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褐虫藻に焦点を当てたLED選び

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応援市場にて今月いっぱいの「夏まで待てないLeDio祭り」を開催中です。
とりあえずLEDスポットを業界最安でゲットされたい方はご検討ください♪

さらに、ここ最近LEDシステムライトの購入に関するご相談が増えてきました!?
僕は相変わらず不景気(泣)なのに、一部では景気が回復してるのかしら?笑

と言う訳で、
今年の夏こそはLEDシステムライトをゲットするぜ!
と言うアクアリストのために、ただいま各社の最新ロットを調査中です♪
データがまとまり次第、順次ご報告していきますのでお楽しみに!

LEDシステムライト2015年5月最新ロット調査

で、LEDシステムライトは、ただ闇雲に選べば良いってもんじゃありません。
自分に合った条件は勿論ですが、まずはサンゴのための条件にも目を向けましょう。
サンゴと言えば褐虫藻
と言う訳で、今回は予備知識として褐虫藻のことを考えていきたいと思います。

褐虫藻は光合成産物の大部分をサンゴに提供しています。
光合成と言えばクロロフィル(葉緑素)。
そのため、LEDライトに於いても、そのスペックを表すために、度々クロロフィルの吸収スペクトルに対するカバー率が示されてきました。
クロロフィルには主にaとbがありますが、cやdもあります。

クロロフィルa/b/c/dの吸収スペクトル

* PukiWiki記事を参考

ま、相手が陸生植物ならそれで良いのですが、我々が相手にするのはあくまでもサンゴの褐虫藻です。褐虫藻は果たしてどのクロロフィルを持っているのか? それとも全部か?

はい。褐虫藻は、クロロフィルaクロロフィルcを持っていると言われています。

褐虫藻が持つクロロフィルa/c

そう、褐虫藻が持っているのは、実はクロロフィルcなのです。
今までクロロフィルaやbばかり見てきたので、このcの吸収スペクトルは斬新でしょう(笑)
赤はほとんど必要としないし、深赤660-680nmは全く要らないんですぜ?汗
なるほど。陸生の光合成と違って、赤の届かない海中に特化した仕組みですね!

また、クロロフィルaはクロロフィル蛍光を持ち、その蛍光はおよそ670nm前後のスペクトルを発します。

クロロフィル蛍光

* ITC記事より引用

実はこれ、僕が過去にディープレッド蛍光だと解説してきたモノの中にも混じっていたかも知れません。例えば、以下はカラーレポートにも掲載している反射スペクトルグラフです。

ディープレッド蛍光/クロロフィル蛍光

* スパスラタ:カラーレポートVOL1, ハナサンゴ:カラーレポートVOL3より

僕が測定したモノはいずれもかなり微弱でカーブがハッキリしませんが、ピーク波長はかなり近いです。また、同種間でもこれが見られたり見られなかったりするのも、クロロフィル蛍光ならでは?と今なら納得出来ます。なぜなら、クロロフィル蛍光は光合成が過剰な時に発せられるからです。と言うことは、反射スペクトルの測定時に励起波長強度が強すぎた時に現れていたのかも?
特に630nmの赤の波長に対して顕著(660nm時は励起波長のカーブを減算すれば630nm時よりも発光量は小さい)なので、やはりサンゴはこの赤の波長帯域は嫌ってるんだなぁ~と妙に納得したり。
カラーレポートをお持ちの方は、各サンゴの深赤部分をご確認ください。ここが発光してるサンゴは結構多いです。

ただ、そうなってくると、このクロロフィル蛍光がクロロフィル自身の赤側要求670-680nmを満たしているとは言い辛くなってきました。だって、光量がキャパ以内の時は蛍光を発していないって事ですから。いや、あるいはキャパオーバー時に670nm蛍光を発するのも、実はブルー光過多のバランスを取るため?と こじつけられない事も無いけど、真相は判らない。。。

しかし、そこで救世主が現れました! (元からいたけど)
それが褐虫藻が持っているカロテノイドの一種ペリジニンです。
ペリジニンは、僕は他のカロテン同様せいぜいアンテナ色素程度に捉えていたので、今まであまり焦点を当ててきませんでしたが、いまいちよく判らなかった吸収スペクトルのグラフの意味がようやく判りました。なんとこの子、ワイドブルーバンドな吸収スペクトルを励起源として、670-680nmのディープレッド蛍光を発するんです!

