます。そこを見落として単に「UVはアカンな~」と解釈するのはナンセンスですね。本質を見抜く力を養いましょう。当てるなら時間をかけて少しずつ蛍光を呼び戻しながら慎重に。

トップ > 刊行物 > みどりいし > No.13 2002年3月 目次 >
サンゴ礁海域の光環境について (PDF)

(抜粋)
この地上に達した紫外線は海水中においてどのくらいの深さまで浸透するのだろうか? 海水中での紫外線も可視光線と同様、透明度などの要因によって滅衰する。Glynn(1993)が瀬底島のサンゴ礁で測定したところ、水深 3-4m では海面における紫外線照射量の約 50%が届いていた。またDunneand Brown(1996)によれぱ、紫外線照射量は沿岸海域では水深 3-6m で海面における照射量の 1%に、環礁付近の海域では水深 11m で 1%に減衰した。このように報告されている観測値にはかなりのぱらつきが認められるが、透明度の高いサンゴ礁海域であれば、礁斜面の造礁サンゴが観察される水深 20mまでは滅衰しながら確実に浸透しているようである。

* 強調は当方による

水深による海中スペクトルの違い

串本でさえこの結果ですから、やはり沖縄や南国のサンゴ礁ならもっと強いUVが深場に届いてるのでしょうね~。色彩豊かな蛍光タンパクが多いはずです♪
あ~早く沖縄でもスペクトル測定してみた~い!

こちらのエントリーもどうぞ♪

台湾エバーライトvs日亜化学、最新ニュース

この記事を含むタグの全記事リスト: LEDうんちく

過去に何度か触れたことのあるエバーライトvs日亜化学の続報です。

過去の記事はこちら↓

この紛争についての新たな続報が、昨日の日亜のプレスリリースに上がりました。

ま、どうせエバーライトも控訴するでしょうし、こちらも行方が気になりますね。

ちなみに、この中の日亜特許権EP 936 682 (DE 697 02 929) にある特許群はいずれも1996年代のものばかりなので、そうなるとあと3年ほどの命だと思われます(汗)
日亜、益々ケツカッチン。。。

ついでに、エバーライトのプレスリリースも見てみると、、、
あら、8月になんか上がってました。気づかなかった。。。

内容は、
前回の日亜特許JP2780691の無効審決に対する日亜の再審請求に対し、日本特許庁は再びJP2780691を無効審決とした。
というものです。
ドイツとは別件ですが、エバーライトの方は順調に日亜崩しを進めているように見えます。

日亜には、明るい未来は見えているのかな・・・?

こちらのエントリーもどうぞ♪

すべての答え:蛍光タンパク篇2

この記事を含むタグの全記事リスト: スペクトル プチ実験 海洋雑学

前回のすべての答え:蛍光タンパク篇では、SPSカラーレポート第一弾の中からスパスラタのシアン蛍光タンパクCFPをご紹介しましたが、今回はSPSカラーレポート第二弾の中からグリセアコモンのグリーン蛍光タンパクGFPをご紹介します。
ご存じの通り、GFPはサンゴの中でももっともポピュラーな蛍光タンパクです。

グリセアコモン・蛍光グリーン

このグリセアコモンは凄いですよ。いや、GFPが凄いと言うべきか。。。
文献を失念しましたが、確か生物由来の蛍光タンパクの発光効率は化学合成の蛍光色素の非では無い、とかどうとか。。。まさにそれを痛感するような発光量を体験できました♪

見よ! このとんでもない反射スペクトルを!

グリセアコモン・蛍光グリーン 反射スペクトル

このグラフは前回でも触れたとおり、370/400/425/450/475/500nm等の出力を揃えたLEDを個別にサンゴに照射して得た反射スペクトルですが、他のサンゴはいずれも反射スペクトルを10倍程度に拡大しないとその蛍光スペクトルを拾い出すのは非常に困難でしたが、なんとこのグリセアコモンの蛍光スペクトルは僅か3倍に拡大しただけでこの発光強度が確認できるのです。

賢明なスペクトルマニアの皆さんなら、このグラフからだけでも判りますよね?
そう、この中からは、ピーク520nmのグリーン蛍光GFPの存在が読み取れます。

では、LEDごとに個別に見ていきましょう。

グリセアコモン・蛍光グリーン LEDごとの反射スペクトル

475nmと500nmなんて、光源と蛍光の強度関係が逆転しちゃってます(笑)
まあ、それだけ光源の波長を吸収しているという証拠でもあります。

これはグリセアコモンに限らず、一般的な蛍光グリーンのサンゴならいずれも当てはまると思います。蛍光グリーンは海洋でももっともポピュラーな蛍光タンパクで、最初に発見された蛍光タンパクがオワンクラゲからのGFPだったくらいです(下村, 1962)。そして上記グラフからも判るように、これが何を意味するかというと、それらのサンゴが生息する水深のスペクトルの主要波長がおよそ420/450/475/500nmで構成されていると言うことです。その環境に適した蛍光タンパクがまさにGFPなのでしょう。

また、その励起範囲と励起量から見て、水槽でもとりあえず一般的なロイヤルブルー450nmやブルー460-470nmあたりを当てておけば十分に蛍光グリーンが励起されることも判ります。LEDにしろ蛍光灯にしろ世のアクア向けライトにはこれらの波長はほぼ確実に入っていますから、それが蛍光グリーンの維持の容易さにも繋がっているのでしょう。

そして、上記のグラフから蛍光スペクトルのみを単離するとこうなります。

グリセアコモン・蛍光グリーン GFPスペクトル

ブルー蛍光BFPやシアン蛍光CFPと違い、グリーン蛍光GFPの励起にはUV 370nmやUV 400nmはほとんど必要ありません。完璧を期す場合でも420nmあたりから500nmまでカバーした光源があれば十分ですし、極端に言えば450nmや460-470nmだけでもそこそこの励起量になるでしょう。スターポリプ、ウミキノコ、ハナガササンゴなど、メジャーなサンゴ飼育の光源で悩まないのはそういうカラクリだったのです♪

まあ、それはそれ、これはあくまでも蛍光タンパクのみに言及した話であって、それとは別に肝心の光合成をカバーするだけの光条件は少なからず必要になります。まあそれでも普通の白色LEDなり白色蛍光灯でも十分だと思いますが。

こちらのエントリーもどうぞ♪