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懲りずに書いてみたりする結果オーライな日記

海藻オバケの撤去

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うちの5L水槽には、10cmほどのライブロックがひとつだけ入ってます。
これは水槽を始める際にやどかり屋から頂いたものです。

初めは目立った海藻は付いてませんでしたが、その後、時間を掛けて小さなものがジワジワと育ち始めました。

初期のライブロックの海藻

それが、さすがに2年も経てば、その存在感たるや主役の如し!

2011年3月時点の海藻オバケ

今日と言う今日(1ヶ月前だけど)は、この子をどうにかしたいッ!!!

てな訳で、遂に摘出しました♪

撤去した海藻オバケ

水を切っても150gあります。
これがどゆ事かと言うと、もし貴方の水槽が200Lなら、およそ6kg分に相当します。
ロッキロノカイソウデスヨッ!!!
恐ろしや。。。

これを撤去したことで、KHの無駄な消費が抑えられるでしょう。
代わりに栄養塩が見られ始めるかも知れませんが。。。
それでも良いのです。

今、水槽では、5Lのジレンマに苛まれています。恐らく、栄養塩はどうにかなるとしても、僅か5Lでは各種ミネラルや微量元素の定量保持が非常に困難なのではなかろうか?と言う今更な結論に達しました。それは、以前のように照明が暗いうちはまだ良かったのですが、ライトを増やし、照度を上げ、サンゴの成長を加速させればさせるほど、どうしても栄養的バランスが破綻しやすく、結果的に生理不順、免疫不全、そして光障害が容易に起こり始めるのではないか?と言う考察によります。例えるなら、大人よりも子供の方が病気の進行が早い、と言うイメージでしょうか。だったら、多少水質が悪くても、単に長期飼育だけにこだわるなら、蛍光灯で飼っていた方が記録は延びるのかも知れません。
いやはや、バケツ半分の水量で海を展開するのはなかなか至難の業です。

あれ以来、現在もスギノキの白化は一向に止まず、遂には共肉の剥離も見られ始めました(これも先月の時点での話だけど)
一応、それを食い止めるべく、この後も試行錯誤は続きます。

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サンゴ成長記録:2011/03

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いやぁ、スギノキブルーが、もうこんなに大きくっ♪

うちに来る前のスギノキブルーの状態

と言うのはウソで、この写真は年末に某Y氏から譲り受ける前の、Y氏の水槽で撮影されたスギノキさんです。敢えてフラッシュ撮影画像と並べたのは、スギノキブルーの発色が近紫外線励起による青蛍光やシアン蛍光による割合が大きいとお伝えするため。
ところで、蛍光抜きで青い個体ってどれくらいいるのかなぁ?

ちなみに僕の当時の水槽の写真を引っくり返したら、通常撮影とフラッシュ撮影のスギノキの画像が一組だけ見つかりました。おおお。これは貴重だ♪

2001年8月飼育時のスギノキブルーのひとつ

とは言っても、フラッシュの届きがいまいちで、まだかなり青く写ってますね。まあ、水面直下ですし、10000K/250W+SCのUV量がハンパないせいもあるのでしょう。
それにしても当時は小型水槽とは言ってもサンプ込みで200L程あった訳ですし、考えてみたら今の5Lよりは格段に環境値も良かっただろうなぁ。。。それに比べたら今の5L水槽は本当に虐待ですね。。。まあ、実験水槽ゆえ。。。

さて話を現代に戻して、その某Y氏のスギノキの嫁入りから早3ヶ月。
色々悩みはありますが、とりあえず今のうちに遺影・もとい飼育記録をば。

スギノキブルーが来て3ヶ月

上はうちの照明システム全灯(太陽光LEDシステム+補助UV+Blue)をホワイトバランス:太陽光でそのまま撮ったもの、下はホワイトバランス補正+フラッシュです。

悩みと言うのは、スギノキブルーがどんどん白化?していること。褐虫藻が益々抜けて、これって要するにZEOvit状態なのかしら。。。ヤドカリの給餌量増やしてせっせと栄養塩増加に努めてますが、なかなか栄養塩が出てくれません(汗)

