1.023world - ヤドカリパークとマリンアクアリウム -

海洋の仕組みと細菌・微生物から学ぶマリンアクアリウムサイト

1.023world Facebook

結果 Oh! Life (旧ブログ)

懲りずに書いてみたりする結果オーライな日記

おいしい蛍光灯♪

この記事を含むタグの全記事リスト: T5 スペクトル 蛍光灯

アクアT5の未来のため、身近な蛍光灯バルブの中からフルスペクトル製品やワイドバンドブルー製品を見つけるべく、また既存の蛍光灯バルブの蛍光体バリエーションを把握しておくためにも、いくつかのバルブを取り寄せてみました。あいにく、全部T8ですが(汗)

蛍光灯バルブ各種到着

各発光色と価格。

蛍光灯バルブ各種光色

各発光色と、色温度・演色性の公称値と実測値の比較結果。( )内が実測値です。

蛍光灯バルブ品番と光色

ちなみに、いずれのバルブにも○PSEマークがありますが、蛍光灯バルブは経産省が定める電気用品安全法のうち、特定電気用品以外の電気用品(341品目) > 光源・光源応用機械器具 > 288:蛍光ランプ に該当するので、日本国内では○PSEマークが無いと販売する事が出来ません。なので、もし○PSEマークの刻印の無い蛍光灯バルブを見つけたら、危ないので経産省のご意見・お問い合わせフォームから通報しましょう。折り返し、経産省の製品安全課の担当者からメールが届くので、いつどこで購入したものか詳しくお伝えください。最終的には、担当者が首をかしげるような製品に対しては、経産省からの製品調査が入ります。但し、調査結果については守秘義務があるので第三者が知る事はできません(悪質なモノは経産省から該当業者に対して行政処分または警告がなされ、経産省のニュースリリースに掲示されるので、後日知る事はできるでしょう)

さてさて、気になる気になる実測スペクトルはこちら。

蛍光灯バルブ各種実測スペクトル

始めからフルスペクトルとワイドバンドブルーの目星を付けて注文したので、いずれも大変美味しいスペクトルでした~♪

メーカー 型番 適用 光色 演色
ランク
色温度
(実測)
演色性
(実測)
東芝 FL20SB 青色 - - - -
FL20SBW 青白色 - - - -
FL20SF 生鮮食品用 昼白色 - 5000K
(4822K)
Ra84
(Ra86)
FL20SN-SDL ネオラインデラックス 昼白色 AA 5000K
(4683K)
Ra90
(Ra85)
FL20SN-EDL 色評価用 昼白色 AAA 5000K
(4743K)
Ra99
(Ra97)
FL20SD-EDL-D65 色比較・検査用 D65 昼光色 AAA 6500K
(6092K)
Ra98
(Ra96)
NEC FL20SB 青色 - - - -
FL20SN-SDL 高演色彩 昼白色 AA 5000K
(4514K)
Ra92
(Ra91)
Panasonic FL20SN-EDL 高演色性 昼白色 AAA 5000K
(4805K)
Ra99
(Ra97)
FL20SN-EDL-NU 美術・博物館用
紫外線吸収膜付
昼白色 AAA 5000K
(4842K)
Ra99
(Ra97)
三菱 FL20SN-SDL ハイデラックス 昼白色 AA 5000K
(5091K)
Ra93
(Ra97)
FL20SN-EDL-NU 色評価用
紫外放射吸収タイプ
昼白色 AAA 5000K
(4862K)
Ra99
(Ra98)

あ、但しひとつだけ、東芝FL20SN-SDLはタダの3波長型ですが、これは あること を確認するために敢えて注文してみました。それは、今回各社の公称スペクトルを眺めていて気付いたのですが、もしかして生鮮食品用のバルブには大抵660nmが含まれている? と言う事を検証するためです。結果、植物育成用≒生鮮食品用を確信しました。 ま、価格的メリットはあまり無さそうですが、代用には十分であることと、バリエーションの少ない植物育成用と違って、生鮮食品用はこの660nmの放射強度に豊富なバリエーションがあるので、バルブの組み合わせによって目的の光合成量コントロールも可能になる、と言えそうです。水草などで興味のある方は一度お試しください。

生鮮食品用の蛍光灯スペクトルには660nmが含まれる

また、今回の調査で究極のマリンアクアリウム向けスペクトルの蛍光灯を発見しました。
味付け無しでこのままお召し上がれます♪
まさか、東芝が水深10M蛍光灯バルブを出してたなんて~♪笑

海中スペクトルと近似な蛍光灯バルブを発見!

