2014年1月、、、早くも月末ですが、、、
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
お陰様で、1.023worldも遂に17年目に突入しましたよ。。。
17年って言ったら軽く女子高生が育っちゃいますよ。。。
恐ろしい。。。
さて、2014年ブログ第一弾はナニ書こうか・・・
スプリング問題は・・・暗いので後回し・・・汗
うーん・・・何か明るい話題を・・・
明るいと言えば・・・照明か?
じゃあ、前回の続きって事で、アクアT5の未来を探ってみましょう。
如何に現状の欠点を克服し、明るい未来の光に進化できるか!?
この機会に、光合成に関わる多様な色素を知り、波長と演色を正しく理解しましょう♪
まず、アクアT5バルブを各色ブレンドする意味から解説
アクアT5に関しては、未だにこんな文言を見かける事がありますよね。
「いろんなバルブを組み合わせることで波長が補完される」
しかしその文句が通用するのは、唯一420nmピークのActinicバルブを足す時だけです。
それ以外のバルブは、青も白もピンクも、残念ながら何を足そうと波長構成がまったく変わりません。
例えば、以前T5レビューまとめで測定したデータをすべて合成するとこうなります↓
波長分布が見事に偏っているのが判ると思います。波長構成は主に青と緑と赤に分かれていて、これらを足して作られた疑似白色が、アクアT5にも多い3波長蛍光灯です。
よって、どのバルブを何十本足しても、随所の波長の欠落が補完される事はありません。原因は、ほとんどのアクアT5バルブが、このような一般蛍光灯と同じ3波長蛍光体の流用・転用でまかなわれているからです。
そのため、アクアT5でバルブを混合する目的は、決して波長補完のためではなく、単なる光量確保か、演色(鑑賞)目的と言う事になります。そう、現状のアクアT5は、残念ながら「サンゴが必要としている波長の照射」には特化しておらず、あくまでもバルブの混合により青と緑と赤の比率を変化させて「好みの反射光を鑑賞する演色効果」を得ることが使命だからです。よって、一部の欠落した波長を要求するサンゴの色素にとっては、いずれ褪せるか消失していく運命にあります。それがT5での色落ちのカラクリと言えます。
改めて、アクアT5のバルブ混合に関しては、
「いろんなバルブを組み合わせることで好みの演色を楽しめる」
と言い表すのが正解と言えるでしょう。
T5バルブを供給してきたアクア各社の大罪・・・
なぜ、こんなことになったのか。。。
それは、あくまでも人間向け照明でしかない一般白色蛍光灯(蛍光体)を、アクアメーカー各社がそのままアクアに流用・転用したからでしょう。
そもそも我々人間の目は、「青+緑+赤=白に見える」と言う特性を持つため、あくまで我々の目を欺くだけなら、光源の波長はフルスペクトルである必要はありません。青と緑と赤がそれなりに混ざってさえいれば十分です。実際、3波長白色蛍光灯は最低限必要な蛍光体構成(青+緑+赤)しか入ってません。それでも擬似的に見える色は白だけではなく、シアンの波長が入ってなくても青+緑=シアンに見えますし、紫の波長が入ってなくても青+赤=紫が見えますし、黄の波長が入ってなくても緑+赤=黄も見えます。とにかくこの青・緑・赤の3色さえあれば、我々の照明としては十分に役を成すのです。
光源により「見える色」と、実際に含まれている波長の関係を具体的に見てみましょう。
蛍光灯は、その色を示す波長が入っていなくても、青・緑・赤の3色さえあれば、我々の目にはそれらの色・波長があたかもそこに存在するかのように見えてしまいます。それが、鑑賞面での感想として「蛍光灯は綺麗だなぁ・・・」と思ってるうちはまだ良いのですが、時に「蛍光灯は正しい色が映るなぁ・・・」と間違った解釈を招き広める危険性もあります。しかし、所詮それは虚構の色なのだと理解しなければなりません。
例えば、蛍光灯の部屋でバナナを見ているとします。一見、黄色く見えています。しかしそれはバナナ本来の色を表すための黄色の波長による発色ではなく、蛍光灯が持つ緑と赤の波長による緑+赤=偽物の黄色であり、真の黄色では無いのです。(3波長白色蛍光灯には多少の橙の波長も含まれるため実際にはもう少し黄色はマシに見えます)
このように、波長の有無に関係なく色を演じる事を、演色と言います。
ちなみに、演色性と言う指標も、色が綺麗に見えるかどうかを表した評価に過ぎませんから、演色評価数が高いからと言って光合成生物に必要な波長が十分に含まれていると言う事にはなりません。仮に今、青と赤による虚構の紫の光が降り注いだとしても、真の紫の波長を要求する光合成生物にとっては何の役にも立たない訳です。
以下は、アクアT5でも多い3波長白色蛍光灯の演色評価数を表したグラフです。
グラフ引用元:TAISEI E&L.