ペリジニンのディープレッド放射スペクトル

* COLUMBIA BIOSCIENCES記事より引用

これまた衝撃的!
蛍光を発するのは、蛍光タンパクだけじゃないってことだぜ♪
やはり人間ごときが何億年もの歴史を持つサンゴの心配をするなんて烏滸がましいぜ!
我々が危惧するまでもなく、彼らは必要なモノを獲得する術を多岐に渡り持ってるぜ!

以上の事から、やはり褐虫藻は赤の波長の届かない水深でも光合成効率を確保するため、従来のように蛍光タンパクRFPやDRFPによる670-680nm波長補完はもちろんのこと、ペリジニンのディープレッド蛍光670-680nmの恩恵も受け、適正な光合成を営んでいることが推測されました。ま、クロロフィル蛍光の670nmの恩恵は定かではありませんが、少なくともこれで十分な深赤波長の確保が成されていると考えられるでしょう。
ただ、これらはLED照明に深赤波長660-670nmを採用することを否定するモノではありません。あくまでも適度な量の範囲であれば、十分に補助を果たすと考えられます。多すぎはダメですが。。。ただ、過保護は本来の姿を衰退させる要因にもなりますから、注意深い観察は必要です。

と言う訳で、褐虫藻の持つ色素構成は、およそ以下のようになります。

褐虫藻が持つ色素あれこれ

それらがトータルで構成する褐虫藻全体の吸収スペクトルはこのようになります。

褐虫藻の吸収スペクトルの構成

* Advanced Aquarist記事を参考

よって、サンゴのため/褐虫藻のためのLED選びとしては、まずは褐虫藻の吸収スペクトルをどれだけカバー出来るかを念頭に置くと良いでしょう。

もちろん、蛍光タンパクの働きも忘れてはなりません。
特にLED照明で不足しがちな400-420nmのUV域を確保すれば青系蛍光タンパクはギラギラ維持出来ますし、上記の深赤660-680nm要求を補完する赤系蛍光タンパクの存在を意識することで、LED選びの目はより確かになっていきます♪

蛍光タンパクの要求と恩恵

  • ブルー蛍光/シアン蛍光/褐虫藻のためにも400-420nmのUV域を確保
  • 深赤660-680nmはサンゴ(褐虫藻)が確保するので意図した追加は不要
    (但し、演色性(発色)の向上には寄与する)

あとは、省エネ性、光量、機能性も視野に入れて、じっくりと選びましょう♪

では、次回からお勧め最新LEDシステムライトを順にご紹介していきます!
今回の予備知識も活かしたグラフ作りになってるので乞うご期待♪

こちらのエントリーもどうぞ♪

AQUARAMA 2015とTRITON LANI LED

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今宵は、現在開催中のAQUARAMA 2015から活きの良い情報をお届けします♪

AQUARAMA 2015

え?
僕ですか?
行ってませんけど、何か?笑
やだな~僕は行ってもないのに行ったフリなんてしませんよ~♪
シンガポールへの旅費なんて捻出できるキャパないからね~泣

実は、最近話題のトリトンも出てるって聞いたので、今回AQUARAMAに参加されたBH和田氏とテツオ氏に、トリトンの”LANI LED“の潜入捜査をお願いしてたんです(笑)
さすがLEDオタク♪笑
だって、なかなか目にする機会が無いんだもん。。。
今後、国内でも販売するんだろうか?

オマケ: 【facebook動画】 BH和田×テツオ×Ehsan(トリトン)対談 (笑)

以下、写真は和田氏&テツオ氏のfacebookから。

AQUARAMA 2015のTRITON水槽

ほほお~これがトリトンのLEDですか~

TRITON LANI LED

これは、UV系と白系と青系で構成されてるから、“Lani One”って奴ですね。
公式サイトによれば、赤が入った“Lani Pro”ってモデルもあるようです。

以下、公式サイトより各モデルのLED素子構成を抜粋。

■TRITON “LANI PRO”

32x CREE XT-E, white
32x CREE XP-E, blue
16x purple
8x red
8x deep red
8x royal blue