なんと!
波長構成がそのまんま海中スペクトルやん♪
名付けるなら、ワイドバンドシアンかな?
これと、ワイドバンドブルーフルスペクトルホワイトを組み合わせたら、、、
ついに蛍光灯水槽にも太陽が降臨しますよ!

とりあえず国内の一般的なT8灯具の方は、上記バルブをすぐに試せます♪

一般的なT8蛍光灯灯具

巷の海水向けバルブの白系の多くは波長の欠落が多い3波長型なので、上記フルスペクトル白色バルブへ変更すれば色素タンパクに対するウィークポイントも克服されます。

ホワイト系蛍光灯の今までとこれからのスペクトル

また、海水向けバルブの青系もUV 400nmが欠落しているので、上記ワイドバンドブルーへ変更すれば蛍光タンパクはもれなく救済する事が叶うでしょう♪

ブルー系蛍光灯の今までとこれからのスペクトル

既存の蛍光灯を何本足しても補完できなかったUV 400nm域が、ワイドバンドブルー1本でガツンとカバー♪
蛍光タンパク励起波長域カバー率、世界最強!

そして、それらを白チャンネルと青チャンネルとしてブレンドした場合のスペクトル↓

ブルー+ホワイト系蛍光灯の今までとこれからのスペクトル

サンゴ飼育と色揚げのための夢の完全フルスペクトル蛍光灯構成を遂に実現!
もう、煩雑なバルブラインナップや波長不足に悩まされる必要はありません。
フルスペクトルな太陽の白とワイドバンドな深度の青、その2つさえあれば良い♪
まずは一般のT8灯具ユーザーさんからお試しください。

本数 用途 組み合わせ 実売価
2本 超浅場SPS 東芝 FL20SB 青色 (400nm強化) \580
東芝 FL20SF 生鮮食品用 昼白色 (580nm/660nm強化) \800
浅場SPS 東芝 FL20SB 青色 (400nm強化) \580
NEC FL20SN-SDL 高演色彩 昼白色 \240
好日ソフト NEC FL20SB 青色 \370
NEC FL20SN-SDL 高演色彩 昼白色 \240
深場LPS NEC FL20SB 青色 \370
東芝 FL20SBW 青白色 \580

* 上記はあくまでも波長再現ですから、必要な光量については本数で確保してください

2本に独立したコンセントがあるなら、タイマーを併用して、朝夕は青チャンネルのみで蛍光タンパク促進、日中は青+白でサンゴ礁再現♪なんてのもお勧めです。
3本以上での組み合わせでお悩みの方はご相談ください。

T5ユーザーさんは、どこかのアクアメーカーが名乗りを上げるか、僕が実現に関わる機会を得るまで、気長にお待ちください。

こちらのエントリーもどうぞ♪

T5レビュー:JBL SOLAR ULTRA

この記事を含むタグの全記事リスト: T5 スペクトル 蛍光灯

先日、海外通販で注文しておいた商品が、独と米国から届きました。
同時に注文して、約一週間後に同時に到着♪

独と米国から通販した商品が到着

中身はこれです。

独JBLと米国NaturesSunliteのT5バルブ

写真上から、

いずれもT5バルブです。

魅惑のフルスペクトル陣

JBLのT5は、前回提案したフルスペクトルT5を実験するために注文してみました。
公称スペクトルはこのようになっています↓

JBLの公称スペクトル

プリンス社のカラーランプ・ブルーと同じ蛍光体構成のワイドバンドブルーと、同JBLの製品ラインナップから見つけた淡水用のフルスペクトル白色9000K!
なんと! JBLのT5だけでフルスペクトルT5が実現しちゃうじゃん♪

