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ヒゲゴケ抑制実験報告 其の二

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先日のヒゲゴケ抑制実験報告 其の一に引き続き、其の二です。

あちゃ~。ヒゲゴケ処理の開始時のバケツの写真撮っておくの忘れてた(汗)
と言うわけで、当初バケツに放り込んだヒゲゴケは、この写真に写ってる量すべてです(汗)

ヒゲゴケモーモー水槽 width=

で、キュアリングがほぼ完了した今日のバケツの様子です。

バケツでキュアリング中のライブロック

このバケツには6月初旬に、ヒゲゴケがモーモーと生えてしまったライブロック(写真中央)と、砂にまで進出したヒゲゴケの塊を砂ごと放り込み、購入したワラワラと自家採取したワラワラの余りを投入し、今日までエアレーションのみで回してきました。また、後半一週間は、60W相当の蛍光灯電球を、朝から晩まで点灯しておきました。

ちなみにライブロックに付いていたヒゲゴケは、敢えて毟り取らず生えていたままにして、分解は100%自然に任せました。外的な力が加わったとすればエアレーションによる揺らぎくらいのもんです。

ヒゲゴケが消え始めたのを実感したのは、開始から一週間位してからかな。特に砂の方のヒゲゴケがみるみるデトリタス化していったと言う感じでした。そして今月に入った頃には、ライブロックも写真のようにほぼピカピカになりました。

周囲に見えるモヤモヤも全てデトリタスと砂で、ヒゲゴケの原型はありません。また、長期のキュアリングで発生しがちなバケツ表面の茶ゴケなども一切見られませんでした。(念のためライブロックの中央に見える緑色のものは硬い海藻です)

また、ヒゲゴケがほぼ壊滅した現時点でも、ある程度のワラワラが確認できます。コペポーダ、ヨコエビの仲間、稚貝、ニョロニョロ系、など。但し、入れた当初よりは若干は減少している感じかな。ご苦労様でした。

ところで、今回の効果について、果たしてどの種の微生物がヒゲゴケの分解に貢献したのかは判りません。とは言え、判ったところでそもそも種を限定して投入すること自体無理な話なのですから、我々はなるべく豊富な種が混在しうるワラワラ軍団を、ただ投入するだけで良いのです。ヒゲゴケのみならず、茶ゴケやシアノバクテリア、いろんなものに対して抑制要因となる可能性を秘めた豊富なワラワラ軍団を。

念のため、今回の実験では、前半の光無し(室内光のみ)と言う条件も大きく寄与していると思われます。なので、ヒゲゴケを処理しようと思ったら、照明の強い水槽で直接やるよりも、ライブロックを取り出して暗いバケツで実施した方が、より早く効果が期待できると思われます。

さあ、あなたも今日からワラワラトレーナーです♪
ワラワラの採集、購入については、ワラワランドをご覧ください。

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茶ゴケの正体:其の一

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こないだから茶ゴケを観察しようと思ってスライドガラスを水槽に沈めているのですが、一向に付着する気配がありません。水流が当たらない方が良いかと思ってガードも設けているのですが、それがいけないのかしら。。。

ちなみに前回の換水とガラス面の掃除から約1ヶ月ほど経ち、最近ようやくガラス面に茶ゴケが増えてきました。水道水使ってんだから、もっとガンガン付けば良いのに(笑)

でも、その茶ゴケの付き方がちょっと変な気がします?

20090707-tank

20090707-bacillariophyceae

大抵の場合、茶ゴケってガラス面全体(あるいは広い範囲で)を覆うように膜が徐々に濃くなっていきません?
今回のは石灰藻みたいに点々と発生してます。
まさかシアノバクテリアかな?とも思って指の腹で軽く擦ってみたけど剥がれる様子がないので、やっぱり茶ゴケのようです。
ひとつひとつが濃いからそう見えるのかなぁ。。。

ちなみにこのガラス面の茶ゴケの丸いブロックひとつひとつをよく見ると、すこし特徴が見えます。それは、どの茶ゴケも、水流の方向に対して より成長と拡大を広げ、反対側は拡大せずに薄くぼやけていると言う点です。