■TRITON “LANI ONE”

32x CREE XT-E, white
32x CREE XP-E, blue
16x purple

あ、この素子リストの中のpurpleって、UV系素子のVioletの事ですからね。
たまに青チップ+赤チップのデュアルチップ素子のことをパープルって言ったりするけど、このページってどうも機械翻訳でドイツ語から英語に変換されてるみたいで、420nm前後の波長を表すすみれ色のことをVioletって訳したりPurpleって訳す癖があるみたい(笑)
勿論ドイツ語のページには、LED素子はPurpleではなくVioletと記してあります。
ま、ページを一通り読めば、バイオレットとブルーで強い蛍光を得てるって書いてあるので判るはずですが、一応念のためトリトンにも直接聞いてきてもらったと言う訳です。

とその前に、各モデルページに記載された文言の確認 (各上が原文、下が日本語訳)

Dimmability
Dimmable 0 – 100% via three separate channels (violet, blue and white).

調光機能
Violet/Blue/Whiteの3つのチャンネルによる0-100%の調光が可能。

Perfect spectrum for growth and colouring
The spectra of the three base LEDs (violet, blue and white) are…

成長と色揚げに最適なスペクトル
Violet/Blue/Whiteの3つのベースLEDのスペクトルは…

Great fluorescence
Thanks to the special wavelengths of the installed LEDs, fluorescence in the violet and blue phase is noticeably stronger.

素晴らしい蛍光
採用されたLEDの特殊な波長の恩恵により、VioletとBlueのフェーズの蛍光は著しく強いです。

LANI LED featuresのページWavelengthsの項からも抜粋。

Instead of royal blue LEDs, TRITON uses special violet and blue wavelengths for illumination, …

RoyalBlue LEDの代わりに、TRITONは照明のために特別なVioletとBlueの波長を使います

で、本日トリトンに直接確認してもらったところ、このVioletのLED素子の波長は約410-420nmとのことでした。うん、まあ想像通り。今現在、RadionやHydra、Razorなど各社が採用しているUV系素子も410-420nmですからね。
トリトンも例に漏れず載っけてきたかぁ~?
・・・と思ったら、2年前もViolet LEDが載ってたってリーフビルダーに書いてあった(笑)
なんだ、トリトンも最初からUVの理解者だったか。流石だトリトン! 判ってるぜぇ~?

え? てっきりトリトンってUV系素子使ってないと思ってた? なんで???
誰かそんなこと言ってた??? またどこかの販促活動かしら。。。困ったモノです。

と言う訳で、使ってる素子が一通りざっくり把握できたので、さっそくSPECTRAを使ってLANI LEDの各モデルのスペクトルシミュレーションをしてみました。

TRITON LANI スペクトルシミュレーション

良いんじゃない?
さすがViolet素子たくさん並べてるだけあります!
多分、フルスペに次ぐUV系素子の多さです。フルスペのUV系素子の使用率は全体の約30%、一方LANI ONEは20%、LANI PROなら15%です。ついでにRadion G3 Proは19%、Hydra/Primeは15%です。

ちなみに、RedとDeep Redは多くの場合630nmと660nmなのでその前提で計算。
Cree XT-E WhiteとCree XP-E Blueは標準値を割り当て、Violetも近年妥当な放射束400mW程度にて計算しました。でももしKRみたいに500mWや600mWのモンスターランクを採用してたら、もっとUV域が持ち上がってくることでしょう♪
いつか測ってみたい。。。

あと判ったのは、LANIシリーズは1W駆動だと言うこと。よって、LANI PROなら104素子だから104W、LANI ONEなら80素子だから80Wと言うことです。で、実際の製品の消費電力は、安定器の分だけさらに10-20W大きくなる感じかな。だから、KRのようになるべく少ない消費電力で、高効率&大光量を実現してるってことですね!

うーん。。。
UV域の重要性の認識や、1W駆動×多素子のメリットの理解。。。
妙に親近感が♪笑

ただ、ひとつ問題が。。。

レンズが搭載されてない!?