そして、以前紹介した正真正銘フルスペクトル蛍光灯バルブVITA-LITEの互換を謳った、NaturesSunlite Full Spectrum 5500Kと言うフルスペクトルT5バルブも見つけました。恐らくVITA-LITEに近似なフルスペクトルを予想♪

NaturesSunliteが互換を謳ってるVITE-LITEの実測スペクトル

これだけ揃えば、
浅場フルスペクトルT5(KR93SP風)
超浅場フルスペクトルT5(KR93XP風)
実現できそうです♪

各バルブの発光色

まず、光色を確認してみました。
今回、同じバルブを各4本ずつ取り寄せたので、以下の写真はすべて同じバルブです。

JBL SOLAR MARINE BLUE ULTRA

JBL SOLAR MARINE BLUE ULTRA 発光色

ん~・・・なんか光量にバラツキがあるなぁ。。。

JBL SOLAR NATUR ULTRA

JBL SOLAR NATUR ULTRA 発光色

9000Kなので、ちょい青っぽい白色バルブですが、光量は揃ってます。

NaturesSunlite Full Spectrum F24T5 HO, 5500K, 91 CRI

NaturesSunlite Full Spectrum 5500K 発光色

あれれ、こっちは光色がかなりバラついてるなぁ。。。大丈夫かなぁ。。。

驚愕の実測スペクトル

さあ、お待ちかねのスペクトル測定結果です!
出力のバラつきを確認するために、各サンプル4本とも全て測定比較しています。

JBL SOLAR MARINE BLUE ULTRA

JBL SOLAR MARINE BLUE ULTRA 実測スペクトル

早速ですが、過去最悪の詐欺が発覚しました(大汗)
このスペクトル、各社も出してるただのActinicバルブです。。。
出力もかなりバラついてるし。。。

This is a real spectrum of JBL SOLAR MARINE BLUE ULTRA.
This bulb is a spectrum fraud product.
It was greatly different from the official spectrum of JBL.
This spectrum is the same as “Actinic” which many other makers supply.

JBL SOLAR NATUR ULTRA

JBL SOLAR NATUR ULTRA 実測スペクトル

上の青球の詐欺が酷すぎて可愛く見えますが、こっちもかなりの詐欺です(汗)
一般的な3波長蛍光灯と大差ないやん。。。

This is a real spectrum of JBL SOLAR NATUR ULTRA.
This bulb is a spectrum fraud product, too.
It was greatly different from the official spectrum of JBL.
This spectrum is the same spectrum as general 3 band fluorescent bulbs.

NaturesSunlite Full Spectrum F24T5 HO, 5500K, 91 CRI

NaturesSunlite Full Spectrum 5500K 実測スペクトル

フルスペクトルVITA-LITE互換ってことだけど、この場合の互換って、人間の目を欺く演色性だけの話のようです。所詮、スペクトルまでも踏襲したものではないってことね。
ま、同じVITA-LITEでさえ、スパイラル電球型は3波長だもんね。フルスペクトルは直管だけだもん。。。

実測スペクトルと公称スペクトルの比較

各グラフとも、赤線が実測スペクトルで、背景が公称スペクトルです。

JBL SOLAR MARINE BLUE ULTRA

JBL SOLAR MARINE BLUE ULTRA 公称スペクトルと実測スペクトルの比較

公称スペクトル自体は、実在するプリンス電機のカラーランプ・ブルーと同じものですが、中身は一般的なActinicバルブと言うオチ。。。こんな酷い詐欺は初めてです。。。

JBL SOLAR NATUR ULTRA

JBL SOLAR NATUR ULTRA 公称スペクトルと実測スペクトルの比較

相対比をどんなに調整してもシンクロ不能でした。。。

NaturesSunlite Full Spectrum F24T5 HO, 5500K, 91 CRI

VITE-LITE 実測スペクトルとNaturesSunlite Full Spectrum 5500K 実測スペクトルの比較

お願いだから、こんなスペクトルでフルスペクトルを謳わないで欲しいね。。。

以上、予想に反して気合いの抜けたタダの詐欺被害報告となりました(汗)
本当はフルスペクトルT5を満喫する記事になるはずだったのに。。。
今まではJBL社のスペクトルには感心してたのに、まさかこんな結果になるとは。。。
メーカーの公称スペクトルさえ信用できないとなると、今後は自分で実測したものしか勧められないなぁ。。。てことは、測定器持ってる人の仕事が増える。。。汗

