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AQUARAMA 2015とTRITON LANI LED

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今宵は、現在開催中のAQUARAMA 2015から活きの良い情報をお届けします♪

AQUARAMA 2015

え?
僕ですか?
行ってませんけど、何か?笑
やだな~僕は行ってもないのに行ったフリなんてしませんよ~♪
シンガポールへの旅費なんて捻出できるキャパないからね~泣

実は、最近話題のトリトンも出てるって聞いたので、今回AQUARAMAに参加されたBH和田氏とテツオ氏に、トリトンの”LANI LED“の潜入捜査をお願いしてたんです(笑)
さすがLEDオタク♪笑
だって、なかなか目にする機会が無いんだもん。。。
今後、国内でも販売するんだろうか?

オマケ: 【facebook動画】 BH和田×テツオ×Ehsan(トリトン)対談 (笑)

以下、写真は和田氏&テツオ氏のfacebookから。

AQUARAMA 2015のTRITON水槽

ほほお~これがトリトンのLEDですか~

TRITON LANI LED

これは、UV系と白系と青系で構成されてるから、“Lani One”って奴ですね。
公式サイトによれば、赤が入った“Lani Pro”ってモデルもあるようです。

以下、公式サイトより各モデルのLED素子構成を抜粋。

■TRITON “LANI PRO”

32x CREE XT-E, white
32x CREE XP-E, blue
16x purple
8x red
8x deep red
8x royal blue

■TRITON “LANI ONE”

32x CREE XT-E, white
32x CREE XP-E, blue
16x purple

あ、この素子リストの中のpurpleって、UV系素子のVioletの事ですからね。
たまに青チップ+赤チップのデュアルチップ素子のことをパープルって言ったりするけど、このページってどうも機械翻訳でドイツ語から英語に変換されてるみたいで、420nm前後の波長を表すすみれ色のことをVioletって訳したりPurpleって訳す癖があるみたい(笑)
勿論ドイツ語のページには、LED素子はPurpleではなくVioletと記してあります。
ま、ページを一通り読めば、バイオレットとブルーで強い蛍光を得てるって書いてあるので判るはずですが、一応念のためトリトンにも直接聞いてきてもらったと言う訳です。

とその前に、各モデルページに記載された文言の確認 (各上が原文、下が日本語訳)

Dimmability
Dimmable 0 – 100% via three separate channels (violet, blue and white).

調光機能
Violet/Blue/Whiteの3つのチャンネルによる0-100%の調光が可能。

Perfect spectrum for growth and colouring
The spectra of the three base LEDs (violet, blue and white) are…

成長と色揚げに最適なスペクトル
Violet/Blue/Whiteの3つのベースLEDのスペクトルは…

Great fluorescence
Thanks to the special wavelengths of the installed LEDs, fluorescence in the violet and blue phase is noticeably stronger.

素晴らしい蛍光
採用されたLEDの特殊な波長の恩恵により、VioletとBlueのフェーズの蛍光は著しく強いです。

LANI LED featuresのページWavelengthsの項からも抜粋。

Instead of royal blue LEDs, TRITON uses special violet and blue wavelengths for illumination, …

RoyalBlue LEDの代わりに、TRITONは照明のために特別なVioletとBlueの波長を使います

で、本日トリトンに直接確認してもらったところ、このVioletのLED素子の波長は約410-420nmとのことでした。うん、まあ想像通り。今現在、RadionやHydra、Razorなど各社が採用しているUV系素子も410-420nmですからね。
トリトンも例に漏れず載っけてきたかぁ~?
・・・と思ったら、2年前もViolet LEDが載ってたってリーフビルダーに書いてあった(笑)
なんだ、トリトンも最初からUVの理解者だったか。流石だトリトン! 判ってるぜぇ~?

え? てっきりトリトンってUV系素子使ってないと思ってた? なんで???
誰かそんなこと言ってた??? またどこかの販促活動かしら。。。困ったモノです。

と言う訳で、使ってる素子が一通りざっくり把握できたので、さっそくSPECTRAを使ってLANI LEDの各モデルのスペクトルシミュレーションをしてみました。

TRITON LANI スペクトルシミュレーション

良いんじゃない?
さすがViolet素子たくさん並べてるだけあります!
多分、フルスペに次ぐUV系素子の多さです。フルスペのUV系素子の使用率は全体の約30%、一方LANI ONEは20%、LANI PROなら15%です。ついでにRadion G3 Proは19%、Hydra/Primeは15%です。

ちなみに、RedとDeep Redは多くの場合630nmと660nmなのでその前提で計算。
Cree XT-E WhiteとCree XP-E Blueは標準値を割り当て、Violetも近年妥当な放射束400mW程度にて計算しました。でももしKRみたいに500mWや600mWのモンスターランクを採用してたら、もっとUV域が持ち上がってくることでしょう♪
いつか測ってみたい。。。

あと判ったのは、LANIシリーズは1W駆動だと言うこと。よって、LANI PROなら104素子だから104W、LANI ONEなら80素子だから80Wと言うことです。で、実際の製品の消費電力は、安定器の分だけさらに10-20W大きくなる感じかな。だから、KRのようになるべく少ない消費電力で、高効率&大光量を実現してるってことですね!