そのため、満遍なく広域を照らせる反面、直下照度が低い。。。
てことは、5年前に測ったVertexレンズ無し80Wだったから、アレと似たような照度かな。簡易照度で約15,000lx@30cm。。。3万4万が当たり前のこのご時世には、ちと厳しいかな。。。ま、Vertexは3W駆動だったけど、トリトンは1W駆動だからもう少し伸びるかも。2万はいくかな。でも2万か。。。汗
せめて初期のRadionのようにリフレクター(反射板)くらい採用してれば少しは。。。

実は、LANIはレンズによる透過ロス回避と拡散光保持の観点から敢えてレンズを採用しないと言うポリシーを持っているようです(LANI LED featuresのページ120° angle of reflected beamの項参照)。さらに「レンズの透過ロスは10-20%」と記してあるけど、それを言ったらLANIだってガラス板(orアクリル)があるし、ガラスなら10%はロスしてるハズ。それに、仮に透過ロスが回避できたとしても、必要な光量が確保できなきゃポリシーが矛盾してしまいます。ま、だから上の写真でも判るように、専用ブラケットで水面に近接させる設置方法がデフォなのかな?と(多分ブラケット高さ15cm位?)
ま、続きはいつか現物を測定してからにしましょう。

ただ、僕が思うに、過去のMaxspectRadionもそうだったように、ユーザーから光量の不満が募れば、いずれレンズも採用するんじゃないかな。80°でも100°でも、レンズは無いよりあった方が断然明るいからね。それでもある程度の広角と拡散は確保できるんだし。あとは今後のトリトンの判断力に期待しましょう。

でも、UV域の強化と、1W駆動×多素子、あとレンズまで搭載されたら、、、
基礎がフルスペと同じやん!?笑
その上、今後400nmや500nmも強化してきたら、、、
太陽+深度のアルゴリズムまで踏襲してきたら、、、

脅威だぜぇ~?

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蛍光タンパクの補足:確立された技術

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GWは皆さんあちこち旅行に行かれたようで、裏山しぃ~裏飯ぃ~。。。
ちなみに僕のGWは映画三昧でしたょ。。。泣
まあ、寄生獣<完結編>は面白かったけど♪

蛍光タンパクって、既に確立された技術ですよ?

特にカラーレポートの公開以降の話ですが、

独自で蛍光タンパクの特性を発見して凄いですね!

とか、

個人で調べた蛍光タンパクの特性って正しいの?

など、そんなご意見は、、、

想定外ですっ♪キリッ(笑)

だって、蛍光タンパクなんて、いまさらの堅~い技術ですよ?

そう言えば、今まで紹介してきた蛍光タンパクの励起スペクトルも発光スペクトルも、それがサンプルや実測値に関わらず、肝心なこと書き忘れてたのかしら?
と言うことで、今回は前回の投稿への簡単な補足のための投稿です。

バイオイメージングの世界で取り扱われる蛍光タンパク

まず、今まで僕がご紹介してきた様々な蛍光タンパクについて、ここで初めて見られた方、他では見たことがなかった方、にはすみません。これらは僕が発見し、僕が提唱している、と言う大それたモノでは決してありません(汗)。僕のやってきたことは単に、既知の蛍光タンパクを実測データの検証から存在確認したに過ぎないのです。
ま、白色蛍光タンパクはいつか見つけたいと目論んでますが♪笑

はい。蛍光タンパクは、特に近年のバイオイメージングの世界では常識の存在です。
例えばちょっと探せば以下のような情報がゾロゾロと出てきます♪

1. The fluorescent Protein (FP)

蛍光タンパクの励起発光スペクトル

2. Basic fluorescent proteins

蛍光タンパクの励起発光スペクトル

3. Review: Lighting up cells: labelling proteins with fluorophores

蛍光タンパクの励起発光スペクトル

4. Box 2 | Genetically-encoded fluorescent proteins used in mice

蛍光タンパクの励起発光スペクトル

5. DNA2.0(DNA)社 Protein Paintbox™

蛍光タンパクの励起発光スペクトル

6. Evrogen社 蛍光タンパク質ベクター

蛍光タンパクの励起発光スペクトル

* いずれも左が励起スペクトル、右が発光スペクトル
各サイトからグラフを拝借しました (一部見やすく加工)