演色評価数は、Ra1~Ra8までの代表的な平均演色評価数と、Ra9~Ra15までの特殊演色評価数で表されます。
例えば、蛍光灯の場合、シアン500nmの波長の含有率は極めて低いのですが、それを擬似的に表す青と緑の波長が強いので、Ra6の水色は十分に表現されています。しかし、このグラフのようにRa9の赤が弱いバルブの場合、緑+赤=黄も影響を受けるので、結果的に黄色を表すRa10も弱くなっています。特にこのような原色ほど波長不足の影響が顕著に表れます。一方、中間色の場合は、色再現性に原色の強度をあまり必要としないので、波長不足でもそれなりに近似値が得られ、Ra2の橙色のように評価が高くなる傾向があります。そのような関係がグラフから読み取る事ができると思います。
3年前の演色性の記事の際に作成した懐かしい画像も参考にしてください。
3波長蛍光灯での黄色や赤の見え方に注目です。くすんでいるのが判ると思います。
このような波長条件で、果たして真の正しい色が見えるのでしょうか。。。
このような偏った波長を光合成生物に割り当てたら、果たしてどうなるのでしょう。。。
太陽光を利用する生物のためのスペクトル追求
1. 光合成色素とサンゴの色素タンパクと蛍光タンパクの要求波長帯
人間以外の生物、特に光合成生物などは、当たり前ですが太陽のフルスペクトル光を利用しています。ま、仮に特定の生物だけで見ればその波長の利用範囲は一部に限られるかも知れませんが、自然界には多種多様な光合成生物が存在するため、安易にクロロフィルだけをカバーした青+赤の照明ではなく、カロテノイドやフィコビリンなどの色素も考慮に入れた波長構成の照明を用意しなければなりません。ましてやサンゴを飼育するなら、紫~青~シアン(400-500nm)の波長帯域を十分に確保しないと、多様な蛍光タンパクが維持できません。それが、サンゴ飼育、特にサンゴの色揚げにフルスペクトル光が求められる理由です。
改めて、光合成色素、サンゴの色素タンパク・蛍光タンパクの要求を見てみましょう。
少なくとも光合成有効放射(400-700nm)に於いて、省ける波長はありませんね。
どうしてもと言うなら、690-700nmくらいなら省いて結構です(笑)
逆にUV 400nmは、多くの色素や蛍光がガンガン利用しているので省けません。。。
2. 蛍光タンパクの励起波長帯と発光波長帯、そして働き
以下は、昨年僕が調査したSPSの蛍光タンパクの吸収スペクトルと発光スペクトルです。
左の黒線が蛍光タンパクを励起する吸収スペクトル、色付きが発光スペクトルです。
* 1.023world SPS Color Report 2013 vol.1/vol.2 より
この調査により、単にサンゴの蛍光タンパクの発光スペクトルを知る事以外に、非常に多くの種の造礁サンゴで、UV 370nm/UV 400nm/Violet 420nmの波長に反応する蛍光タンパクCFP(Cyan Fluorescent Protein)を持ち合わせている事が判明しました。見た目も真っ青なスギノキブルーは勿論ですが、あまり視覚的に反映されているように見えないストロベリーやスパスラタでさえ、かなりのウェイトでこのシアン蛍光タンパクを持っていたのです。そしてこのことは、彼らが普段、如何に超浅場のサンゴ礁で多くの紫外線を浴びて生活してきたのかを、より明確に示唆しました。彼らは、蛍光タンパクを光合成の補助に用いる事以外に、紫外線から身を守る術として蛍光タンパクによる波長シフト(有害な短波長エネルギーを無害な長波長エネルギーへ変換すること)=紫外線バリアも駆使していた訳です。1998年のエルニーニョで白化から免れたサンゴの多くが蛍光タンパクを持っていた事からも、納得の結果となりました。
ちなみに、蛍光タンパクにはおおまかに以下のようなタイプがあります。
- VFP(Violet Fluorescent Protein) バイオレット蛍光タンパク : UVで励起
- BFP(Blue Fluorescent Protein) ブルー蛍光タンパク : UV~紫光で励起
- CFP(Cyan Fluorescent Protein) シアン蛍光タンパク : UV~青光で励起
- GFP(Green Fluorescent Protein) グリーン蛍光タンパク : 青光で励起
- YFP(Yellow Fluorescent Protein) イエロー蛍光タンパク : 青~緑光で励起
- RFP(Red Fluorescent Protein) レッド蛍光タンパク : 青~黄光で励起
サンゴが持つ蛍光タンパクで見ると、BFPやCFP等の短波長励起タイプほど浅場に多く生息し、YFPやRFPの長波長タイプほど深場に分布しています。これらのことは、海中に届いている波長分布からも想像に易いと思いますが、浅場ほど紫外線バリアの意味が強く、深場ほど光合成効率アップのための波長補完の意味が強いと考えられます。
3. 紫外線を利用する生体への模範的な製品作り
また、紫外線を利用するケースは光合成以外のシーンでも多く見られます。例えば、赤い果実やブルーベリーの紫のアントシアニン色素は、紫外線により合成が促進されます。また、爬虫類の仲間は体内でのビタミン合成に紫外線(UVB)を利用してしています。そのため、爬虫類向け照明を供給している各社は、本当の意味で生体に必要なスペクトルにこだわって製品を開発されています。中でもZooMed社のUVB蛍光灯は、UVB以外の可視光線域もフルスペクトルとなっており、その波長クオリティは本当に秀逸です。一見、UVBさえ入っていれば可視光線の部分なんて一般蛍光灯と同じでも良さそうなモノですし、実際そのような製品もある中、ZooMed社の製品には「爬虫類が本来浴びていたはずの太陽の恵みを当たり前に与えたい」と言う強いこだわりが感じられました。詳しくは、以前掲載した各社UVB蛍光灯の測定データもご参考ください。
アクア各社の怠慢・・・だが探せば良いモノはある!