と言う訳で、とりあえずフルスペクトルT5は当分お預けです。。。

こちらのエントリーもどうぞ♪

アクアT5進化論のための波長と演色講座

この記事を含むタグの全記事リスト: スペクトル 海洋雑学 蛍光灯

2014年1月、、、早くも月末ですが、、、

明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

お陰様で、1.023worldも遂に17年目に突入しましたよ。。。
17年って言ったら軽く女子高生が育っちゃいますよ。。。
恐ろしい。。。

さて、2014年ブログ第一弾はナニ書こうか・・・
スプリング問題は・・・暗いので後回し・・・汗
うーん・・・何か明るい話題を・・・
明るいと言えば・・・照明か?

じゃあ、前回の続きって事で、アクアT5の未来を探ってみましょう。
如何に現状の欠点を克服し、明るい未来の光に進化できるか!?
この機会に、光合成に関わる多様な色素を知り、波長と演色を正しく理解しましょう♪

まず、アクアT5バルブを各色ブレンドする意味から解説

アクアT5に関しては、未だにこんな文言を見かける事がありますよね。

「いろんなバルブを組み合わせることで波長が補完される」

しかしその文句が通用するのは、唯一420nmピークのActinicバルブを足す時だけです。
それ以外のバルブは、青も白もピンクも、残念ながら何を足そうと波長構成がまったく変わりません。

例えば、以前T5レビューまとめで測定したデータをすべて合成するとこうなります↓

アクア各社T5スペクトル

波長分布が見事に偏っているのが判ると思います。波長構成は主にに分かれていて、これらを足して作られた疑似白色が、アクアT5にも多い3波長蛍光灯です。
よって、どのバルブを何十本足しても、随所の波長の欠落が補完される事はありません。原因は、ほとんどのアクアT5バルブが、このような一般蛍光灯と同じ3波長蛍光体の流用・転用でまかなわれているからです。
そのため、アクアT5でバルブを混合する目的は、決して波長補完のためではなく、単なる光量確保か、演色(鑑賞)目的と言う事になります。そう、現状のアクアT5は、残念ながら「サンゴが必要としている波長の照射」には特化しておらず、あくまでもバルブの混合により青と緑と赤の比率を変化させて「好みの反射光を鑑賞する演色効果」を得ることが使命だからです。よって、一部の欠落した波長を要求するサンゴの色素にとっては、いずれ褪せるか消失していく運命にあります。それがT5での色落ちのカラクリと言えます。

改めて、アクアT5のバルブ混合に関しては、

「いろんなバルブを組み合わせることで好みの演色を楽しめる」

と言い表すのが正解と言えるでしょう。

T5バルブを供給してきたアクア各社の大罪・・・

なぜ、こんなことになったのか。。。
それは、あくまでも人間向け照明でしかない一般白色蛍光灯(蛍光体)を、アクアメーカー各社がそのままアクアに流用・転用したからでしょう。

そもそも我々人間の目は、「青+緑+赤=白に見える」と言う特性を持つため、あくまで我々の目を欺くだけなら、光源の波長はフルスペクトルである必要はありません。青と緑と赤がそれなりに混ざってさえいれば十分です。実際、3波長白色蛍光灯は最低限必要な蛍光体構成(青+緑+赤)しか入ってません。それでも擬似的に見える色は白だけではなく、シアンの波長が入ってなくても青+緑=シアンに見えますし、紫の波長が入ってなくても青+赤=紫が見えますし、黄の波長が入ってなくても緑+赤=黄も見えます。とにかくこの青・緑・赤の3色さえあれば、我々の照明としては十分に役を成すのです。