うーん。。。
UV域の重要性の認識や、1W駆動×多素子のメリットの理解。。。
妙に親近感が♪笑

ただ、ひとつ問題が。。。

レンズが搭載されてない!?

そのため、満遍なく広域を照らせる反面、直下照度が低い。。。
てことは、5年前に測ったVertexレンズ無し80Wだったから、アレと似たような照度かな。簡易照度で約15,000lx@30cm。。。3万4万が当たり前のこのご時世には、ちと厳しいかな。。。ま、Vertexは3W駆動だったけど、トリトンは1W駆動だからもう少し伸びるかも。2万はいくかな。でも2万か。。。汗
せめて初期のRadionのようにリフレクター(反射板)くらい採用してれば少しは。。。

実は、LANIはレンズによる透過ロス回避と拡散光保持の観点から敢えてレンズを採用しないと言うポリシーを持っているようです(LANI LED featuresのページ120° angle of reflected beamの項参照)。さらに「レンズの透過ロスは10-20%」と記してあるけど、それを言ったらLANIだってガラス板(orアクリル)があるし、ガラスなら10%はロスしてるハズ。それに、仮に透過ロスが回避できたとしても、必要な光量が確保できなきゃポリシーが矛盾してしまいます。ま、だから上の写真でも判るように、専用ブラケットで水面に近接させる設置方法がデフォなのかな?と(多分ブラケット高さ15cm位?)
ま、続きはいつか現物を測定してからにしましょう。

ただ、僕が思うに、過去のMaxspectRadionもそうだったように、ユーザーから光量の不満が募れば、いずれレンズも採用するんじゃないかな。80°でも100°でも、レンズは無いよりあった方が断然明るいからね。それでもある程度の広角と拡散は確保できるんだし。あとは今後のトリトンの判断力に期待しましょう。

でも、UV域の強化と、1W駆動×多素子、あとレンズまで搭載されたら、、、
基礎がフルスペと同じやん!?笑
その上、今後400nmや500nmも強化してきたら、、、
太陽+深度のアルゴリズムまで踏襲してきたら、、、

脅威だぜぇ~?

こちらのエントリーもどうぞ♪

蛍光タンパクの補足:確立された技術

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GWは皆さんあちこち旅行に行かれたようで、裏山しぃ~裏飯ぃ~。。。
ちなみに僕のGWは映画三昧でしたょ。。。泣
まあ、寄生獣<完結編>は面白かったけど♪

蛍光タンパクって、既に確立された技術ですよ?

特にカラーレポートの公開以降の話ですが、

独自で蛍光タンパクの特性を発見して凄いですね!

とか、

個人で調べた蛍光タンパクの特性って正しいの?

など、そんなご意見は、、、

想定外ですっ♪キリッ(笑)

だって、蛍光タンパクなんて、いまさらの堅~い技術ですよ?

そう言えば、今まで紹介してきた蛍光タンパクの励起スペクトルも発光スペクトルも、それがサンプルや実測値に関わらず、肝心なこと書き忘れてたのかしら?
と言うことで、今回は前回の投稿への簡単な補足のための投稿です。

バイオイメージングの世界で取り扱われる蛍光タンパク

まず、今まで僕がご紹介してきた様々な蛍光タンパクについて、ここで初めて見られた方、他では見たことがなかった方、にはすみません。これらは僕が発見し、僕が提唱している、と言う大それたモノでは決してありません(汗)。僕のやってきたことは単に、既知の蛍光タンパクを実測データの検証から存在確認したに過ぎないのです。
ま、白色蛍光タンパクはいつか見つけたいと目論んでますが♪笑

