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串本遠征2013年9月:サンゴ篇

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今回は、前回の串本で収集してきた情報をまとめ、

自然の海から学ぼう~串本のサンゴ編

をお送りします。
本当はもっと良い写真が撮れたら良かったけど、とにかく透明度が悪くて大した写真が撮れなかったので、軽い内容&今さら感でのお届けになりますが、どうぞご容赦くだされ。

タイドプールのサンゴ:水深0-50cm

タイドプールには超強力な太陽光をこれでもかと浴びて生活するサンゴが多数♪
例えばハマサンゴの仲間があちこちにマイクロアトールを形成しています。
大抵は地味な茶色系ですが、中には↓こんな綺麗な蛍光シアン&グリーンも♪

蛍光グリーンのハマサンゴかな?

水深0Mから分布を開始するとは、グリーン蛍光タンパクはなんて万能なんでしょう♪
あるいは透明度や緯度も関係があるのかしら? ら?

そして、より海水の往来の激しい水路には、それを好むサンゴが。。。
その代表とも言えるのがハナヤサイです♪

小さなハナヤサイ♪

気付かなかったけど、偶然右端にユビワサンゴヤドカリも特別出演してました(曝)
そう、ハナヤサイもユビワサンゴヤドカリも激流が大好きなんです♪

ちなみに、このハナヤサイは干潮時に水深10cm以下になりそうな水路にいました。
水上から見るとこんな構図です↓

水路のハナヤサイの位置

とは言え、潮通しの激しい水路と言われてもなかなかピンと来ませんよね?
そこで、動画も撮ってきました♪

こんな状況でも平気でポリプ出してんだから、如何に水流に強いかが伺えますね。
コレに比べたら、水槽なんて所詮ため池か。。。汗

穏やかな湾のサンゴ:水深1-2M

タイドプールの次は、比較的流れの穏やかな湾へ潜ってみましょう。。。
まずは水深1-2M程度のスギノキゾーン。

おっと、グリーン蛍光スギノキは生え替わり間もない新芽のようです???
一方、茶色スギノキは野放し状態で伸び伸びと生え放題のようです!
・・・グリーン蛍光スギノキの身に一体何がっ!?

スギノキミドリイシ畑

スギノキミドリイシ畑2

どー見ても個人の伐採量じゃ無いね。。。
もしも蛍光グリーンのスギノキが流通してるなんて話があったら教えてくださいね。

ところで、スギノキの根元をよく見ると、、、

ミドリイシの根元は剥げるのがデフォです♪2

ミドリイシの根元は剥げるのがデフォです♪

あらら白化、、、ではなく、共肉が剥げて白骨化しています。
はい、実は光の回らない部位、そして有光部位から遠い根元の部位ほど、大抵このように白骨化しているのがデフォだったりします。

だって、考えてもみてくださいよ。
サンゴが剥げずに生き続けたら、いつまで経ってもサンゴの島は形成されませんよ。
↓ほら、サンゴの下には、歴代の白骨サンゴが連ねているんです。。。だから島になる♪

ミドリイシの根元は剥げるのがデフォです♪3

水槽内でも、どうしても光の当たらない&有光部位から離れた部位は、ある程度は剥げても仕方ないんですよね。。。それがイヤなら、サンゴをあまり密集させない、水面全体を照らせるように多灯する、など工夫が必要です。

穏やかな湾のサンゴ:水深3-4M

そして串本の場合、水深3-4Mくらいになると、蛍光オレンジや蛍光レッドのサンゴも増えてきます。やはり海水の透明度や緯度による太陽光線のスペクトル分布にも影響していると思われます。

↓これはキクメイシかな。

蛍光オレンジのキクメイシ

蛍光レッドのキクメイシ

この水深にはどんな光量がどんなスペクトルで届いているのでしょう?
それは先月測定した串本の水深スペクトルを参考にしてください。共に同じ湾です。
サンゴの気持ちになれば、いろんな事に気付いたり、見えてきたりしますよ♪