光源により「見える色」と、実際に含まれている波長の関係を具体的に見てみましょう。

光源により見える色と、実際に含まれる波長

蛍光灯は、その色を示す波長が入っていなくても、青・緑・赤の3色さえあれば、我々の目にはそれらの色・波長があたかもそこに存在するかのように見えてしまいます。それが、鑑賞面での感想として「蛍光灯は綺麗だなぁ・・・」と思ってるうちはまだ良いのですが、時に「蛍光灯は正しい色が映るなぁ・・・」と間違った解釈を招き広める危険性もあります。しかし、所詮それは虚構の色なのだと理解しなければなりません。
例えば、蛍光灯の部屋でバナナを見ているとします。一見、黄色く見えています。しかしそれはバナナ本来の色を表すための黄色の波長による発色ではなく、蛍光灯が持つ緑と赤の波長による緑+赤=偽物の黄色であり、真の黄色では無いのです。(3波長白色蛍光灯には多少の橙の波長も含まれるため実際にはもう少し黄色はマシに見えます)
このように、波長の有無に関係なく色を演じる事を、演色と言います。

ちなみに、演色性と言う指標も、色が綺麗に見えるかどうかを表した評価に過ぎませんから、演色評価数が高いからと言って光合成生物に必要な波長が十分に含まれていると言う事にはなりません。仮に今、青と赤による虚構の紫の光が降り注いだとしても、真の紫の波長を要求する光合成生物にとっては何の役にも立たない訳です。

以下は、アクアT5でも多い3波長白色蛍光灯の演色評価数を表したグラフです。

一般的な白色蛍光灯の演色性 グラフ引用元:TAISEI E&L.

演色評価数は、Ra1~Ra8までの代表的な平均演色評価数と、Ra9~Ra15までの特殊演色評価数で表されます。
例えば、蛍光灯の場合、シアン500nmの波長の含有率は極めて低いのですが、それを擬似的に表す青と緑の波長が強いので、Ra6の水色は十分に表現されています。しかし、このグラフのようにRa9の赤が弱いバルブの場合、緑+赤=黄も影響を受けるので、結果的に黄色を表すRa10も弱くなっています。特にこのような原色ほど波長不足の影響が顕著に表れます。一方、中間色の場合は、色再現性に原色の強度をあまり必要としないので、波長不足でもそれなりに近似値が得られ、Ra2の橙色のように評価が高くなる傾向があります。そのような関係がグラフから読み取る事ができると思います。

3年前の演色性の記事の際に作成した懐かしい画像も参考にしてください。

光源による色の見え方と演色性

3波長蛍光灯での黄色や赤の見え方に注目です。くすんでいるのが判ると思います。
このような波長条件で、果たして真の正しい色が見えるのでしょうか。。。
このような偏った波長を光合成生物に割り当てたら、果たしてどうなるのでしょう。。。

太陽光を利用する生物のためのスペクトル追求

1. 光合成色素とサンゴの色素タンパクと蛍光タンパクの要求波長帯

人間以外の生物、特に光合成生物などは、当たり前ですが太陽のフルスペクトル光を利用しています。ま、仮に特定の生物だけで見ればその波長の利用範囲は一部に限られるかも知れませんが、自然界には多種多様な光合成生物が存在するため、安易にクロロフィルだけをカバーした青+赤の照明ではなく、カロテノイドフィコビリンなどの色素も考慮に入れた波長構成の照明を用意しなければなりません。ましてやサンゴを飼育するなら、紫~青~シアン(400-500nm)の波長帯域を十分に確保しないと、多様な蛍光タンパクが維持できません。それが、サンゴ飼育、特にサンゴの色揚げにフルスペクトル光が求められる理由です。

改めて、光合成色素、サンゴの色素タンパク・蛍光タンパクの要求を見てみましょう。

光合成色素、色素タンパク、蛍光タンパクの吸収スペクトル

少なくとも光合成有効放射(400-700nm)に於いて、省ける波長はありませんね。
どうしてもと言うなら、690-700nmくらいなら省いて結構です(笑)
逆にUV 400nmは、多くの色素や蛍光がガンガン利用しているので省けません。。。