上の水槽全体の写真では、中央奥からポンプの水流が前面のガラスにあたり、左右に拡散する流れが発生しています。次のコケの写真は水槽の前面右側のモノですが、左から来る水流に対してコケの左反面がよく成長し、右反面は薄くて成長してません。試しに水槽の前面左側の茶ゴケを見ると、右側とは反対の向きで成長していました。

うーん。茶ゴケをこんなに見つめたのは初めてだぁ~(笑)

さて、本当はスライドガラスに茶ゴケが付着してから検鏡したかったのですが、まだまだ先が長そうなので、とりあえず現状のガラス面の茶ゴケを少し擦り落として顕微鏡で見てみることにしました。
後日、スライドガラスに茶ゴケが栽培できたら、また其の二を書きたいと思います。

では、生物顕微鏡(おもちゃ)×1200倍のデジカメ写真です。

20090707-cyclotella

だからイヤだったのよ!
何写ってるか訳わかんないじゃん(汗)
付着状態を壊さず観察すれば、もうちょっとマシかなと思ってたのにー!

ちなみにこれでも辛うじて粒々が写ってるの判ります?
これが茶ゴケの細胞かな?と思います。
サイズは推定で約10μm前後かな。

これじゃ、珪藻どころかゴミとも区別が付きません(汗)が、とりあえず円形型の珪藻を保育社の日本海洋プランクトン図鑑で探してみたところ、サイズ的にも、タラシオシラ属/Thalassiosira とかキクロテラ属/Cyclotella あたりが近いかな?と思いました。その他、ネットで探すと、ステファノディスクス属/Stephanodiscus と言う珪藻も似ているように見えます。

いずれにしても、せめてもう少し精度の高い顕微鏡がないと、これ以上の観察は無理っぽいですねぇ。。。て言うか、10μmは無謀だぁ。。。

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新称:ブチヒメヨコバサミ属

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千葉の駒井先生にお願いしてあった新称:ブチヒメヨコバサミ属の論文が届いたので、これを基に超ヤドカリ図鑑を更新しました。

ブチヒメヨコバサミ属/ Stratiotes Thomson, 1899 - 新称

  • ブチヒメヨコバサミ/Stratiotes japonicus (Miyake, 1961) - 旧ヒメヨコバサミ属
  • リングヒメヨコバサミ/Stratiotes taenia (Komai, 1999) - 旧ヒメヨコバサミ属
  • クロトゲヒメヨコバサミ/Stratiotes nigroapiculus Komai, 2009 - 新種
  • アカオビヒメヨコバサミ/Stratiotes orbis Komai, 2009 - 新種

クロトゲヒメヨコバサミ(新種)はブチヒメヨコバサミによく似ています。でも見た目はそっくりだけど、ブチヒメのように眼柄は青くならないみたい。北海道から房総あたりまで分布しているようです。
ちなみに論文に記載された標本データを見ると、クロトゲヒメヨコバサミは北に行くほど潮下帯から観察できそうです。相模や房総あたりだと水深100Mとか深くなるけど。但し、今のところ日本海側での確認は無さそうです。

アカオビヒメヨコバサミ(新種)はリングヒメヨコバサミによく似ています。まだどちらも現物を見たことがありませんが、とりあえず眼柄の色彩(リングヒメヨコバサミは赤く、アカオビヒメヨコバサミは白くて基部が橙色)が違うかな。アカオビヒメヨコバサミは相模湾から伊豆諸島あたりで見つかっていて、リングヒメヨコバサミは小笠原諸島から記録されているようです。どちらも標本写真では全身が橙色っぽい感じ。

両種群とも、素人目に見ても、眼柄や第二触角の色彩の違いで、なんとか判別はできそうです。でもブチヒメヨコバサミ以外は結構深場に生息する種のようなので、多分見かけることはないかな(汗)

ちなみにブチヒメヨコバサミとリングヒメヨコバサミは属が変わったので、学名のオーサーネームに括弧が付きます。お気を付けあそばせ。

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