はい。蛍光タンパクは、特に近年のバイオイメージングの世界では常識の存在です。
例えばちょっと探せば以下のような情報がゾロゾロと出てきます♪

1. The fluorescent Protein (FP)

蛍光タンパクの励起発光スペクトル

2. Basic fluorescent proteins

蛍光タンパクの励起発光スペクトル

3. Review: Lighting up cells: labelling proteins with fluorophores

蛍光タンパクの励起発光スペクトル

4. Box 2 | Genetically-encoded fluorescent proteins used in mice

蛍光タンパクの励起発光スペクトル

5. DNA2.0(DNA)社 Protein Paintbox™

蛍光タンパクの励起発光スペクトル

6. Evrogen社 蛍光タンパク質ベクター

蛍光タンパクの励起発光スペクトル

* いずれも左が励起スペクトル、右が発光スペクトル
各サイトからグラフを拝借しました (一部見やすく加工)

いずれも代表的な蛍光タンパクの励起スペクトル(左)と発光スペクトル(右)です。
見ての通り、タイプ(発色)によりその励起スペクトルも発光スペクトルも大まかに決まったパターンがあり、それらは過去に僕が紹介してきた実測データとおよそ同じモノです。

そう、これらのタイプ・特性は、専門機関が取り扱っている確立された技術なのです。
そして、これらの蛍光タンパク商品の出所は、はい、そもそもサンゴ由来なんです♪
サンゴから抽出された蛍光タンパクを元に改良を加え、各分野で利用されているんです。
例えば、バイオイメージングの用途では、細胞間をどのようにタンパク質が移動しているか、励起波長を当てればその位置が一目瞭然、細胞を破壊することなく変移を捉えることが出来ちゃう、とても革命的なツールとして活用されています。

では、そもそもサンゴは何故蛍光タンパクを持っているのか?
それはこれまでにも何度も説明してきたとおりです。UV防御然り、波長補完然り。
最近では抗酸化作用を持つ事も判ってきました。
以下の投稿の熟読もオススメします。

  1. 新春♪オージースペクトル大公開! - 2015/1/11
  2. 蛍光タンパクのロジカルカラーマネジメント - 2015/02/13
  3. 論考1:サンゴと褐虫藻の問題提起 - 2015/2/19
  4. 論考2:サンゴのアミノ酸取り込みの意味 - 2015/2/20
  5. 論考3:サンゴのアミノ酸生合成 - 2015/2/21
  6. 論考4:サンゴの蛍光タンパクとアミノ酸 - 2015/2/22
  7. イチゴ先生の蛍光タンパク講座 - 2015/4/29

そうした蛍光タンパクを我々アクアリストは何故維持したいと考えるのか?

色彩の観賞のため?
もちろん必要な波長を当てないと発色しませんから観賞にもなりません。

サンゴの健康のため?
現時点では、それも正解と言えるレベルまで情報が出揃ってきたと言えるでしょう。

蛍光の発色に関する勘違い・疑問など

あ、その前によくある勘違い?疑問?を解決しておきましょう。

  • ブルー光を当てなくても、白色光だけでも蛍光グリーンは緑色に見えます!
    白色光にはブルー光が含まれています。
  • ブルー光を当てなくても、白色光だけでも蛍光レッドは赤色に見えます!
  • 蛍光ブルーにわざわざUV当てなくても、海ではブルーに見えてる!
    海は普通にUVが当たってるからこそ、蛍光ブルーは青く発色しているのです。
  • UV当てなくてもうちの蛍光タンパクは維持出来てます!
    蛍光グリーンや蛍光レッドは、ブルー光だけでも発色や維持は出来ます。しかし、蛍光ブルーや蛍光シアンは400-420nmがないと発色も弱く維持も困難です。
  • UV当てなくてもうちの蛍光ブルーは維持出来てます!
    それ、蛍光ブルーじゃなくて色素ブルーかと。蛍光ならギラギラしてます。
    あるいはT5でもActinic球を使えば蛍光ブルー衰退の歯止めは可能です。
  • 観賞時は見えないけど、UV当てればちゃんとグリーンに発光してますから!
    てことはUVリッチな自然下なら何もしなくてもグリーンに発色してるはずです。わざわざUV当てないとグリーンが出ないってことは、平常時の光環境にUVが足りてないってことです。要するに、それじゃ自然下での発色が観賞できてないってことです。
    もちろん、励起波長が不十分なせいで蛍光自体が衰退したことも含まれます。
  • そのうちストロベリーが赤だけになりました、スパが単色になりました、等
    だから言ったじゃないの。。。

蛍光タンパクは種類によって要求波長が異なります。そもそもシステム自体が、蛍光ブルーや蛍光シアンの存在を見落としているケースすらあります。また、そうした要求の異なる群をただ“蛍光タンパク”と一括りにしたり、それに対してアレが要る・要らない等と一緒くたに割り当ててしまうと、ある蛍光タンパクには当てはまっても別の蛍光タンパクには当てはまらない状況を生み出してしまいます。
「蛍光タンパクはUV当てたら光る」、みたいな曖昧で単純な認識は今日で捨て、