2. 蛍光タンパクの励起波長帯と発光波長帯、そして働き

以下は、昨年僕が調査したSPSの蛍光タンパクの吸収スペクトルと発光スペクトルです。
左の黒線が蛍光タンパクを励起する吸収スペクトル、色付きが発光スペクトルです。

SPSの蛍光タンパクの吸収スペクトルと発光スペクトル

* 1.023world SPS Color Report 2013 vol.1/vol.2 より

この調査により、単にサンゴの蛍光タンパクの発光スペクトルを知る事以外に、非常に多くの種の造礁サンゴで、UV 370nm/UV 400nm/Violet 420nmの波長に反応する蛍光タンパクCFP(Cyan Fluorescent Protein)を持ち合わせている事が判明しました。見た目も真っ青なスギノキブルーは勿論ですが、あまり視覚的に反映されているように見えないストロベリーやスパスラタでさえ、かなりのウェイトでこのシアン蛍光タンパクを持っていたのです。そしてこのことは、彼らが普段、如何に超浅場のサンゴ礁で多くの紫外線を浴びて生活してきたのかを、より明確に示唆しました。彼らは、蛍光タンパクを光合成の補助に用いる事以外に、紫外線から身を守る術として蛍光タンパクによる波長シフト(有害な短波長エネルギーを無害な長波長エネルギーへ変換すること)=紫外線バリアも駆使していた訳です。1998年のエルニーニョで白化から免れたサンゴの多くが蛍光タンパクを持っていた事からも、納得の結果となりました。

ちなみに、蛍光タンパクにはおおまかに以下のようなタイプがあります。

  • VFP(Violet Fluorescent Protein) バイオレット蛍光タンパク : UVで励起
  • BFP(Blue Fluorescent Protein) ブルー蛍光タンパク : UV~紫光で励起
  • CFP(Cyan Fluorescent Protein) シアン蛍光タンパク : UV~青光で励起
  • GFP(Green Fluorescent Protein) グリーン蛍光タンパク : 青光で励起
  • YFP(Yellow Fluorescent Protein) イエロー蛍光タンパク : 青~緑光で励起
  • RFP(Red Fluorescent Protein) レッド蛍光タンパク : 青~黄光で励起

サンゴが持つ蛍光タンパクで見ると、BFPやCFP等の短波長励起タイプほど浅場に多く生息し、YFPやRFPの長波長タイプほど深場に分布しています。これらのことは、海中に届いている波長分布からも想像に易いと思いますが、浅場ほど紫外線バリアの意味が強く、深場ほど光合成効率アップのための波長補完の意味が強いと考えられます。

3. 紫外線を利用する生体への模範的な製品作り

また、紫外線を利用するケースは光合成以外のシーンでも多く見られます。例えば、赤い果実やブルーベリーの紫のアントシアニン色素は、紫外線により合成が促進されます。また、爬虫類の仲間は体内でのビタミン合成に紫外線(UVB)を利用してしています。そのため、爬虫類向け照明を供給している各社は、本当の意味で生体に必要なスペクトルにこだわって製品を開発されています。中でもZooMed社のUVB蛍光灯は、UVB以外の可視光線域もフルスペクトルとなっており、その波長クオリティは本当に秀逸です。一見、UVBさえ入っていれば可視光線の部分なんて一般蛍光灯と同じでも良さそうなモノですし、実際そのような製品もある中、ZooMed社の製品には「爬虫類が本来浴びていたはずの太陽の恵みを当たり前に与えたい」と言う強いこだわりが感じられました。詳しくは、以前掲載した各社UVB蛍光灯の測定データもご参考ください。

爬虫類用UVB蛍光灯スペクトル

アクア各社の怠慢・・・だが探せば良いモノはある!

一方、アクアメーカーは、なぜ一般蛍光灯をそのまま流用してしまったのか。。。
なぜアクアに特化した独自の蛍光体ブレンドを開発しなかったのか。。。
すべてはコストが理由か? はたまたスキル不足か?
これだけの数のアクアメーカーが、揃いも揃ってなぜ同じ製品ばかり。。。