いずれも代表的な蛍光タンパクの励起スペクトル(左)と発光スペクトル(右)です。
見ての通り、タイプ(発色)によりその励起スペクトルも発光スペクトルも大まかに決まったパターンがあり、それらは過去に僕が紹介してきた実測データとおよそ同じモノです。

そう、これらのタイプ・特性は、専門機関が取り扱っている確立された技術なのです。
そして、これらの蛍光タンパク商品の出所は、はい、そもそもサンゴ由来なんです♪
サンゴから抽出された蛍光タンパクを元に改良を加え、各分野で利用されているんです。
例えば、バイオイメージングの用途では、細胞間をどのようにタンパク質が移動しているか、励起波長を当てればその位置が一目瞭然、細胞を破壊することなく変移を捉えることが出来ちゃう、とても革命的なツールとして活用されています。

では、そもそもサンゴは何故蛍光タンパクを持っているのか?
それはこれまでにも何度も説明してきたとおりです。UV防御然り、波長補完然り。
最近では抗酸化作用を持つ事も判ってきました。
以下の投稿の熟読もオススメします。

  1. 新春♪オージースペクトル大公開! - 2015/1/11
  2. 蛍光タンパクのロジカルカラーマネジメント - 2015/02/13
  3. 論考1:サンゴと褐虫藻の問題提起 - 2015/2/19
  4. 論考2:サンゴのアミノ酸取り込みの意味 - 2015/2/20
  5. 論考3:サンゴのアミノ酸生合成 - 2015/2/21
  6. 論考4:サンゴの蛍光タンパクとアミノ酸 - 2015/2/22
  7. イチゴ先生の蛍光タンパク講座 - 2015/4/29

そうした蛍光タンパクを我々アクアリストは何故維持したいと考えるのか?

色彩の観賞のため?
もちろん必要な波長を当てないと発色しませんから観賞にもなりません。

サンゴの健康のため?
現時点では、それも正解と言えるレベルまで情報が出揃ってきたと言えるでしょう。

蛍光の発色に関する勘違い・疑問など

あ、その前によくある勘違い?疑問?を解決しておきましょう。

  • ブルー光を当てなくても、白色光だけでも蛍光グリーンは緑色に見えます!
    白色光にはブルー光が含まれています。
  • ブルー光を当てなくても、白色光だけでも蛍光レッドは赤色に見えます!
  • 蛍光ブルーにわざわざUV当てなくても、海ではブルーに見えてる!
    海は普通にUVが当たってるからこそ、蛍光ブルーは青く発色しているのです。
  • UV当てなくてもうちの蛍光タンパクは維持出来てます!
    蛍光グリーンや蛍光レッドは、ブルー光だけでも発色や維持は出来ます。しかし、蛍光ブルーや蛍光シアンは400-420nmがないと発色も弱く維持も困難です。
  • UV当てなくてもうちの蛍光ブルーは維持出来てます!
    それ、蛍光ブルーじゃなくて色素ブルーかと。蛍光ならギラギラしてます。
    あるいはT5でもActinic球を使えば蛍光ブルー衰退の歯止めは可能です。
  • 観賞時は見えないけど、UV当てればちゃんとグリーンに発光してますから!
    てことはUVリッチな自然下なら何もしなくてもグリーンに発色してるはずです。わざわざUV当てないとグリーンが出ないってことは、平常時の光環境にUVが足りてないってことです。要するに、それじゃ自然下での発色が観賞できてないってことです。
    もちろん、励起波長が不十分なせいで蛍光自体が衰退したことも含まれます。
  • そのうちストロベリーが赤だけになりました、スパが単色になりました、等
    だから言ったじゃないの。。。

蛍光タンパクは種類によって要求波長が異なります。そもそもシステム自体が、蛍光ブルーや蛍光シアンの存在を見落としているケースすらあります。また、そうした要求の異なる群をただ“蛍光タンパク”と一括りにしたり、それに対してアレが要る・要らない等と一緒くたに割り当ててしまうと、ある蛍光タンパクには当てはまっても別の蛍光タンパクには当てはまらない状況を生み出してしまいます。
「蛍光タンパクはUV当てたら光る」、みたいな曖昧で単純な認識は今日で捨て、