  • 蛍光ブルーBFPには → 400nm前後のUV光
  • 蛍光シアンCFPには → 400-420nmのUV光
  • 蛍光グリーンGFPには → 450-480nmのブルー光
  • 蛍光レッドRFPには → 480-520nmのシアン光

のように、それぞれの要求を今日から正しく認知しましょう。

蛍光タンパクの要求に対する応答方法

まず、上記に挙げた各種蛍光タンパクの励起スペクトルから以下のことが判ります。
蛍光タンパクの発光に必要となる波長範囲です。

蛍光タンパクの励起発光に必要な主な波長範囲

これは、実に単純明快な理由です。
それは、海中に最も多く届いている波長だからです。
海中では深度を増す毎に、UV(350nm以下)と(600nm以上)が減衰します。
さらに深くなると、UVは390nm以下、緑は520nm以上で大きく削られていきます。

黒潮域の海中スペクトル

結果、この390-520nmのブルーバンドが海中を支配しています。
必然的に、サンゴはこれらを最も多く浴び、これらの影響を強く受けています。
その結果が、UV防御であり、波長補完である訳です。

また、蛍光タンパクのタイプ(色)によって、その要求する波長帯域は異なります。

各蛍光タンパクの励起発光に必要な波長帯域

このことからも判るとおり、何故サンゴがそのような色彩を放っているのか?
すべてが必然なのです。
よって、その色彩を自然下と同じように発色させたいなら、当然ですが自然下と同じ必然を与えてやれば良いのです。それが各種蛍光タンパクの要求波長範囲なのです。そしてその必然を与え続けることが、蛍光タンパクの「サンゴにとっての必要性」の継続へと繋がり、結果色彩が維持されるのです。

フルスペのスペクトル理論は、この要求波長範囲を天然下のように与え続けることです。
また、T5蛍光灯でもActinic球を増やすことでシアン蛍光タンパク維持の可能性が見えてきます。また、レッド蛍光のためのシアン500nm帯域不足は、蛍光灯特有の突出した540nmのグリーン光が代用を果たします。それでも足りないならLEDスポットがあります。

蛍光タンパクの要求に応える人工光源の補完例

要するに、サンゴの蛍光タンパクの発色・維持は、既存の光化学に従うだけなのです。
それは最近流行のトリトンと同様、「水槽の水質環境を天然の海水成分に近づけよう」と言う理屈と同じことです。
きっと、そろそろ気付き始めた方も増えてきたはずです。

水質は執拗なくらい忠実に再現してきたのに、
なんで光環境・波長は無視してきたんだろう?

もちろん、サンゴの種類に合わせて、それで要求が満たされるなら良いと思います。
しかし、サンゴの要求を無視して不十分な環境を押しつけるのは、ただの虐待です。

蛍光タンパクの要求を無視した人工光源の例

ましてや科学を無視した根性論なんて、サンゴもアクアリストも必要としていないのです。

オマケ

現象には必ず理由がある。 (BGMはこちら)

現象には必ず理由がある

根拠の明確な理論に基づいた数多くの実践と成果。それをねじ曲げることなどできない。
もし覆したいなら、それ以上の根拠と理論、そしてその成果を証拠に示せば良いだけだ。
あるいは、そもそも否定したい理由が科学とは別にあるなら、一般消費者にとってこれほど迷惑な話はない。鬱憤? 遺恨? 販促? 実にくだらない。。。

科学に従うことは、実に簡単だ。
例えば、

石灰化に必要だからカルシウムを与える

今じゃすっかり常識となっている科学だ。
間違っても、カルシウム抜きで石灰化頑張ってみるぜ!なんて、もはや今更あり得ない。
それと同じ事が、蛍光タンパクでも判明しただけのこと。

蛍光タンパクに必要だから励起波長を与える

ただ、一般的な照明ならば、励起波長のうちブルー光は必ず満たされている
そのお陰で、蛍光グリーンや蛍光レッドは一般照明でも問題なく励起できる。
問題なのは、UV域400-420nmの欠如に対してだ。
そのせいで、蛍光ブルーや蛍光シアンは十分に励起することができない。
従って、さらに具体的に表現するなら、

シアン蛍光タンパクに必要だから400-420nmを与える
ブルー蛍光タンパクに必要だから400nmを与える

となる訳だ。
実にシンプルで明瞭な科学だ。

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イチゴ先生の蛍光タンパク講座

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今日は、オージーミドリイシの中でも特に大人気の
通称ストロベリーショートケーキ先生を講師に迎え、
アクアリストの目から綺麗さっぱり鱗を剥がし落としちゃう
サルでも判る蛍光タンパク講座をお届けします♪
いつものように無駄に長いけど頑張って! たかだか14000程度の文字数です♪汗

ではイチゴ先生お願いしま~す!