しかし、実はそれをわざわざ独自開発するまでも無かったのです。
知識さえあれば、調査さえしていれば、大手の製品群の中から有益なモノが見つけられたはずなのです。

例えばこれ↓

欠落の無い白色フラットスペクトル

前回のこばやし氏の自作T5照明で採用されていた白系バルブのスペクトルです。

  • 660nm前後は弱いがUV域を十分に含むNEC FL8D 昼光色
  • UV域は含まないが660nm前後を十分に含む東芝FL8N-EDL 昼白色

アクア向け照明の基本白色光としては、こんな理想的なバルブは他に無いでしょう。
一般白色蛍光灯に欠けているUV 400nm前後、シアン500nm前後、黄色570nm前後、赤640nm前後、等が全て含まれ、と言うかそもそもスペクトルがフラットな連続であり、可視光線に於いて欠落自体が存在しません。
このように、フルスペクトルの白色蛍光灯に必要な蛍光体は既に存在していた訳です。わざわざ開発しなくても、これさえ見つけていれば。。。

ちなみに、このようなフルスペクトルの蛍光灯になると、演色性もかなり向上します。

Ra99の蛍光灯の演色性グラフ グラフ引用元:TAISEI E&L.

緑と赤の波長が十分な事による黄色の再現性は勿論、そもそも黄色の波長自体が十分に含まれていてるため、すべてが高得点となっています。要するに、蛍光灯でも超高演色を突き詰めていくと、結局先述のようなフルスペクトルが必要になると言う訳です。ま、全部の色(波長)が入ってる訳ですから、当然と言えば当然ですが。逆に、3波長蛍光灯でRa95以上を叩き出すのは至難の業です。

蛍光灯の演色に関する結論:
可視光線の全ての波長を含むフルスペクトルでこそ、色は正しく見えるのです。

ちなみに、植物育成用蛍光灯も気になるところですが、実はこんなスペクトルでした。

植物育成用蛍光灯スペクトル

そう、一般蛍光灯に660nmを足しただけのモノでした(NEC FL8BR-HGの場合)
また、ATI AquablueSpecial 等の白系のアクアT5バルブも、一般白色蛍光灯とほとんど同じ波長構成のスペクトルになります。

既製T5バルブの存在を覆す、理想のバルブ構成とは?

と言う訳で、波長の欠落の無い理想的なフルスペクトル白系バルブと、前回ご紹介したプリンス電機のワイドバンドブルーを用いれば、最低限の構成でフルスペクトルT5照明が構築できます♪

波長合成に有意義で理想的なT5スペクトル

ほら、これらのバルブを組み合わせれば波長の欠落がありません♪

ん?
この構成は、、、もしや、、、
“太陽”の白チャンネルと、“深度”の青チャンネル

■水深3-5M 浅場向けT5構成 (フルスペKR93SP風)

  • 太陽の白チャンネル:NEC FL8D
  • 深度の青チャンネル:プリンス電機 FL8B

KR93SP風 浅場向けチャンネルパターン

基本は白と青を1:1のブレンドでOK。蛍光タンパクを強化するなら白1:青2も良し♪

■水深0-3M 超浅場向けT5構成 (フルスペKR93XP風)

  • 太陽の白チャンネル:東芝 FL8N-EDL
  • 深度の青チャンネル:プリンス電機 FL8B

KR93XP風 超浅場向けチャンネルパターン

基本は白と青を1:1のブレンドでOK。色素タンパクを極めるなら白2:青1も良し♪

このように、蛍光灯でもメタハラのようなフルスペクトルを構築することは可能な訳ですから、それって、メタハラと同じ飼い方がT5でも期待できるって事を意味しますよね(もちろん光量は必要ですが・・・)。ならば、ZEOvitのようなシビアな水質コントロールに頼らずとも、T5だけでも波長にシビアなサンゴの真の色揚げが可能になるかも知れません。。。

蛍光灯の波長に関する結論:
蛍光灯でも波長の欠落の無いフルスペクトルは実現可能です。

アイデアの使用や商品化は、発案者の利用許諾を得てから!

あとは、どこかのアクアメーカーがこれらの蛍光体を使って必要なサイズのT5バルブを供給するだけです。興味があるメーカーさんは、発案者であるこばやし氏にご相談ください。
尚、ネット上のアイデアには必ず発案者の著作権が存在しますので、くれぐれも無断で盗用したり、ましてや勝手に商品化して利益を搾取する事の無いよう注意しましょう。

こちらのエントリーもどうぞ♪