また、黙ってましたが、実は1ヶ月ほど前に、ちょいやらかしてしまいました。なんと自動給水のフロートの誤動作で給水回路が通電しっぱなしになって、僕が起きて気づいた頃にはRO水タンクが空っぽになって水槽の水位がいつもの倍になってました(泣)
まあ、幸い元々の水位が低かったことと、タンクの残量が少なかったお陰で水漏れは回避しましたけど、当然比重は汽水より低い状態だし、丈夫なエダコモンでさえ萎縮してる始末。。。慌てて換水しましたけど、どうも生物相も壊れちゃったみたいで、あれ以来ガラス面に茶ゴケが出るようになってしまいました。。。泣

そんなこんなもあって、尚更スギノキの調子が芳しく無いのでしょう。。。
まあ、仮にZEO状態だとしても、数日前に照明を離して照度を少し下げましたし、これで少し様子を見ようと思います。
あと、そろそろ添加剤とかアミノ酸あたりも考えた方が良いのかなぁ。。。

おまけ。各サンゴの活着ぶり。

各ミドリイシの活着状況

エダコモンならあっと言う間に岩を覆っていくことも珍しくありませんが、このスギノキもなかなかのもんでした。とても過酷な実験水槽を感じさせないタフさぶりです。
ただ、こうしてアップで見るとよりハッキリ判りますが、やばいくらいスケスケです(汗)
しかも最近気づきましたが、何故かポリプがパープルに。。。
なんか、この傾向、イヤなこと彷彿させるなぁ。。。
ケントパパミドリイシも最期はこんな路線だったんだけど。。。大汗

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サンゴと蛍光タンパク質

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蛍光タンパク質

画像は発光する蛍光タンパク質、Tsien Laboratoryより

以前ご紹介したエダコモンのオレンジポリプ発現個体以来、蛍光色素について色々と調べていました。今回はそれをちょこっとメモ程度にまとめてみます。

まず、僕は今までサンゴの蛍光色を、ただ漠然と「蛍光色素」と表現してましたが、その方面?での用語の使い分けに際し、蛍光物質には「蛍光色素」や「蛍光タンパク質」があり、どうやらサンゴのそれは蛍光タンパク質と言い表すのが適切であるようです。

で、それらを大まかに区別すると、およそこんな感じのようです。

蛍光 蛍光色素 蛍光タンパク質
成分 化学合成 生物由来
特徴 低分子 蛍光強度が高い
用途 細胞や染色体などを染色 遺伝子工学によるタンパク質の追跡

まず、蛍光色素には非常に多くのバリエーションがあります。
以下の資料は参考程度にご覧下さい。

一方、生物由来である蛍光タンパク質には、我々も非常に関心の高いサンゴ由来の蛍光タンパク質がいくつか抽出・生成されています。

  • Fluorescent Proteins (PDF)
    ミドリイシ・シアン
    ウミキノコ・グリーン
    アザミ・グリーン
    クサビラ・オレンジ
    桂馬/Keima570(赤)(コモンサンゴ)
    ドロンパ/Dronpa・グリーン(キッカサンゴ)
    カエデ/Kaede(緑・赤)(ヒユサンゴ)
    その他…
  • Living Colors Fluorescent Proteins (PDF)
    RCFP (reef coral fluorescent proteins/造礁サンゴ由来蛍光タンパク質)
    シアン(AmCyan1)
    緑(ZsGreen1)
    黄(ZsYellow1)
    赤(DsRed-Monomer、DsRed2、DsRedExpress)
    深赤(AsRed2、HcRed1)
  • Keima-Red
    mKeima 440nm-620nm
    dKeima 440nm-616nm
    dKeima570 440nm-570nm

厳密な励起波長・発光波長は別としても、多くは普段から僕らも観察し見慣れているサンゴの蛍光色ですね。

各サンゴの蛍光色

各蛍光タンパク質の紹介はここまで。各々の特徴・詳細については割愛します。
興味があれば必要に応じて検索してみてください。

そして、肝心の蛍光タンパク質の働きについて、有用な情報もひとつご紹介します。

刺胞動物と蛍光タンパク質 (PDF)

以下、引用。

採集した蛍光性サンゴと非蛍光性サンゴに強い紫外光を照射すると、後者においてより顕著に光合成阻害が認められた。
-
この結果から、蛍光タンパク質が褐虫藻を強い日光から保護することが示唆された。
-
実際、1998年に大堡礁で起こったサンゴの大規模な白化現象においてサンプリングしたものを調査したところ、蛍光タンパク質を発現する個体ほど白化しない傾向が確かめられている(Salihetal.2000)。