は~い♪

シアン蛍光タンパクが維持されたストロベリー

なんてお美しい~!!!びゅーりほ~♪

しかし、ちょっと機嫌を損ねるとこの有様です。。。

シアン蛍光タンパクが褪色したストロベリー

え?
全身ピンクに色揚がり???

♫ あ ちょと待て ちょと待て おにっさぁ~ん♪

それ、、、色下がりですぜ?汗
そうです。イチゴ先生を繋ぎ止めるには、パートナーの賢い愛が必要なのです!

これまで、限定配布のカラーレポート以外でも、蛍光タンパクの仕組みや種類などの情報はブログでも度々ご紹介してきました。中にはヒントの域を超えてズバリ答えに迫った記事もあったかと思います。きっと熱心な読者の皆さんなら取りこぼしてませんよね?
例えば新年早々のオージー特集でも結構がっつり触れてます。
なぜストロベリーがピンク(or茶色)だけになっちゃうのか?
一部の方はここで開眼されて、フルスペやバイタルウェーブと仲良くなりました(笑)

しかーし!
今もイチゴ先生に振り向いて貰えないアクアリストのために、今日は手取り足取りじっくり牛歩でレッスンを進めて参りますよ!
カラーレポート所有者も今さらと言わず、復習のつもりで読み進めてください。

■目次

  1. ストロベリーショートケーキの蛍光タンパク励起発光スペクトル
  2. 蛍光タンパクの励起スペクトルと発光スペクトルの見方
  3. 励起波長と蛍光発光量の関係
  4. シアン蛍光がグリーンに傾いたら要注意!?
  5. 巷のストロベリーショートケーキのビフォー・アフター (最終章)

ストロベリーショートケーキの蛍光タンパク励起発光スペクトル

今日はストロベリーの蛍光タンパクの励起発光スペクトルをサンゴカラーレポートから特別に講義向けにグラフを見やすく描き直してお見せしちゃいます!

まず、カラーレポートVOL.1から、ストロベリーの蛍光タンパクの励起発光特性です。

ストロベリーショートケーキの蛍光タンパク (カラーレポートVOL.1より)

続いて、カラーレポートVOL.3からも、別個体のデータをお披露目します。

ストロベリーショートケーキの蛍光タンパク (カラーレポートVOL.3より)

もし、コレだけ見て理解できてる方は、これ以上読み進める必要はありません。
多分、すでにイチゴ先生とイチャイチャされてる方でしょう♪
早く家に帰ってラブラブしてください(笑)

ストロベリーショートケーキは、ベースに強いシアン蛍光タンパクCFPをまとい、さらにポリプのサンゴ体のひとつひとつにレッド蛍光タンパクRFPを持つことにより、非常に美しいストロベリー特有の色彩を放ちます。この2つの蛍光タンパクは独立した異なる蛍光タンパクで、それぞれの励起波長も大きく異なります。CFPは400-420nmのUV域の波長にもっともよく反応して発光します。RFPは500-520nmの緑の波長にもっとも反応し発光します。例えば、主な人工光源には必ず青の波長も緑の波長も含まれますから、大抵の光源下でRFPが光らないことはありません。しかし蛍光灯や白色LEDにはUV域の波長はあまり多く含まれないため、そうした光源下の場合、CFPは強く発光できません。このことからも、RFPよりもCFPを発光させることの方が難しいことがお判り頂けると思います。

では引き続き、これらのグラフの見方を解説していきます。

蛍光タンパクの励起スペクトルと発光スペクトルの見方

今日はホントの初歩的なところから攻めていきますよ!
今日こそ蛍光タンパクのスペクトル特性の見方を習得しましょう♪

まず、以下のグラフは、オージーサンゴでもメジャーなシアン蛍光タンパクの励起スペクトルと発光スペクトルの特性を示した見本です。それぞれの曲線の意味、判りますか?