一方、アクアメーカーは、なぜ一般蛍光灯をそのまま流用してしまったのか。。。
なぜアクアに特化した独自の蛍光体ブレンドを開発しなかったのか。。。
すべてはコストが理由か? はたまたスキル不足か?
これだけの数のアクアメーカーが、揃いも揃ってなぜ同じ製品ばかり。。。
しかし、実はそれをわざわざ独自開発するまでも無かったのです。
知識さえあれば、調査さえしていれば、大手の製品群の中から有益なモノが見つけられたはずなのです。
例えばこれ↓
前回のこばやし氏の自作T5照明で採用されていた白系バルブのスペクトルです。
- 660nm前後は弱いがUV域を十分に含むNEC FL8D 昼光色。
- UV域は含まないが660nm前後を十分に含む東芝FL8N-EDL 昼白色。
アクア向け照明の基本白色光としては、こんな理想的なバルブは他に無いでしょう。
一般白色蛍光灯に欠けているUV 400nm前後、シアン500nm前後、黄色570nm前後、赤640nm前後、等が全て含まれ、と言うかそもそもスペクトルがフラットな連続であり、可視光線に於いて欠落自体が存在しません。
このように、フルスペクトルの白色蛍光灯に必要な蛍光体は既に存在していた訳です。わざわざ開発しなくても、これさえ見つけていれば。。。
ちなみに、このようなフルスペクトルの蛍光灯になると、演色性もかなり向上します。
グラフ引用元:TAISEI E&L.
緑と赤の波長が十分な事による黄色の再現性は勿論、そもそも黄色の波長自体が十分に含まれていてるため、すべてが高得点となっています。要するに、蛍光灯でも超高演色を突き詰めていくと、結局先述のようなフルスペクトルが必要になると言う訳です。ま、全部の色(波長)が入ってる訳ですから、当然と言えば当然ですが。逆に、3波長蛍光灯でRa95以上を叩き出すのは至難の業です。
蛍光灯の演色に関する結論:
可視光線の全ての波長を含むフルスペクトルでこそ、色は正しく見えるのです。
ちなみに、植物育成用蛍光灯も気になるところですが、実はこんなスペクトルでした。
そう、一般蛍光灯に660nmを足しただけのモノでした(NEC FL8BR-HGの場合)
また、ATI AquablueSpecial 等の白系のアクアT5バルブも、一般白色蛍光灯とほとんど同じ波長構成のスペクトルになります。
既製T5バルブの存在を覆す、理想のバルブ構成とは?
と言う訳で、波長の欠落の無い理想的なフルスペクトル白系バルブと、前回ご紹介したプリンス電機のワイドバンドブルーを用いれば、最低限の構成でフルスペクトルT5照明が構築できます♪
ほら、これらのバルブを組み合わせれば波長の欠落がありません♪
ん?
この構成は、、、もしや、、、
“太陽”の白チャンネルと、“深度”の青チャンネル♪
■水深3-5M 浅場向けT5構成 (フルスペKR93SP風)
- 太陽の白チャンネル:NEC FL8D
- 深度の青チャンネル:プリンス電機 FL8B
基本は白と青を1:1のブレンドでOK。蛍光タンパクを強化するなら白1:青2も良し♪
■水深0-3M 超浅場向けT5構成 (フルスペKR93XP風)
- 太陽の白チャンネル:東芝 FL8N-EDL
- 深度の青チャンネル:プリンス電機 FL8B
基本は白と青を1:1のブレンドでOK。色素タンパクを極めるなら白2:青1も良し♪
このように、蛍光灯でもメタハラのようなフルスペクトルを構築することは可能な訳ですから、それって、メタハラと同じ飼い方がT5でも期待できるって事を意味しますよね(もちろん光量は必要ですが・・・)。ならば、ZEOvitのようなシビアな水質コントロールに頼らずとも、T5だけでも波長にシビアなサンゴの真の色揚げが可能になるかも知れません。。。
蛍光灯の波長に関する結論:
蛍光灯でも波長の欠落の無いフルスペクトルは実現可能です。
アイデアの使用や商品化は、発案者の利用許諾を得てから!
あとは、どこかのアクアメーカーがこれらの蛍光体を使って必要なサイズのT5バルブを供給するだけです。興味があるメーカーさんは、発案者であるこばやし氏にご相談ください。
尚、ネット上のアイデアには必ず発案者の著作権が存在しますので、くれぐれも無断で盗用したり、ましてや勝手に商品化して利益を搾取する事の無いよう注意しましょう。
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