* 一部の写真はだに兄からお借りしました

この記事のまとめ

およそ以下のようなことが読み取れたかなと思います。

サンゴの色彩

水深、太陽の位置、緯度、海水の透明度

光量とスペクトルに影響

サンゴの色彩(蛍光タンパク、色素タンパク)に影響

サンゴの白化回避

比較的浅場の水流強度

水面の揺らぎによる光強度の分散、海水交換とサンゴの冷却に寄与

強光障害の低減(白化予防)と光の回り込み(拡散)効果
熱の発散に関与するアンテナ色素(カロテノイド等)の効率アップ(白化予防)

サンゴの影の部分の斃死

サンゴの密集状態、光源の面積不足、単に光量不足

光の回り込み不足、光合成エネルギーの伝達不足

サンゴの部分斃死(根元の白骨化等)

いつもの見慣れた当たり前の光景に、ふと立ち止まって改めて意味を考えてみると、見過ごしてきた何かが見えてきますね。いやぁ、サンゴ飼育って本当に奥が深い。僕も今回そう強く感じました。

次回、機会があれば、もっと透明度の良い、もっとサンゴの種類の豊富な、
沖縄で調べてみたいと思います~♪
どこかに調査費用落ちてないかなぁ~曝

こちらのエントリーもどうぞ♪

プチ雑学:光とサンゴ篇

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調べ物してたら良い読み物があったのでご紹介しておきます。
(前にも同じの出してたらすみません・・・歳とると記憶が・・・汗)

引用元:AMSL 阿嘉島臨海研究所
挿絵:1.023world

トップ > 刊行物 > みどりいし > No.13 2002年3月 目次 >
刺胞動物と蛍光タンパク質法 (PDF)

(抜粋)
採集した蛍光性サンゴと非蛍光性サンゴに強い紫外光を照射すると、後者においてより顕著に光合成阻害が認められた。褐虫藻のクロロフィルが三重項励起状態に移行して、活性酸素による光合成器官の破壊が起こったものと考えられる。この結果から、蛍光タンパク質が褐虫藻を強い日光から保護することが示唆された。その保護機序としては、太陽光の強度を弱めること、太陽光に含まれる短波長成分を長波長にシフトすることが考えられる。実際、1998年に大堡礁で起こったサンゴの大規模な白化現象においてサンプリングしたものを調査したところ、蛍光タンパク質を発現する個体ほど白化しない傾向が確かめられている(Salihet al.2000)。

* 強調は当方による

1998年のエルニーニョによるサンゴの白化状況

これは水槽にも言えることですが、例えば波長不足等で蛍光タンパクが減退するような環境で飼育されていたサンゴにある日突然強いUVを照射したら、蛍光をしっかり持った通常の状態のサンゴに比べ、何らかの光障害に至る可能性が非常に高いと言えます。そこを見落として単に「UVはアカンな~」と解釈するのはナンセンスですね。本質を見抜く力を養いましょう。当てるなら時間をかけて少しずつ蛍光を呼び戻しながら慎重に。

トップ > 刊行物 > みどりいし > No.13 2002年3月 目次 >
サンゴ礁海域の光環境について (PDF)

(抜粋)
この地上に達した紫外線は海水中においてどのくらいの深さまで浸透するのだろうか? 海水中での紫外線も可視光線と同様、透明度などの要因によって滅衰する。Glynn(1993)が瀬底島のサンゴ礁で測定したところ、水深 3-4m では海面における紫外線照射量の約 50%が届いていた。またDunneand Brown(1996)によれぱ、紫外線照射量は沿岸海域では水深 3-6m で海面における照射量の 1%に、環礁付近の海域では水深 11m で 1%に減衰した。このように報告されている観測値にはかなりのぱらつきが認められるが、透明度の高いサンゴ礁海域であれば、礁斜面の造礁サンゴが観察される水深 20mまでは滅衰しながら確実に浸透しているようである。

* 強調は当方による

水深による海中スペクトルの違い

串本でさえこの結果ですから、やはり沖縄や南国のサンゴ礁ならもっと強いUVが深場に届いてるのでしょうね~。色彩豊かな蛍光タンパクが多いはずです♪
あ~早く沖縄でもスペクトル測定してみた~い!