蛍光タンパクの励起スペクトル特性と発光スペクトル特性

恐らく、左の破線が励起スペクトル、右の実線が発光スペクトル、その辺は何となくお判りかな?と思います。でも、実際のところ、これをどう解釈して蛍光タンパクの発色や維持に繋げたら良いのか? そこが難問ですよね?
そこで、そもそもの励起スペクトルと発光スペクトルの算出方法を解説しましょう。

まず、光強度を揃えたいくつかの波長を用意します。
例えばシアン蛍光タンパクの場合、励起(反応)する波長は主にUV域なので、仮に380nm/400nm/420nm/440nmの4種類の波長を用意したとします。
そして、その波長を順にシアン蛍光タンパクに当てていきます。
すると、波長毎に下図(上)のような発光強度のスペクトルが発光したとします。

蛍光タンパクの励起波長毎の発光量

この時の発光スペクトルを波長別に色分けして重ねると上図(下)のようになります。
蛍光タンパクの発光スペクトルは、励起波長によって発光強度こそ違いますが、カーブ形状自体はほぼ同じです(厳密にはピーク前後の波長強度分布に相関が見られる)
よって、まず発光スペクトルはこの時点で決定となります。

発光スペクトル:
励起波長に反応し発光した光の波長分布を表した特性である。

次に、各励起波長毎に発光強度をマーキングしていくと、大雑把な折れ線グラフが描かれていくのが判ると思います。これが励起スペクトルを構成する骨組みです。

蛍光タンパクの励起波長毎の発光量を元に励起スペクトル特性が割り出される

要するに、各波長を順に照射していき、その波長毎の発光強度をマーキングしていけば、励起スペクトルになります。波長を細分するほどより滑らかなカーブが得られます。

励起波長毎の発光量を折れ線グラフ化したものが励起スペクトルである

とは言え、例えば1nm刻みの励起スペクトルを得ようと思ったら、400nm、401nm、402nm、、、と果てしなく光源を用意しなければなりません。もしそれで400-800nm間を走査しようと思ったら、400ヶの光源が必要です。波長可変レーザーでもあれば別ですが、それを個人で所有するのは無謀です(汗)
なので、あくまでもホビー向けに妥当な範囲で、僕の場合は370nm/400nm/425nm/450nm/475nm/500nm/520nm/595nm/630nm/660nmの10種類の波長のLEDを用意してサンゴの蛍光タンパクの発光スペクトルと励起スペクトルを調べています。そうして調査したストロベリーの蛍光タンパクの特性が先ほどのデータという訳です。

励起スペクトル:
蛍光タンパクの発光量を励起波長毎に記録しグラフ化した特性である。
当然、そのピーク波長を当てることが最大発光量を得る上で重要である。

励起波長と蛍光発光量の関係

励起スペクトルの見方が判ったところで、お次は蛍光タンパクの励起波長と発光量の関係について解説していきます。ここ、一番重要なとこです。

先述した励起スペクトルの仕組みから、蛍光タンパクは特定の波長だけではなく、ある程度の波長範囲に対して応答していることが判りました。そしてその応答の度合いは、励起波長によって異なると言うことも判りました。このことから、蛍光タンパクの蛍光発光量は、励起波長がすべて照射された場合に最大となり、励起波長に偏りや欠落があると自然下並の発光量が得られないと言う事になります。なぜなら蛍光発光の総量は、単純に励起波長による発光量が積算されたものだからです。

以下に、

  • 自然下の海中スペクトルに対するシアン蛍光タンパクの発光総量
  • 400-420nmリッチな光源に対するシアン蛍光タンパクの発光総量
  • 400-420nmが不十分な光源に対するシアン蛍光タンパクの発光総量

の3パターンをグラフで表しました。
ストロベリーの実測値(カラーレポートVOL.1)から得られた発光量の割合を数値化して、各励起波長(370nm/400nm/425nm/450nm)毎に割り当て、励起波長の有無に応じて全体の発光量がどう変化するか説明していきます。

蛍光タンパクの発光量は励起波長毎の積算発光量である

* 数字は励起波長毎の発光の割合をイメージしたものです

ここではまだ蛍光タンパクの維持については考察する必要はありません。単純に観賞性の問題として、光源により本来の蛍光発光量が得られるかどうかを考察してください。

まず、自然下の場合は必要な励起波長が全て満たされるため、発光量は最大の18が得られ、これが本来のそのサンゴの蛍光発光量となります。
次にUVリッチな光源では、400-420nmによる発光量は確保されますが、370nmによる発光量は得られません。よってその分が減算された15の発光量となりますが、まずまず自然下に迫る発光量が確保されています。
しかしUV不足の光源では、450nmによる発光量2は確保できますが、370nm/400nmによる発光量は全く得られず、あとは420nmの波長強度次第となり、この例では巷のLED製品やT5蛍光灯のような420nm量をイメージして発光量を3としましたが、もしこれが完全な青白LEDスペクトルだったりActinic無しのT5蛍光灯だった場合、もっと低くなるでしょう。そうなると、450nmだけでは十分な発光が得られず、自然下で見えた蛍光色は再現されないことになります。ただ逆に言えば、450nmによる発光量だけは最低限確保される、とも言えます。お使いの照明次第では、今見えているシアン蛍光の量はギリギリ450nmによる発光量だと言うことです。