確かに蛍光色の励起は、青を吸収しての緑・赤励起、そして紫外線を吸収しての青・シアン励起などがあり、その意味では有害な紫外線を安全な可視光線にシフトしていると言う点で、対紫外線機能のひとつとも言えます。これは昔からよく言われる対紫外線色素のMAAsとはまた別の反応です。

例えば、浅場のミドリイシとして有名なスギノキミドリイシの特にブルー個体に於いては、この蛍光タンパク質によって積極的に紫外線を青色やシアンへシフトしていることが判ります。逆に言えば、どうして浅場のスギノキが青いのか、その裏づけとも言えるでしょう。

実際にブルーのスギノキや他の蛍光サンゴに青色や近紫外線の光を当てて、それぞれの蛍光タンパク質がどのような蛍光反応を示すか、我が家の個体で試してみました。

各サンゴの波長ごとの蛍光反応

仮に、グリーンのエダコモンの蛍光タンパク質をGFP(Green Fluorescent Protein)、オレンジのエダコモンの蛍光タンパク質をRFP(Red Fluorescent Protein)、スギノキの蛍光タンパク質をCFP(Cyan Fluorescent Protein)としますと、GFPやRFPは青色~シアンの光でもっとも強く反応(吸収極大)し、スギノキのCFPは近紫外線の400nmが吸収極大であることが判ります。

また、スギノキの蛍光タンパク質について更に詳しく観察してみました。

スギノキブルーの蛍光タンパク質の反応

最近気づいたのですが、このスギノキの場合、共肉は強いシアン蛍光ですが、実はポリプにも発光強度が弱いながらも蛍光発光があることが判りました。UV 400nmを当てると、ポリプが薄っすらとロイヤルブルー(あるいはブルー)を帯びているのです。
でも写真にはうまく写らない。。。判るかなぁ?
でも発光量が弱すぎて初老の老眼にはチト確認が辛い。。。気のせいだったりして(汗)

このことからも、スギノキブルーには適度な紫外線を当てるべきだと言えるでしょう。
そうでなければ、自然光下で見られる本来の濃ゆいブルーが発現できないと思われます。
これまでのようなメタハラや蛍光灯の環境では意識せずとも含まれていた紫外線も、オールLEDの水槽では意図的に入れる必要性が生じますので、可能であればUV入りLEDランプを併用することが理想的です。
ただ、ご使用のランプの中に一般白色LEDが混じっているならば、幸い蛍光体による励起波長範囲に僅かな近紫外線域が含まれますから、スギノキブルーの青みもそれなりに出ると思います。でもフルブーストを掛けるなら是非UV入りを入れたいところです。
尚、RGB白色LEDの場合は蛍光体励起が無い分、近紫外線は一切含まれていないため、青蛍光やシアン蛍光は得られず、単なる青光成分による演色効果でしか青みは得られません。この場合、UV入りランプは必須となるでしょう。

さて、今回自分なりに時間を掛けて蛍光タンパク質について調べてみたつもりでしたが、それで蛍光グリーンのエダコモンサンゴのポリプに蛍光オレンジが乗った原因が判ったのか?と言うと、それが結局さっぱり判りませんでした♪
人為的に蛍光タンパク質の発光色・強度を改変する場合、その蛍光タンパク質の遺伝子クローニングののち、DNAのアミノ酸配列を組み替えることで実現するそうですが、そういう変化が自然下でも起こるのか、それとも単に異なる蛍光タンパク質を獲得したのか、と考えると、やっぱり後者の方が自然の成り行きかな?
でも、当時は蛍光オレンジなんて水槽のどこにも無かったんだけどなぁ。。。
実は蛍光タンパク質は細菌の如くどこにでも存在するモノなのか!?
そういえばサンゴのプラヌラ幼生も、最初は持ってないはずの褐虫藻をいつのまにか取り込んでるようだし。。。
ただ、ひとつ気になるのは、このようなエダコモンの現象は今までに一度も見たことがなく、今回LED環境で飼育してみて初めて遭遇した現象だと言えること。まさかLEDの破壊的な光線により遺伝子が組み替えられた!?・・・なんてことはないよね(笑)

と言うわけで、答えは先送りです。

尚、念のため補足しますが、サンゴの色彩を決定づけるのは蛍光タンパク質だけではありません。褐虫藻自体の色、密度、そしてクロロフィルやカロテノイド、フィコビリンのような光合成色素など、さまざまな要因により見た目の色彩が形成されていると思われます。

その他の参考関連情報

その他、間違い等あればご指摘頂けると助かります。

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