  • 蛍光ブルーBFPには → 400nm前後のUV光
  • 蛍光シアンCFPには → 400-420nmのUV光
  • 蛍光グリーンGFPには → 450-480nmのブルー光
  • 蛍光レッドRFPには → 480-520nmのシアン光

のように、それぞれの要求を今日から正しく認知しましょう。

蛍光タンパクの要求に対する応答方法

まず、上記に挙げた各種蛍光タンパクの励起スペクトルから以下のことが判ります。
蛍光タンパクの発光に必要となる波長範囲です。

蛍光タンパクの励起発光に必要な主な波長範囲

これは、実に単純明快な理由です。
それは、海中に最も多く届いている波長だからです。
海中では深度を増す毎に、UV(350nm以下)と(600nm以上)が減衰します。
さらに深くなると、UVは390nm以下、緑は520nm以上で大きく削られていきます。

黒潮域の海中スペクトル

結果、この390-520nmのブルーバンドが海中を支配しています。
必然的に、サンゴはこれらを最も多く浴び、これらの影響を強く受けています。
その結果が、UV防御であり、波長補完である訳です。

また、蛍光タンパクのタイプ(色)によって、その要求する波長帯域は異なります。

各蛍光タンパクの励起発光に必要な波長帯域

このことからも判るとおり、何故サンゴがそのような色彩を放っているのか?
すべてが必然なのです。
よって、その色彩を自然下と同じように発色させたいなら、当然ですが自然下と同じ必然を与えてやれば良いのです。それが各種蛍光タンパクの要求波長範囲なのです。そしてその必然を与え続けることが、蛍光タンパクの「サンゴにとっての必要性」の継続へと繋がり、結果色彩が維持されるのです。

フルスペのスペクトル理論は、この要求波長範囲を天然下のように与え続けることです。
また、T5蛍光灯でもActinic球を増やすことでシアン蛍光タンパク維持の可能性が見えてきます。また、レッド蛍光のためのシアン500nm帯域不足は、蛍光灯特有の突出した540nmのグリーン光が代用を果たします。それでも足りないならLEDスポットがあります。

蛍光タンパクの要求に応える人工光源の補完例

要するに、サンゴの蛍光タンパクの発色・維持は、既存の光化学に従うだけなのです。
それは最近流行のトリトンと同様、「水槽の水質環境を天然の海水成分に近づけよう」と言う理屈と同じことです。
きっと、そろそろ気付き始めた方も増えてきたはずです。

水質は執拗なくらい忠実に再現してきたのに、
なんで光環境・波長は無視してきたんだろう?

もちろん、サンゴの種類に合わせて、それで要求が満たされるなら良いと思います。
しかし、サンゴの要求を無視して不十分な環境を押しつけるのは、ただの虐待です。

蛍光タンパクの要求を無視した人工光源の例

ましてや科学を無視した根性論なんて、サンゴもアクアリストも必要としていないのです。

オマケ

現象には必ず理由がある。 (BGMはこちら)

現象には必ず理由がある

根拠の明確な理論に基づいた数多くの実践と成果。それをねじ曲げることなどできない。
もし覆したいなら、それ以上の根拠と理論、そしてその成果を証拠に示せば良いだけだ。
あるいは、そもそも否定したい理由が科学とは別にあるなら、一般消費者にとってこれほど迷惑な話はない。鬱憤? 遺恨? 販促? 実にくだらない。。。

科学に従うことは、実に簡単だ。
例えば、

石灰化に必要だからカルシウムを与える

今じゃすっかり常識となっている科学だ。
間違っても、カルシウム抜きで石灰化頑張ってみるぜ!なんて、もはや今更あり得ない。
それと同じ事が、蛍光タンパクでも判明しただけのこと。

蛍光タンパクに必要だから励起波長を与える

ただ、一般的な照明ならば、励起波長のうちブルー光は必ず満たされている
そのお陰で、蛍光グリーンや蛍光レッドは一般照明でも問題なく励起できる。
問題なのは、UV域400-420nmの欠如に対してだ。
そのせいで、蛍光ブルーや蛍光シアンは十分に励起することができない。
従って、さらに具体的に表現するなら、

シアン蛍光タンパクに必要だから400-420nmを与える
ブルー蛍光タンパクに必要だから400nmを与える

となる訳だ。
実にシンプルで明瞭な科学だ。

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