これでお判りの通り、サンゴ照明には蛍光タンパクの励起波長が少しでも入っていれば良い、と言う解釈は完全に誤りということになります。確かに一部でも励起波長が光源に含まれれば、その分の蛍光発光は得られます。しかしそれでは不十分です。今一度、上図(下)をよく噛みしめてください。これでは本来の蛍光発光量が得られないのです。良くて自然下の半分、多くは1/3以下でしょう。これは光化学なのです。
とは言え、そんなUV不足な光源ですら、購入当初は450nmだけでもギラギラに発光して見えます。ということは、自然下の波長構成を当てたら(UV域を補ったら)、それこそ本来はとんでもない発光量で光り輝くと言うことになるのです。特にオージーの蛍光タンパク量は目を見張るモノがあります。
そして、蛍光タンパクのうちブルー蛍光タンパクBFPシアン蛍光タンパクCFPは、サンゴにとってUV防御も兼ねた非常に重要な存在です。そしてそれは必然。UVがなければ自然下並のUV防御の必然性は失われ、あとは褪せるのみです。そう、この仕組みこそが蛍光タンパク維持に関する最重要ファクターです。自然下と同等のUV量が確保されてこそ維持される蛍光タンパク量、それを怠ればサンゴも蛍光タンパクの形成を放棄する、という流れです。ま、サンゴにとっては無駄なコストが省けて有り難いところでしょうが(笑)

シアン蛍光がグリーンに傾いたら要注意!?

結果、UVが不十分な場合、最低450nmで確保されていた発光量もいずれ衰退する可能性はあります。なぜなら、その450nmでの発光量は、対UVに備えて構築されていた豊富なシアン蛍光タンパク量がまかなっていたモノです。それはあくまでも励起波長全体が十分に確保されていた時に確認された発光量であり、その励起波長の主要部分が消失したあとも維持が保証されるモノではありません。そもそも破壊的なUVエネルギーをシアン(500nm前後)に波長シフトさせるUV防御システムの必然性に比べれば、UVより遙かに被害の少ない450nm以降のブルー光をしかも少しだけ長波長のシアンへシフトさせる必要性は、限りなく低いと言えるでしょう。それをなおも維持しようとするかどうか、あとはサンゴの判断に委ねられるのではないでしょうか。ま、仮に維持されても450nmでの発光量は知れてますが。。。
特にシアン蛍光がグリーンに傾く場合、励起波長のピークとその単波長側の励起波長が大きく不足している可能性がとても高いです。これは上でも少し触れた励起波長と発光波長の相関による現象で、叩く波長と表れる波長はシンクロしていて、より短波長側で叩くと発光波長も短波長寄りで発光し、より長波長側で叩くと発光波長も長波長寄りで発光する現象です。
以下は特にそれが顕著だったオージー産ハナサンゴのシアン蛍光タンパクCFPの励起波長毎の発光スペクトルです。

ハナサンゴのシアン蛍光タンパクの発光スペクトル

400nmに対する反応はよくあるCFPの発光スペクトルを示しますが、励起波長が高くなるに伴い発光スペクトル内の波長分布がグリーンに傾いていき、まるでGFP(グリーン蛍光タンパク)のような発光スペクトルになっていく様子が観察されました。
これらのことからも、UVが不足しているブルー主体のスペクトルでは、CFPがGFPモドキに傾いてもなんら不思議ではないわけです。あるいは、GFPに移行する子もいたりして?
もしやあなたのシアン蛍光、なんかグリーンになってませんか?