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すべての答え:蛍光タンパク篇2

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前回のすべての答え:蛍光タンパク篇では、SPSカラーレポート第一弾の中からスパスラタのシアン蛍光タンパクCFPをご紹介しましたが、今回はSPSカラーレポート第二弾の中からグリセアコモンのグリーン蛍光タンパクGFPをご紹介します。
ご存じの通り、GFPはサンゴの中でももっともポピュラーな蛍光タンパクです。

グリセアコモン・蛍光グリーン

このグリセアコモンは凄いですよ。いや、GFPが凄いと言うべきか。。。
文献を失念しましたが、確か生物由来の蛍光タンパクの発光効率は化学合成の蛍光色素の非では無い、とかどうとか。。。まさにそれを痛感するような発光量を体験できました♪

見よ! このとんでもない反射スペクトルを!

グリセアコモン・蛍光グリーン 反射スペクトル

このグラフは前回でも触れたとおり、370/400/425/450/475/500nm等の出力を揃えたLEDを個別にサンゴに照射して得た反射スペクトルですが、他のサンゴはいずれも反射スペクトルを10倍程度に拡大しないとその蛍光スペクトルを拾い出すのは非常に困難でしたが、なんとこのグリセアコモンの蛍光スペクトルは僅か3倍に拡大しただけでこの発光強度が確認できるのです。

賢明なスペクトルマニアの皆さんなら、このグラフからだけでも判りますよね?
そう、この中からは、ピーク520nmのグリーン蛍光GFPの存在が読み取れます。

では、LEDごとに個別に見ていきましょう。

グリセアコモン・蛍光グリーン LEDごとの反射スペクトル

475nmと500nmなんて、光源と蛍光の強度関係が逆転しちゃってます(笑)
まあ、それだけ光源の波長を吸収しているという証拠でもあります。

これはグリセアコモンに限らず、一般的な蛍光グリーンのサンゴならいずれも当てはまると思います。蛍光グリーンは海洋でももっともポピュラーな蛍光タンパクで、最初に発見された蛍光タンパクがオワンクラゲからのGFPだったくらいです(下村, 1962)。そして上記グラフからも判るように、これが何を意味するかというと、それらのサンゴが生息する水深のスペクトルの主要波長がおよそ420/450/475/500nmで構成されていると言うことです。その環境に適した蛍光タンパクがまさにGFPなのでしょう。

また、その励起範囲と励起量から見て、水槽でもとりあえず一般的なロイヤルブルー450nmやブルー460-470nmあたりを当てておけば十分に蛍光グリーンが励起されることも判ります。LEDにしろ蛍光灯にしろ世のアクア向けライトにはこれらの波長はほぼ確実に入っていますから、それが蛍光グリーンの維持の容易さにも繋がっているのでしょう。

そして、上記のグラフから蛍光スペクトルのみを単離するとこうなります。

グリセアコモン・蛍光グリーン GFPスペクトル

ブルー蛍光BFPやシアン蛍光CFPと違い、グリーン蛍光GFPの励起にはUV 370nmやUV 400nmはほとんど必要ありません。完璧を期す場合でも420nmあたりから500nmまでカバーした光源があれば十分ですし、極端に言えば450nmや460-470nmだけでもそこそこの励起量になるでしょう。スターポリプ、ウミキノコ、ハナガササンゴなど、メジャーなサンゴ飼育の光源で悩まないのはそういうカラクリだったのです♪

まあ、それはそれ、これはあくまでも蛍光タンパクのみに言及した話であって、それとは別に肝心の光合成をカバーするだけの光条件は少なからず必要になります。まあそれでも普通の白色LEDなり白色蛍光灯でも十分だと思いますが。

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