ちなみに、サンゴのUV防御は主に2つあり、ひとつはMAAs(マイコスポリン様アミノ酸)で、もうひとつがこの蛍光タンパクです。MAAsは主にUV-Aのうち310-360nmを吸収し、蛍光タンパクは僕の実験からも判るように下は370nmから長波長シフトを行っています。いずれもUVストレス量に応じて密度が増加することが実験結果から判明している通り(Ferrier-Pagès et al. 2007) (Yuyama et al. 2012)、UV量の制御によってサンゴの蛍光タンパクが維持できることは、我々アクアリストにとっても今や周知の事実です。
また、特にオージーは蛍光タンパクを高密度で持っているので、その形成には大量のアミノ酸を必要とし、そのアミノ酸を合成するためにも褐虫藻は非常に重要です。アミノ酸に関しては誤解のないように以前の論考シリーズをご覧ください。

  1. 論考1:サンゴと褐虫藻の問題提起 - 2015/2/19
  2. 論考2:サンゴのアミノ酸取り込みの意味 - 2015/2/20
  3. 論考3:サンゴのアミノ酸生合成 - 2015/2/21
  4. 論考4:サンゴの蛍光タンパクとアミノ酸 - 2015/2/22

巷のストロベリーショートケーキのビフォー・アフター (最終章)

ストロベリーをお持ちの方は、なるべく定期的に写真撮影をしておくと良いです。
どんなに「色維持できてるぜ!」「色揚がったぜ!」と思っていても、購入時の写真を見るとハッと我に返る場合があります(笑)
また、シアン蛍光が褪せてレッド蛍光が増えてきた個体に対し「好きな色だ!」と思うのは自由ですし、色彩の好みを否定する気はありませんが、それを「色が維持出来ている」と言う表現にすり替えたり、「ストロベリーにはUVは要らない」と言い切ってしまうと、それを見たビギナーさんの成功への近道を妨害することになり兼ねないので、安易な発言は慎むよう注意しましょう。また、水質が重要なことは今さら言うに及ばず当たり前のこと。一方、蛍光が発光するのは励起波長による光化学現象だと言うことを理解しましょう。

ところで、ストロベリーの色揚げに関して、成功例と失敗例を示そうとネットをウロウロ探しましたが、失敗例がなかなか見つからない。。。多くの場合、購入時の綺麗な写真はあるけど、その後の経過が不明です(汗)
そんな中、彼はエライです。ちゃんと経過を報告されてます。エーエイト氏です。
有り難くビフォーアフターの写真をお借りしました。

A8氏のストロベリー

彼は海外からUV入りのLEDライト(バータイプ)を取り寄せて試していたようですが、他のサンゴへの影響もあるため、なかなかピンポイントで狙えなかったようです。ビーム角が広すぎたのかな? こんな時こそズバリ狙えるスポットがお勧めなんだけど。。。う~ん、残念。
ま、そもそもこのLEDバーがちゃんと出力が出てたのか、はたまた波長も正しかったのかどうかも判りませんから、今となっては何とも評価しがたいところです。
また、半年経過の割にほとんど成長が見られないので、何か他にも要因があったのか、あるいは元々調子の悪い固体だったのか???
ただ、ZEOvitやT5蛍光灯下ではこのパターンは非常に多く見かけます。それもそのはず、基本的にZEOvitは蛍光タンパクに関するノウハウがゴッソリ抜けてるように思います。

一方、成功例としてはたらふく氏をご紹介します。購入時の記事半年経過の記事

たらふく氏のストロベリー

角度は違いますが、上の記事をご覧頂ければその変化は判ると思います。
蛍光シアンの維持もさることながら、それ以上にピンクチップの色揚がりが秀逸!

そんな彼の秘密兵器は、ご存じバイタルウェーブ・バイオレット!!!
しかも、度々イチゴ色揚げ機と連呼されてるので、売上げ伸びたんちゃうのん?笑
それもそのはず、バイタルウェーブにはKRと同じ最高ランクのLED素子が受け継がれているので、性能に疑う余地はありません。もちろん、PSE適合製品です。
波長も出力も太鼓判だから、安心して使えますね♪

バイタルウェーブ・バイオレット

今、手持ちのバイタルウェーブ・バイオレットのスペクトルを測ってみました。
主要LED素子は、UV 400nmとViolet 425nm。450nmはあくまでも安全用です。
ホビー用途でここまで厳密な波長が管理されている製品は他にないでしょう♪テヘ

バイタルウェーブ・バイオレットのスペクトル

よくある青白スペクトルと比較すると、UV域の補完率の高さがうかがえますねぃ~♪
先ほどのストロベリーのシアン蛍光タンパクの励起スペクトルと Let’s にらめっこ!

バイタルウェーブ・バイオレットのFP励起波長カバー率

尚、当面の間は370nmによる励起発光分は諦めてください。その僅かな恩恵には到底見合わない大きなコストを要します(曝)

最後に、たらふく氏のお気に入りショットです!

たらふく氏のストロベリーのお気に入りショット♪

ふぅ~・・・(溜め息しか出ない 笑)

■リファレンス

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